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不倫裁判百選95 飲酒運転防止目的であれば,タクシーや運転代行を依頼することもできるはず?

0 はじめに

配偶者ある人間を宿泊させたら、不貞行為に及んだと言えるでしょうか?

答えは、これだけではNOといわざるをえないでしょう。

しかし、裁判所は、2週連続で2回にわたることや、そもそも不貞相手は徒歩で被告宅にきたこと、翌日一緒にパチンコに行く約束をしたために双方があらかじめ合意の上で泊まったことを考慮して、不貞行為の存在を認めました。

1 争点及び当事者の主張

名古屋地方裁判所において令和元年11月25日に出された裁判例は、外泊を主な根拠としています。

 (1) 争点1(不貞行為の有無)について
 (原告の主張)

 被告は,Aに原告という夫がいることを知りながら,平成30年6月2日夜から3日にかけて及び同月9日夜から10日にかけて不貞行為に及んだ。
 Aを宿泊させたのが飲酒運転防止目的であれば,タクシーや運転代行を依頼することもできるし,1週間の間隔で2回にわたって宿泊させ,翌朝はファミリーレストランやパチンコ店に一緒に行っていることからすれば,不貞目的と考えるべきである。
 (被告の主張)
   ア 被告とAは,行きつけの店で他の友人も交えて週に1回程度飲酒しており,Aが自動車を運転して帰宅することができず,徒歩で帰宅するには40分程度かかるため,店の近所の被告宅に宿泊させたにすぎない。被告宅は2LDKで,空いている部屋があるので,他の友人を宿泊させることもあり,Aもその一人にすぎず,不貞行為に及んだことはない。
   イ 被告とAは,約15年来の友人関係にあり,Aは子供が独立していたのであるから,宿泊の翌日に朝食を食べに行ったりパチンコに行ったりすることは不自然ではない。
   ウ 被告は,Aから,原告は東京におり別居状態で離婚届を提出すると聞いていたため,被告はAと原告は離婚したものであると思っていた。したがって,被告に不法行為の故意過失はない。

2 裁判所の判断

 1 争点1(不貞行為の有無)について
  (1) 前記前提事実,証拠(甲5,6,証人A,被告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。

   ア 被告とAは,15年ほど前にカラオケパーティーで知り合い,定期的に開催されるカラオケパーティーでたまに顔を合わせるような関係であった。この頃,被告は,Aから原告と別居をしており離婚届を出す予定であると聞いたことがあった。被告は,その後2年ほどで,職場の移動に伴いカラオケパーティーに参加することがなくなり,Aと顔を合わせることはなくなった。
   イ 被告は,10年ほど前に現住所に引っ越し,同所に一人で暮らしていたが,近所にある居酒屋a(以下「本件居酒屋」という。)やカラオケスナックb(以下「本件カラオケ店」という。)に通うようになり,本件居酒屋でAと偶然再会したのをきっかけに,Aと本件居酒屋や本件カラオケ店で飲酒やカラオケを一緒にしたり,Aと二人でパチンコに一緒に行くようになった。
   ウ Aは,本件居酒屋へは車で行くことが多く,飲酒した場合は,車を本件居酒屋の駐車場に置いて,友人に車で送ってもらって帰宅したり,被告宅に友人とあるいは被告と二人きりで泊まったりすることもあった。
   エ 被告は,Aと二人で待ち合わせて朝食を食べてパチンコに行くことは10回程度あったほか,Aの友人と共に日帰りのバス旅行に参加したこともあり,その際は待ち合わせ場所までAと二人で行くことがあった。
   オ Aは,平成30年6月当時,原告とは別居していたが,定期的に原告方へ食材を届けに行くことがあり,その際原告と顔を合わせることもあった。また,Aと原告との間で,離婚の話が具体的に進展しているようなことはなかった。
   カ 被告は,平成30年6月2日,Aと本件居酒屋や本件カラオケ店で飲酒やカラオケをした際,Aと翌日パチンコに行くことを予定し,Aは車を本件居酒屋の駐車場に置いて被告宅に泊まることとなり,Aと被告宅に徒歩で向かい,Aは被告宅に被告と二人きりで泊まった
 被告は,同月3日朝,Aと共に自宅から出て,Aの車を被告が運転してファミリーレストランに行き二人で朝食をとった後,Aと一緒にパチンコ店に行った。
   キ 被告は,平成30年6月9日,Aを含めた仲間と本件居酒屋や本件カラオケ店で飲酒やカラオケをした後,Aが同月3日のパチンコの結果に満足していなかったことからAと再度翌日にパチンコに行くこととなり,Aの車を本件居酒屋の駐車場に置いて,Aと被告宅に徒歩で向かい,Aは被告宅に被告と二人きりで泊まった。
 被告は,同月10日朝,Aと共に自宅から出て,二人で朝食をとった後,Aと一緒にパチンコ店に行った。
  (2) 以上の認定事実によれば,被告は,平成30年6月2日夜及び同月9日夜の,2週連続で2回にわたり被告宅にAと二人きりで宿泊したもので,宿泊に至る経緯やAが徒歩で被告宅に向かっていることをみても,Aが泥酔してやむなく被告宅に泊めたというものではなく翌日一緒にパチンコに行く約束をしたために双方があらかじめ合意の上で泊まったものとみることができる。これに加えて,被告は上記2回の宿泊の翌朝はいずれもAと共にレストランで朝食をとりパチンコ店に一緒に赴いていること,被告は上記の2回以外にもAを自宅に二人きりで泊めたり,Aと待ち合わせてパチンコに行ったり,A及びその友人らと日帰り旅行に参加したりしていることをも考慮すると,被告は,Aと,行きつけの店での常連仲間として一般に想定される関係を超えて親密な関係にあると言わざるを得ず,上記2回の宿泊の機会にAと性的関係を持つに至ったことが推認できるというべきであって,少なくとも性的関係を持ったと思われてもやむを得ない状況にあったものと認めるのが相当である。

3 若干の検討

2人きりで被告宅に泊まらせること、パチンコに行く合意をしていたこと、2週連続であること、ここまでの事実であればどちらとも考えられてしかるべきでしょう。

ただ、被告がAと行きつけの店で常連仲間として一般に想定される関係を超えて親密だと判断する根拠を、日帰り旅行への参加、2回以外のパチンコ店へ行った事実を根拠としています。

通常の親密の程度を超える=不貞行為の存在までは遠く、たとえば、不貞行為を行うには十分な時間的余裕があっただとか、不貞行為が存在しないほうが不自然だとか、通常の親密性を超える関係性と、不貞行為の存在をうめる理由付けが欲しかったように思います。

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