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4)ビタミンD3は寿命を延ばす

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術4

ミトコンドリアを活性化して体を若返らせる医薬品やサプリメントを解説しています。

【高齢者はビタミンD欠乏になりやすい】

元来ビタミン(vitamin)というのは、生命に必要なアミンの意味で、微量で生体の正常な発育や物質代謝を調節し、生体機能の維持に不可欠な有機化合物で、普通は動物体内では生合成されないもので、食物などから摂取する必要があります。

しかし、ビタミンDは例外で、体内で合成できます。

つまり、ビタミンDは体内で生成されることから、ビタミンというよりホルモンに近いと言えます。

ただ、ホルモンは生体内で生成されるものに限定されるので、ビタミンDは体内で産生されるだけでなく、食品からの摂取量も多いのでビタミンに分類されています。体内のビタミンDの90%程度は皮膚で紫外線を浴びて生成し、10%が食事から摂取と言われています。

体内でコレステロールから合成されるプロビタミンD3(7-デヒドロコレステロール)は皮膚で紫外線照射を受けてビタミンD3(コレカルシフェロール)へ変換されます。ビタミンD3は食品やサプリメントからも摂取されます。

体内で生成されたビタミンD3と食物から摂取したビタミンD3は、肝臓で25位が水酸化されて25(OH)ビタミンD3(カルシジオール)に変換され、さらに腎臓などで1α位が水酸化されて活性型の1,25(OH)2-ビタミンD3(カルシトリオール)になります。

25(OH)ビタミンD3(25-ヒドロキシビタミンD3)は体内でのビタミンDの貯蔵型であり、長期間安定に血液中を循環しています。血中25-ヒドロキシビタミンD3の濃度がビタミンDの体内貯蔵量の指標として用いられます。


活性型ビタミンD3は、核内受容体への結合による遺伝子発現の調節や、細胞膜のビタミンD受容体への結合によるシグナル伝達系の活性化のメカニズムなどによって、骨形成やカルシウム代謝、炎症、免疫、発がん、細胞増殖、細胞分化、細胞死(アポトーシス)など様々な生理機能の調節に関与します。

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図:体内でコレステロールから合成されるプロビタミンD3(7-dehydrocholesterol)は皮膚で紫外線(HV-B)照射を受けてビタミンD3(Cholecalciferol)へ変換される(①)。ビタミンD3は食品やサプリメントからも摂取される(②)。ビタミンD3は肝臓で25-ヒドロキシラーゼ(25-hydroxylase)によって25(OH)ビタミンD3(Calcidiol)に変換され(③)、さらに腎臓で、1α-ヒドロキシラーゼ(1-alpha hydroxylase)によって活性型ビタミンD3である1,25(OH)2ビタミンD3(Calcitriol)になる(④)。活性型ビタミンD3は、核内受容体への結合による遺伝子発現の調節や、細胞膜のビタミンD受容体への結合によるシグナル伝達系の活性化のメカニズムによって(⑤)、骨形成やカルシウム代謝、炎症、免疫、発がん、細胞増殖、分化、アポトーシスなど様々な生理機能の調節に関与する(⑥)。


活性型ビタミンD(1,25-ジヒドロキシビタミンD3)は医薬品として使用されています。一方、通常のビタミンD(ビタミンD3)はサプリメントとして市販されています。


活性型ビタミンDは血清カルシウム濃度を高めるので、使用には注意が必要です。


一方、サプリメントのビタミンD3は、肝臓で25-ヒドロキシビタミンD3に変換されたあと、必要に応じて腎臓で代謝されて活性型(1,25-ジヒドロキシビタミンD3)になり、その活性化は、副甲状腺ホルモンやカルシウム濃度によって厳密にコントロールされているため、過剰症になることはほとんどなく、安全性が高いと言えます。


