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127)タケノコ+生姜は善玉菌を増やして寿命を延ばす

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術127

ミトコンドリアを活性化して体を若返らせる医薬品やサプリメントを解説しています。


【水溶性食物繊維が大腸内で発酵して乳酸と短鎖脂肪酸が生成する】

食物繊維はデンプンやグリコーゲンと同じ多糖類(糖が多数つながったもの)です。同じ多糖でもデンプンやグリコーゲンは消化管内(胃と小腸)で酵素によってグルコース(ブドウ糖)に分解されて体内に吸収されてエネルギー源となりますが、食物繊維は人間の消化酵素で分解されないため、エネルギー源とはなりにくいと一般には考えられています。

しかし、水溶性食物繊維(イヌリン、ペクチン、βグルカン、グルコマンナンなど)は腸内細菌による発酵によって乳酸や短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)のような有機酸が生成され、これらはエネルギー源として体内で利用されています。
 
つまり、乳酸や酢酸やプロピオン酸は糖新生の材料になり肝臓でグルコースの生成に使われます。また、これらはTCA回路に入って分解されてATP産生に使われます。酪酸は大腸粘膜上皮細胞のエネルギー源として使われます。


図:酢酸は炭素が2個、プロピオン酸は炭素が3個、酪酸は炭素が4個の単鎖脂肪酸。乳酸は炭素数3個のカルボン酸。これらは腸内で水溶性食物繊維の発酵によって産生される。乳酸は乳酸菌による乳酸発酵で産生され、中鎖脂肪酸は酪酸菌などで発酵されて産生される。それぞれの化学物質はいろんな中間代謝産物を介してエネルギー代謝の経路に組み込まれてエネルギー源となる。酪酸はヒストン脱アセチル化酵素阻害作用があり、様々な遺伝子の発現を亢進する作用がある。

 

炭水化物の発酵によって生成した酢酸やプロピオン酸や酪酸などの有機酸(短鎖脂肪酸)を吸収して、細胞内のミトコンドリアでさらに分解してエネルギーを産生しています。
 
これらの短鎖脂肪酸は肝臓でアミノ酸や脂肪の合成にも使われます。消化管内のバクテリアはアミノ酸も合成して草食動物に供給しています。
 

乳酸はエネルギー源として利用されるだけでなく、腸内pHを低下させて悪玉菌の増殖を抑制する効果があります。

短鎖脂肪酸は、体内に吸収されて糖新生やATP産生に利用されるだけでなく、短鎖脂肪酸の受容体であるGPR41(FFA3)やGPR43(FFA2)を介して生体の代謝を調節する作用や、遺伝子発現の調節作用(酪酸のヒストン脱アセチル化酵素阻害作用によるヒストンアセチル化)があります。空腹感を抑制する作用や抗炎症作用なども報告されています。
 
このように、食物繊維はエネルギー産生や生体機能の調節や発がん抑制など重要な役割を果たしています。



【健康長寿者の腸内には酪酸菌が多い】

健康長寿者の腸内には、乳酸菌やビフィズス菌や酪酸産生菌(酪酸菌)やアッカーマンシアなどいわゆる善玉菌が多いことが指摘されています。水溶性食物繊維を多く摂取するとこれらの善玉菌が増えることが明らかになっています。腸内の善玉菌を増やすと健康と美容を高めることができます。
 
善玉菌は水溶性食物繊維を発酵させて乳酸や短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)を産生し、腸の働きを良くします。 腸には体の免疫細胞の70%が集まっていると言われており、腸内で産生された酪酸は腸粘膜の抵抗性を高め、炎症を抑え、免疫機能を向上することが明らかになっており、酪酸を産生する酪酸菌が注目されています。


図:腸内の悪玉菌(腐敗菌)は腸内のタンパク質やアミノ酸を腐敗させて有害物質を作り(①)、体の治癒力を低下し、発がんを促進する(②)。食品中の水溶性食物繊維(③)は、乳酸菌やビフィズス菌や酪酸菌によって発酵され(④)、短鎖脂肪酸(⑤)や乳酸(⑥)を作る。短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)は腸粘膜バリアを増強し、大腸運動を活発化し、抗炎症作用などによって様々な健康作用を発揮する(⑦)。乳酸は腸内pHを低下させて悪玉菌(腐敗菌)の増殖を抑制する(⑧)。腸内の乳酸と短鎖脂肪酸(特に酪酸)を増やすと、体の治癒力を高め、寿命を延ばす効果が期待できる。

 

 善玉菌の代表の乳酸菌やビフィズス菌は酪酸を産生できません。 酪酸を産生することから名付けられたクロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)は芽胞形性能を有する桿菌です。芽胞の形で環境中に広く存在していますが、特に動物の消化管内常在菌として知られています。
 
日本では宮入菌と呼ばれる株が有用菌株として著名であり、芽胞を製剤化して整腸剤として用いられています。宮入菌は1933年に宮入近治博士(1896年-1963年)によって人の糞便から分離された菌株です。宮入近治博士は腐敗菌に対して強力な拮抗現象を示す芽胞菌を発見し「宮入菌」と命名しました。芽胞を製剤化して整腸剤(ミヤBM)として用いられていますが、宮入菌製剤は指定医薬部外品の分類なので、コンビニやスーパーやネット通販でも購入が可能です。


