見出し画像

離婚裁判百選㉖番外編ーローマ法からの示唆

 夫が浮気をしています。ホテル代も、高級レストランの食事代も、プレゼント代も、みんな家族カードから出せているので明細をみています。許せません。女も許せませんが、夫にも三下り半です。浪費分を取り返すことはできませんでしょうか?

ある日の相談より抜粋

結論、できます。実際にこれを実現した事例を担当したことも多くあります。多くは、

 自分が稼いだお金を使って何が悪いんだ。慰謝料は支払ったのだからいいだろう。第一、妻は長らく専業主婦で恥ずかしいと思わないのか。

典型的な反論より抜粋

 結論、浪費分は本来あるべき夫婦財産を算出する過程において考慮されますので、財産分与で考慮をすることができます。しかし、実際にどこに財産があるのか、本当に浪費はこれですべてなのか、など、不安は残ります。
 しかし、それにもまして旦那側の抗弁内容は、感情的にも受け入れられるものではありません。法律学の観点からも、実は根本から反論ができるのです。


女子はまた、婚姻関係において行為能力のなさを逆手に取るような個性的な財産能力を有して信用の創出に貢献した。直接占有できない分、夫を手足に使って占有し、この連接関係が経済的に大きな役割を果たすのである。事実占有のコアの部分manusを夫が担い、果実を妻が取れば、妻に占有が帰属したも同然であるばかりか、より高級な(実力に遠い)占有を構築したことにもなる。夫は果実を妻に貢ぐために占有する。妻は占有を夫にゆだねるにあたって信用を与えたのと同義である。離婚に当たって利息とともに取り戻す。嫁資(dos)の制度は、婚姻と同時に妻が一定の財物を夫にゆだね、夫が運用するが、離婚に際しては夫は妻に利息を付して変換しなければならない、というものである。 

 ローマ法の世界では、占有、を基礎として理論が展開されていきますが、占有の「質」を向上させるには、婚姻(夫婦財産制度)が優れているともいえるのではないか。実際、木庭教授は、「実質占有者の方も勝手ができない。占有が良質になる。端的に領域的な性質、実力の性質は希薄となる。占有の敵は遠ざかる、とも説明しています。
 夫の財産は私のもの。お前のものは俺のもの、ではなくて、旦那さんが占有している財産も、しっかり奥さんの占有だと、説明することは十分可能なのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?