日光に当たれば、体内で十分な量のビタミンD3が生成されます。日照時間の短い緯度の高いところに住んでいる人は体内のビタミンDの濃度が低い傾向にあります。また、ビタミンD含有量の多い魚やキノコの摂取量が少ない場合もビタミンD欠乏の原因になります。

家に閉じこもることの多い高齢者は、ビタミンD欠乏になりやすいので、サプリメントで補うメリットは高いと言えます。ビタミンDの不足は感染症や心臓病のリスクを高めることが明らかになっているからです。


【ビタミンDの血中濃度が高いと長生きできる】

ビタミンDの血中濃度が高い方が死亡率が低下することが明らかになっています。体内のビタミンDの量の指標となる血清中の25-ヒドロキシビタミンDの濃度と死亡率との関係を検討した欧州と米国で行われた8つの前向きコホート研究の結果をメタ解析した研究が報告されています。

(Vitamin D and mortality: meta-analysis of individual participant data from a  large consortium of cohort studies from Europe and the United States. BMJ.  348:g3656.2014)


この研究では、対象は50~79歳の男女計26,018人で、追跡期間中6695人が死亡しています。このうち心血管疾患による死亡は2624人、がんによる死亡は2227人でした。血清中の25-ヒドロキシビタミンDの濃度が高い上位5分の1のグループに比較して、25-ヒドロキシビタミンDの濃度が低い下位5分の1のグループの全死因死亡率のリスク比は1.57(95%信頼区間:1.36-1.81)でした。

心血管疾患のリスク比も同様な値で、25-ヒドロキシビタミンDの濃度が低い人は心血管疾患での死亡率が高くなっています。この場合、研究が開始になったとき既に心血管疾患に罹っていた人もそうでない人も同様の結果でした。

一方、がんによる死亡の場合は、研究開始時にがんの罹患経験がない人では、25-ヒドロキシビタミンDの濃度の違いによるリスクの違いは認められていませんが、がんの既往歴がある人だけを対象にすると、25-ヒドロキシビタミンDの濃度の高い上位5分の1のグループに比較して25-ヒドロキシビタミンDの濃度の低い下位5分の1のグループの人の死亡リスクは1.70(95%信頼区間:1.00-2.88)でした。


これは、ビタミンDが高い状態は、がんの発生を減らさないが、がんになってからの延命には効果があることを示唆しています。

つまり、ビタミンDが再発を予防するとか、がん細胞の増殖を抑制するなどの作用によって、がんサバイバーを対象にした解析では、ビタミンDが多い方が生存期間が長くなるということです。

この論文の結論は、「25-ヒドロキシビタミンDの血清濃度は、国や性別や季節によって顕著に異なるが、25-ヒドロキシビタミンDの濃度が低いと、全死因死亡率および心血管系疾患の死亡率、がんの既往のある人のがん死亡率が高くなるのは確実である」となっています。


【ビタミンD3不足は感染症の重症化を引き起こす】

ビタミンD受容体は生体防御や免疫に関わる細胞(単球、マクロファージ、抗原提示細胞、活性化T細胞など)で発現しています。これはビタミンDが生体防御や免疫に重要な働きを持つことを意味します。

したがって、ビタミンD欠乏は自然免疫と獲得免疫を低下させるので、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含め様々な感染症の発症と重症化のリスクを高めます。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染によって発症するCOVID-19(Coronavirus Disease 2019)は、高血圧や心臓病や糖尿病を有する高齢者が重篤化しやすい傾向が明らかになっています。ビタミンD不足もCOVID-19の重症化の要因の一つになると報告されています。


ヨーロッパの国を対象に、それぞれの国の国民のビタミンDの平均濃度とCOVID-19の発症数と死亡数の関連を検討すると、ビタミンDの濃度とCOVID-19の発症数および死亡数は逆相関するデータが報告されています。