図:宮入近治博士(1896年-1963年)は腐敗菌に対して強力な拮抗現象を示す芽胞菌を発見し「宮入菌」と命名した。宮入菌は酪酸を産生する酪酸菌(Clostridium butyricum)の有用菌株として著名であり、芽胞を製剤化して整腸剤(ミヤBM、ミヤリサンなど)として用いられている。 



【短鎖脂肪酸はエネルギー産生や物質合成に使われる】

水溶性食物繊維は十分に発酵させれば、1グラム当たり1.5 kcalのエネルギーを産生すると報告されています。

短鎖脂肪酸に起因する健康への影響の1つは、腸管内のpHの低下によって病原性微生物を抑制することです。酢酸塩は、ビフィズス菌が腸内病原菌を阻害する能力において重要な役割を果たしていることがわかっています。プロピオン酸は運動能力を高める効果が報告されています。

さらに、酪酸は腸上皮細胞に燃料を供給し、ムチン産生を増加させ、細菌接着を阻止する作用があります。したがって、短鎖脂肪酸の産生は腸バリア機能の維持に重要な役割を果たしているようです。

酪酸は結腸粘膜上皮細胞によって代謝され、残りは肝静脈によって輸送されて肝臓に入り、そこで代謝されます。

短鎖脂肪酸は、糖および脂質の代謝経路に入ります。プロピオン酸塩は主に糖新生に組み込まれ、酢酸塩と酪酸塩は主に脂質生合成に組み込まれます。



【短鎖脂肪酸は遺伝子発現や代謝を調節する作用がある】

短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)が結合する受容体として、Free Fatty Acid Receptor 2(FFA2)とFree Fatty Acid Receptor 3(FFA3)が見つかっています。FFA2はGPR43、FFA3はGPR41としても報告されていますが、これらの受容体が脂肪組織や免疫組織、内分泌組織、消化管組織など広く分布し、短鎖脂肪酸が結合することによって生体の栄養摂取や代謝を調節していることが報告されています。

短鎖脂肪酸は結腸直腸がんの発症を予防することも観察されており、ほとんどの研究は酪酸に焦点を当てています。結腸直腸がんに対する食物繊維の保護効果は、微生物叢による酪酸の生成に依存していることが示唆されています

酪酸は、結腸の運動性を促進し、炎症を軽減し、がん細胞のアポトーシスを誘導し増殖を抑制します。この効果は、ヒストン脱アセチル化の阻害を介して媒介されるようです。

酪酸(butyrate)はヒストン脱アセチル化酵素阻害作用があり、遺伝子発現を制御する作用があります。



【タケノコは善玉菌を増やす】

タケノコは、竹の新芽のことを指します。タケノコはアジア料理でよく使用される食材であり、特に日本や中国、韓国の料理で一般的です。一般的な調理法としては、薄切りにして煮物や炒め物に加えたり、天ぷらにしたりすることがよくあります。また、タケノコご飯やタケノコの味噌汁も人気のある料理です。

 

タケノコは食物繊維が豊富な食材です。食物繊維は人間の消化器官では分解されず、腸内で水分を吸収してふくらみ、便通を促進する働きがあります。

タケノコには、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方が含まれています。水溶性食物繊維は水と結合してゼリー状になり、腸内で善玉菌のエサとなります。これによって腸内環境を整え、便秘の予防や血糖値の上昇を緩やかにする効果があります。また、不溶性食物繊維は腸内のぜん動運動を刺激し、便のかさを増やして便通を促進します。

タケノコは低カロリーでありながら、食物繊維の量が多いため、ダイエットや健康維持にも適しています。また、食物繊維は食後の満腹感を持続させる効果もありますので、食欲のコントロールにも役立つかもしれません。
 
タケノコの食物繊維が酪酸産生菌などの善玉菌を増やすことが報告されています。以下のような報告があります。

Bamboo shoot dietary fiber alleviates gut microbiota dysbiosis and modulates liver fatty acid metabolism in mice with high-fat diet-induced obesity(タケノコの食物繊維は、高脂肪食誘発性肥満のマウスの腸内細菌叢の異常を軽減し、肝臓の脂肪酸代謝を調節する)Front Nutr. 2023; 10: 1161698.

