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不倫裁判百選82だーりん、結婚してくださいって言葉が実現するの待っているよ。

0 はじめに

「だーりん『結婚してください』って言葉が実現するの待っているよ。」なるメールを見つけたら、不貞行為の立証ができるか?

このメールを重視し、請求を認めた裁判例をご紹介します。メールの記載を重視しないようにも思われる裁判所は、どんな基準で不貞行為を認めている?のか。


1 事案の概要

東京地方裁判所において平成26年9月18日に出された裁判例は、不貞関係の存在を認め220万円の支払いを命じています。

被告は、交際相手であるAから独身であると聞かされていたのだから、なんら原告を侵害する意思はなかったと主張して争っていました。

 (1) 当事者等
 原告(昭和45年○月○日生)とA(昭和37年○月○日生)は,平成14年12月10日に婚姻した。両名との間に子はない。
 Aは,前妻との間に2人の子をもうけており,前妻が監護養育している。
 原告は,婚姻後も勤務していたが,平成15年10月に退職し,専業主婦となった。Aは,株式会社aに技術職として勤務している。
 被告(昭和51年○月○日生)は,独身の女性である。(甲1,被告本人,弁論の全趣旨)
(2) 原告とAの婚姻生活の状況等
‥(中略)‥原告とAは,このころ,月1回の頻度で性交渉を行っていた。
 原告は,子を望み,平成20年4月に不妊治療を開始し,原告とAは,体外受精の治療も受けていた。(甲15,乙8,原告本人,弁論の全趣旨)
イ 原告とAは,平成19年3月から,「○○会」という名称のワインのサークルに夫婦で参加するようになり,年に3回程度会合に出席していた。平成21年6月の上記会合には,原告とAが参加したほか,被告も参加している。(甲2,甲11,乙1の1ないし16,甲15,証人A,原告本人,被告本人,)
 ウ 原告は,平成23年3月11日の東日本大震災を契機として,Aに勧めにより,本件マンションを出て,1か月半の間,実家に居住した。
 原告は,その後,本件マンションに居住したが,Aから週末は,実家に帰るように言われ,一緒にいることを拒絶されたため,平成24年5月ころまで,実家と本件マンションを行き来する状態が継続した。
 原告とAとの性交渉は,継続していたが,平成23年2月に途絶えた‥(中略)‥
(3) 被告とAの交際を伺わせる事実関係等
ア 被告は,平成23年7月に,Aとともに伊豆の旅館に宿泊した。Aは,このころ,インターネット上の△△サイトにおいて,2人が親密な交際をしていることを伺わせる言動掲載した。(甲4,甲6,甲7,弁論の全趣旨)
イ 被告とAは,平成24年4月中旬,2人で宿泊を伴う旅行をした。(甲9,弁論の全趣旨)
ウ 被告とAは,平成25年7月27日,2人で,日中は銀座有楽町周辺で,買い物や食事をし,同日夜には,JR鶯谷駅のホテルで2時間程度,過ごした。(甲3)
エ 被告は,上記アイウの日時において,Aとの性交渉を行ったことを否定している。しかし,被告は,平成23年秋から冬にかけての時点で,インターネット上の△△サイトにおいて,Aに対し,同人を「だーりん」と呼びかけ,自らの下着やピル(避妊薬)の飲用について相談する旨のメッセージを送信している。(甲12,甲13,被告本人,弁論の全趣旨)
 オ 被告は,平成23年2月28日,インターネット上の△△サイトにおいて,Aに対し,「だーりん『結婚してください』って言葉が実現するの待っているよ。本当は『既婚者だから遠慮します』って言いたいんだから。」とのメッセージを送り,Aは,被告に対し,「色々な問題を片付けて,ちゃんと申し込むよ。そんなに待たせるつもりは無いよ。」とのメッセージを返信している。(甲14)

2  裁判所の判断

‥(前略)‥イ 被告は,平成22年12月末ころ,Aから離婚したとの事実を告げられたため,平成23年1月ころから,婚姻を前提に真剣に交際することを決意し,平成25年8月26日付けの書面をもって損害賠償請求の意思を伝えられるまで,Aが独身であったと思っていたと主張し,被告及びAもこれに沿う供述をする。
 しかしながら,前記2で認定した事実によれば,被告とAとの間では,平成23年2月の時点で,Aが原告と離婚できていないことを前提とした交信を行っているほか,被告とAの交際の態様も原告から隠れて行っているものと認められるものであることから,被告及びAの供述を採用することはできず,被告の上記主張については,認めることはできない。
ウ 被告は,平成23年1月からAと交際について性交渉を伴っていたことを否定している。しかし,前記2で認定したとおりの宿泊を伴う旅行や,双方の交信の内容から明らかに,被告とAとの交際には,性交渉があったと認めることができる。

3 若干の検討

裁判所は、メールの記載内容をそのまま採用し、これを解釈してAが原告と離婚できていないことを前提とした交信、態様も原告から隠れて行っていると指摘しています。

その直後の記載被告及びAの供述を採用することはできず,被告の上記主張については,認めることはできないとも論じています。判決が出る裁判では、最終的に証人尋問などを通じて、被告や原告本人からその経緯や事実関係を問うことになります。一つの試論として、裁判所は、メールやラインなどの記載だけで不貞行為を認めることには消極的だが、証人尋問などでの主張・説明を排斥する根拠としてメールを用いることには積極的ではないか?実際、判決文はこうも展開します。

被告は,平成23年1月からAと交際について性交渉を伴っていたことを否定している。しかし,前記2で認定したとおりの宿泊を伴う旅行や,双方の交信の内容から明らかに,被告とAとの交際には,性交渉があったと認めることができる。

交信の内容をどう読むと、明らかに性交渉があったと認めることができるのかまでは言語化していませんが、被告の否定する供述に対し、動かぬ証拠としてメールの文面を用いていることがわかります。

『結婚してください』って言葉が実現するの待っているよ。本当は『既婚者だから遠慮します』って言いたいんだから。

この表現だけで不貞行為は難しいかもしれませんが、

被告は,平成23年秋から冬にかけての時点で,インターネット上の△△サイトにおいて,Aに対し,同人を「だーりん」と呼びかけ,自らの下着やピル(避妊薬)の飲用について相談する旨のメッセージを送信

とも指摘して、いますから、不貞行為の存在を否定する主張を主張を排斥していることも理解されます。供述を翻す証拠としてラインやメールなどを用いる傾向?があるように思われます。

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