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不倫判例百選 番外編 - 実は世界でも珍しい、日本の不倫相手への慰謝料

0  不倫慰謝料の請求相手

不倫された妻、いわゆるサレ妻が、自分の夫をさておいて、不倫相手への女性に慰謝料請求するのは、日本での一般的なパターンです。旦那とは、今後の生活を守らなければならないから浮気は許しても、だけど相手の女性は許さない!これが、日本の女性の発想です。

前回ご紹介した、不倫判例百選25の、お宅の旦那に請求してよ、
でも、取り上げてきましたが、やり直したらラッキー、にも近いかもしれません。

さて、これって世界から見ても同じなのでしょうか?

1 先進国の不倫慰謝料請求

不倫相手に対する慰謝料請求は,日本では常識で、多くの調停、裁判で取り扱っています。しかし,これって,不倫相手に対する慰謝料請求が認められる国や地域は例外的であり,先進国の中では日本くらいしか認められていない、と言われているくらいの状況なのです。

日本では,戦前から不倫相手に対する慰謝料請求が認められており、家庭を守ることを優先されています。

諸外国では、自己の配偶者に対する慰謝料については肯定されることはあっても,その不倫相手に対する慰謝料請求まで認められる国はほとんどない状況です。

例えば、アメリカの多くの州では、浮気相手に対する慰謝料請求が原則的に認められません。イギリスでも、浮気相手に対する慰謝料請求は1970年に廃止。ドイツでも、慰謝料請求は旧西ドイツの時代から一貫して認められておらず、フランスでは慰謝料請求は認められていますが、金額はないに等しく、1フランという判決もあったようです。

ニューヨーク州のN.Y.Civil Rights ACT80aを例にとりましょう。
Causes of action for alienation of affections, criminal conversation, seduction and breach of contract to marry abolished. The rights of action to recover sums of money as damages for alienation of affections, criminal conversation, seduction, or breach of contract to marry are abolished. No act done within this state shall operate to give rise, either within or without this state, to any such right of action. No contract to marry made or entered into in this state shall operate to give rise, either within or without this state, to any cause or right of action for its breach.

同州においては、不貞行為により第三者が婚姻関係を侵害する不法行為(alienation of affection)を原因とする金銭的損害賠償請求権は認められません。同州内で行われた行為を原因として州内及び州外で原因行為を主張しても、日本のように慰謝料請求が認容されることはありません。ある意味、根底にあるのは、浮気とは『浮気をした時点ですでに夫婦関係は破たんしている』と考えられており、夫婦関係がすでに破綻している。破綻の責任を浮気相手に慰謝料を請求するべきではないという論理をたどっています。

2 今後はどうなる

不倫相手に対する慰謝料に関する日本と他国と差があると、国際結婚の場合、当事者に外国人が含まれる場合や不貞行為を行った場所が海外の場合,準拠法(どの国の法律が適用されるか)の問題が生まれてきます。日本が先進国にも関わらず、このような法律があることがいつか注目され、判例変更によって認められなくなる日がくるかもしれません。これまでの記事では、理論(学説)では第三者への慰謝料請求を認容しない見解を紹介してきましたが、場合によっては、国際的な矛盾を回避する観点から、慰謝料請求が認容されない日が来る?かもしれません。よりマクロに、世界の家族論の在り方が日本の法律にも影響を与える?かもしれません。

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