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3分で読める眠りにつく前の話

『どっち』

学生時代は本屋でバイトをしていた。レジ打ちをしたり発注したりするのも好きだったが、やっぱりお客さんとの対話が一番面白かった。

情報探索依頼系
「この漫画の新刊っていつ出ますか?」
「テレビで××さんが紹介してた本なんだけど」
これは大丈夫。
要求若干はみ出し系
「この作者の新刊買い続けるから、ずっと取り置きしておいてくれ」
「ワンピース全巻まとめて買いたいんだけど在庫ある?」
ん〜面倒だけどなんとかなります。
俺、ちょっと無茶言うぜ系
「ちょっとタバコ買ってきてよ」
「ポイント2倍にしてくんない?」
酔っ払いお断りだぜ。いちバイトに無茶言わないでくれ。

領収書を書いたのも、このバイトが初めてだったと思う。まず日付と価格、それから宛名と但し書きを尋ねる。近所の美容室とかクリニックの経営者らしき方たちは、毎月買いにきてくださってたので顔を覚えている。入店した時点で価格以外は書いておくとスムーズだった。

でも、初めての方の時はちょっと戸惑うこともあった。
「宛名はいかがいたしましょう」
「漢字でミチオカ。ミチは道路(どうろ)のミチで。」
「はい、どうろの?みち?ですね」

(どうろの、どう、じゃない?)と思いながら書いてみた。大丈夫だった。

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