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不倫判例百選㉟お客様の声ボックスにおしらせしておきました

0 はじめに

スーパーで働いていたら、お客様相談室に電話をされて、「男女関係で●●(被告の氏名)がおかしいことをしている。会社ではどういう教育をしているんだ」と、複数回電話をされました。

不貞のご相談をうけていると、これも本当によく聞く話です。

正式な依頼にはつながらず、いったん持ち帰っていただいている間にも「今度はお客さまの声ボックスにも投函されていました。。。」

弁護士を選任した段階で、弁護士から内容証明郵便を送付したり、電話で抗議をする形で、このような行為は控え、弁護士を通じて連絡を取るように通知するのが通例です。しかし、今回紹介するケースでは、その後も被告の勤務するスーパーへの電話のみならず、訪問、さらには本社人事部にまで電話をしているケースです。

1 裁判例の検討

東京地方裁判所において平成25年1月17日に出された判決は、不倫加害者側に対する、原告の被告勤務先に対する電話・訪問及び投書によるプライバシーの侵害・名誉毀損の成否としてこの問題を整理しています。

争点(3)(原告の被告勤務先に対する電話,訪問及び投書によるプライバシーの侵害,名誉毀損の成否)について
 原告が,①平成23年4月17日頃,aスーパーのお客様相談室へ架電し,被告とAが不貞関係にあることを告げたこと,②同年5月2日頃にもaスーパーのお客様相談室へ架電したこと,③同月頃,被告が勤務するaスーパー◎◎店のお客様の声ボックスへ,被告と原告の妻とが不貞行為をしていることがわかる内容の投書(乙2)をしたこと,④同年8月6日頃,被告の勤務するaスーパー◎◎店に架電したこと,⑤同年10月17日頃,同店に赴き,買い物をして,レジの店員に対し,被告が同日同店にいるかどうかを尋ねたこと,⑥同年12月29日頃,aスーパー本社に架電し,被告に裁判所へ出頭するよう伝言を要求したことは原告も認めており,この範囲で争いはない。この争いのない範囲を超えて被告が主張する事実を認めるに足りる証拠はない。
そうすると,前記①,③の行為は,被告が不貞行為をしていることを不特定の者に告知するもので,少なくとも被告の名誉を毀損する行為であるといえる。また,前記⑥の行為は,前記①,③の行為と相まって,被告が不貞行為を理由に訴えを提起されていることを通知するものであって,前記①,③の行為と併せて不法行為を構成するものといえる。

不貞行為の存在を不特定多数の者に告知する行為は、名誉棄損となる旨明確に判示しています。被告の勤務する会社の本社に知らせ、裁判所に出頭するよう要求する行為も、これらの経緯とあいまると、同じく不法行為が成立することを判示しています。

しかし、勤務先(やその本社)という第三者を巻き込む行為の場合、不法行為が成立する、名誉棄損になるという判断ではあっても、本人に直接荷電をした行為に関しては、何ら問題はないと判断しています。

争点(4)(原告の被告に対する,深夜の架電による私生活の平穏の侵害の成否)について 証拠(乙7,17,)によれば,原告が,被告に対して,平成23年12月3日,15回にわたり,架電した事実が認められるが,この架電が深夜に行われたことまでは明らかではなく,これらが私生活の平穏を侵害する行為であるとまでいうことはできない。

2 若干の疑問

 裁判例は結果として、10万円の支払いを命じています。本人に対し、一日に15回電話をする行為は(深夜かどうかが明らかではないとされていますが)私生活の平穏を侵害することがないと判断していますが、第三者=勤務先やその本社を巻き込む行為に至れば、不法行為が成立する、としています。名誉棄損であれば、不特定多数に知らしめる行為として非難に値する行為であると考えることはできましょう。

しかし、不法行為の成立をめぐって、第三者をまきこんだかどうか、は、質的量的にも、判断をわける要素になるのか?どうかは疑問に感じています。もちろん、プライバシー侵害の程度としてはきりわけの基準になりましょうが、個人を攻撃する態様の違いだと説明をすれば、本人に15回電話をし続ける行為そのものも不法行為責任を伴う判断はありえるのではないか・・?

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