つまり、ビタミンDの血中濃度が低いほどCOVID-19の発症数と死亡数が多いという関係です。


【血清中のビタミンD濃度はCOVID-19の死亡率と逆相関する】

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染によって発症するCOVID-19(Coronavirus Disease 2019)は、軽症や無症候で治癒する症例から、致死的な重症例まで、幅広い臨床像を呈することがわかっており、重症化に関わる条件に注目が集まっています。
これまでの報告から、高血圧や心臓病や糖尿病を有する高齢者が重篤化しやすい傾向が明らかになっています。

感染の機会を減らす目的で外出自粛が推奨されていますが、日光を浴びないことによるビタミンD不足は、COVID-19の重症化の要因の一つになるという指摘があります。

ビタミンDは日光の紫外線を浴びることによって皮膚で産生されます。

つまり、日照時間の短い緯度の高いところに住んでいる人は体内のビタミンDの濃度が低い傾向にあります。また、ビタミンD含有量の多い魚やキノコの摂取量が少ない場合もビタミンD欠乏の原因になります。


ヨーロッパの国を対象に、それぞれの国の国民のビタミンDの平均濃度とCOVID-19の発症数と死亡数の関連を検討すると、ビタミンDの濃度とCOVID-19の発症数および死亡数は逆相関するデータが報告されています。つまり、ビタミンDの血中濃度が低いほどCOVID-19の発症数と死亡数が多いという関係です。
以下のような報告があります。

The role of vitamin D in the prevention of coronavirus disease 2019 infection and mortality(コロナウイルス疾患2019の感染と死亡の予防におけるビタミンDの役割)Aging Clin Exp Res. 2020 May 6 : 1–4.

これは英国の研究チームによる論文です。この研究で対象になったヨーロッパの20カ国は、医療や公衆衛生のレベルに大きな差がないので、体内のビタミンDの濃度がCOVID-19の感染や死亡に影響するかの検討か可能になります。

研究チームは各国の国民における平均ビタミンDレベルとCOVID-19の症例・致死率の関係について調査しました。その結果、ヨーロッパ20カ国において、国民のビタミンDレベルとCOVID-19症例数の間、特に致死率との間に相関関係がみられました。
イタリア・スペイン・スイスでは特に高齢者の平均ビタミンDレベルが少なく、これはCOVID-19が重症化したグループと一致しているということです。

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図:ヨーロッパの20カ国の、それぞれの国民の血清25(OH)ビタミンDの平均濃度と、それぞれの国の人口100万人当たりのCOVID-19による死亡者数(左図)と感染者の数(右図)がプロットされている。25(OH)ビタミンDの血清濃度が高いほどCOVID-19の感染と死亡の数が少ないという負の相関が認められている。(出典:Aging Clin Exp Res. 2020 May 6 : 1–4.)


以下の論文はアイルランドの研究者からの報告です。

Vitamin D and Inflammation: Potential Implications for Severity of Covid-19   (ビタミンDと炎症:Covid-19の重症度に対する潜在的な影響)Ir Med J; Vol  113; No. 5; P81

この論文の結論は以下の様に記述されています。
『ビタミンDの状態を良くすることは、COVID-19に対して潜在的な利点がある。COVID-19におけるビタミンDの役割を支持する生物学的根拠と疫学的データが存在する。』


ヨーロッパでは緯度が高い(北に位置する)国の人がビタミンDの濃度が低いというわけではなく、スペインやイタリアではヨーロッパの中でビタミンDの濃度が低く、COVID-19の死亡率も高い結果でした。

ノルウェー・フィンランド・スウェーデンでは日光や紫外線量が少ないのですが、サプリメントの摂取や食事によるビタミンDの補給が行われているため、ビタミンDレベルが高くなっています。国民のビタミンD濃度を高めるために、食品にビタミンDを入れる政策が行われている国もあります。

北欧諸国ではCOVID-19の感染率と致死率が低く、ビタミンDレベルとCOVID-19の致死率の間には「統計的に有意な相関が見られる」とのことです。(下図)