【要旨】
はじめに: 肥満は、過剰な脂肪の蓄積を特徴とする一般的な栄養障害である。肥満や代謝性疾患の発症における腸内微生物叢の重要な役割が明らかになり、腸内微生物叢を標的とすることで肥満を管理するための新しい食事療法が検討されている。この研究では、タケノコ食物繊維の抗肥満効果とその潜在的なメカニズムを調査した。
 
方法: 高脂肪マウスにタケノコ食物繊維を12週間した後、肥満関連の指標を解析し、肝臓組織の遺伝子発現の分析を行った。次に、16S rRNA 遺伝子配列決定を使用して腸内細菌叢の変化を分析し、腸内細菌叢の代謝物に対する タケノコ食物繊維の影響を調査し、最後に抗生物質動物モデルを通じて腸内細菌叢の重要性を検証した。
 
結果と考察:タケノコ食物繊維は、肝臓と脂肪組織の脂質蓄積を軽減し、脂質異常症とインスリン抵抗性を軽減するのに効果的であった。肝臓の発現遺伝子の解析の結果、タケノコ食物繊維がペルオキシソーム増殖因子活性化受容体 (PPAR) および脂肪酸代謝経路を調節することにより、脂質代謝と肝損傷を改善できることが示された。

腸内微生物叢組成の 16S rRNA 遺伝子配列分析により、タケノコ食物繊維がビフィズス菌(Bifidobacterium)、アッカーマンシア(Akkermansia)、デュボシエラ(Dubosiella)、アロプレボテラ(Alloprevotella)などの有益な細菌を大幅に濃縮していることが示された。糞便メタボロミクスと腸内微生物叢の代謝産物の分析により、タケノコ食物繊維がいくつかの短鎖脂肪酸のレベルを上昇させ、脂質代謝の改善に重要な役割を持つ胆汁酸の含有量が増えることが明らかになった。注目すべきことに、腸内細菌叢の排除後に肥満関連の代謝障害が解消されたことは、腸内細菌叢がタケノコ食物繊維の有益な効果における重要な要素であることを示唆している。 
 
結論: 私たちの研究は、タケノコ食物繊維が腸内細菌叢を改善し、宿主のPPARおよび脂肪酸代謝経路を調節することによって肥満を改善する可能性があることを示唆している。
 
 

タケノコの食物繊維がビフィズス菌やアッカーマンシアなどの有益な細菌を大幅に増やし、短鎖脂肪酸のレベルを上昇させ、脂質代謝を改善して肥満や脂肪肝や高脂血症を良くするという報告です。



【ショウガは短鎖脂肪酸を増やす】

ショウガ(生姜)はショウガ科のショウガの根茎(肥大した地下茎)です。学名はZingiber officinaleで、英語はGingerです。
 
ショウガは、その独特の風味から香辛料や食品として用いられていますが、多彩な薬理効果と健康増進効果を有するため、世界中の伝統医療や民間療法で利用されています。

中国やインドでは2500年以上前から、頭痛、吐き気、関節痛、風邪などの治療に利用されています。腸内細菌にも影響するようです。以下のような報告があります。

Beneficial effects of ginger on prevention of obesity through modulation of gut microbiota in mice(マウスの腸内細菌叢の調節による肥満予防に対するショウガの有益な効果)Eur J Nutr. 2020 Mar;59(2):699-718.

【要旨】
目的: 最近の証拠により、腸内微生物叢が肥満やその他の代謝機能障害の治療において重要な役割を果たしていることが証明されている。ショウガ (Zingiber officinale Roscoe) は、最も一般的に使用されるスパイスや栄養補助食品の 1 つで、肥満や代謝性疾患に対して有益な効果を発揮することが示されている。しかし、これらの効果を腸内細菌叢と結びつけた研究は行われていない。この研究は、マウスおいて腸内微生物叢に対するショウガの摂取による影響を調査することを目的とした。

方法:マウスを 4 つのグループに分け、生姜のサプリメントを含むまたは含まない通常の固形飼料または高脂肪食を16週間与えた。実験の最後に、脂質プロファイル、炎症誘発性サイトカイン、耐糖能、微生物叢組成および短鎖脂肪酸濃度を分析した。さらに、微生物叢が枯渇したマウスに、高脂肪食を与えられたマウス、または生姜の補給とともに高脂肪食を与えられたマウスの糞便微生物叢が移植された。耐糖能と微生物叢の組成は、8 週間の糞便微生物叢移植後に評価された。
 
結果: 高脂肪食給餌マウスにおいて、ショウガの投与は、体重、脂肪肝、炎症の程度の顕著な減少を引き起こし、インスリン抵抗性の改善が観察された。

さらに、ショウガの摂取により、腸内細菌叢の組成が変化し、ビフィドバクテリウム属に属する種および短鎖脂肪酸産生細菌(Alloprevotella や Allobaculum)が増加し、便中の短鎖脂肪酸濃度も増加した。糞便移植実験では、ショウガの経口摂取実験で観察されたものと同様の抗肥満および微生物叢調節効果が示された。

結論: この研究は、ショウガの摂取による腸内細菌叢の調節がマウスの肥満に対して治療効果があることを示唆している。
 
 

ショウガは香辛料として料理に広く用いられており、お菓子や飲料(ジンジャーエール)、キャンデー、酒類などにも用いられていて、多くの薬効をもつので、医食同源の代表的な食材と言えます。
 
ショウガの薬効として、吐き気止め作用、健胃・整腸作用、抗炎症作用、鎮痛作用、抗酸化作用、抗動脈硬化作用、熱産生作用、抗菌作用、がん予防効果・抗がん作用など多彩です。
 
いずれにしと、タケノコと生姜を組み合わせた料理は腸内環境を良くし、健康増進に有効です。タケノコと生姜を使った料理のレシピはインターネットで検索すれば、多数見つかります。

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