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図:ヨーロッパの国々の国民の血清中25(OH)ビタミンDの平均濃度と人口100万人当たりのCOVID-19による死亡者数の間には統計的有意な逆相関の関係が示されている。


以上の疫学データは、ビタミンD欠乏が新型コロナウイルスの重症化と関連することを示唆しています。

そこで、ビタミンDの補充は新型コロナウイルス(COVID-19)の感染と重症化の予防に役立つかもしれないという指摘が報告されています。
以下のような報告があります。

Evidence that Vitamin D Supplementation Could Reduce Risk of Influenza  and COVID-19 Infections and Deaths.(ビタミンDの補給がインフルエンザ     とCOVID-19の感染と死亡のリスクを低減できるという証拠)Nutrients. 2020  Apr 2;12(4). pii: E988. doi: 10.3390/nu12040988.


これは米国からの報告です。この論文では以下の服用量を推奨しています。 
感染のリスクを減らすために、インフルエンザやCOVID-19のリスクがある人は、1日に10,000 IU のビタミンD3を数週間服用して25(OH)D濃度を急速に上げ、その後5000 IU / 日の服用を継続する。
目標は、25(OH)D濃度を40~60 ng / mL(100~150 nmol / L)より高くすることである。 COVID-19に感染した人の治療では、ビタミンD3の投与量を増やすことが役立つ場合がある。これらの推奨事項を評価するために、ランダム化比較試験および大規模集団研究を実施する必要がある。


血中25ヒドロキシビタミンD (25-OH-D) は血液中のビタミンD代謝物の中で最も濃度が高く、ビタミン補充状態をよく反映するため、体内ビタミンDレベルの指標となっています。

血中25-OH-ビタミンDが50 nmol/L(20 ng/ml)以下が不足状態と考えられています。この論文の著者らは血清中100~150 nmol / L(40~60 ng / mL)に高めるように推奨しています。

その目的で、1日に10,000 IU のビタミンD3を数週間服用して25(OH)D濃度を急速に上げ、その後5000 IU / 日の服用を継続する方法を提案しています。

今までの研究から、血中ビタミンD濃度が不足している人のビタミンD濃度を改善するためには1日4000 IU (100μg)程度が必要であることが示されています。


日光浴などで体内のビタミンD合成を増やすことの他に、ビタミンDを多く含む食事を摂取するか、ビタミンDのサプリメント(1日4000 IU程度)を摂取することはCOVID-19の感染と重症化の予防に有効と言えます。


適度な日光浴や屋外での運動を行うと、体内のビタミンDの量を増やすことができます。屋外での運動は、運動による健康作用と、体内のビタミンD3の量を増やすことによる相乗効果が期待できます。

あまり外に出ないような人や、日照時間の短い冬の季節には、天気の良い昼間に外で日光浴や軽い運動をすることはビタミンD3の体内量を増やす方法として有効だと言えます。

ただし、日焼けするような強い紫外線を長く浴びることは、皮膚がんや悪性黒色腫の原因となりますので、紫外線の強いときは日光浴や屋外での活動も適度にした方が良いようです。


アフリカ系アメリカ人はビタミンDの不足が多いという結果が報告されています。皮膚の色が黒いのは皮膚のメラニン色素が多く、皮膚の紫外線の吸収を低下させるので、皮膚におけるビタミンD産生が低下するためと考えられています。
皮膚が黒くなるまで日焼けするのは、一見健康そうにみえますが、皮膚のしみやがんの発生を高めるだけでなく、ビタミンD3の産生を低下させて抗老化にはマイナスになる可能性があることも知っておくことが大切です。


ビタミンD3はサケ、マグロ、サバなどの脂の乗った魚や、牛のレバー、バター、チーズ、卵黄などに多く含まれます。

このような食事や屋外での運動や日光浴が困難な場合は、1日2000IU(50μg)から4000 IU(100 μg)程度のビタミンD3のサプリメントの摂取は有用です。


体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術 記事まとめ

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