見出し画像

不倫裁判百選98 騙されて不倫?

0 はじめに

 東京地方裁判所において令和 2年 5月22日に出された裁判例は、198万円の支払いを認めています。

1 当事者の主張と裁判所の判断

本件の争点は、婚姻関係の破綻の有無及びこれに対する被告の認識でした。

被告の主張 原告とAの婚姻関係(以下「本件婚姻関係」という。)は,被告とAが交際を開始する数か月前から既に円満ではなく,原告とAの間には性交渉もなかった。
Aは,原告の朝帰りが不自然なほどに頻繁であり,原告の浮気を疑っていた。
また,被告は,Aから「ラインも電話もいつでも大丈夫だし,夜も妻はいないから大丈夫」などと言われ,実際,土曜日でもAと連絡を取り合ったり,遊んだりしていた。
さらに,Aは,被告に対し,交際開始以前から原告について「好きで結婚したんじゃない」「女性として見れない」「セックスしたくない」「自分からは絶対に誘わない」「毎日ソファーで寝ている」などと話していた。

これらの事情からすれば,本件婚姻関係は,本件不貞行為当時,既に破綻していたというべきである。 

原告の主張 本件不貞行為が平成30年10月3日に発覚するまで本件婚姻関係は円満であった。

2 当裁判所の判断

(1) 原告とAは,平成18年3月21日,交際を開始し,平成27年5月から同居し始め,平成28年1月23日,婚姻した。その夫婦関係(本件婚姻関係)は,定期的に性交渉を持ち,お互いに帰宅時間や食事の支度等について連絡を取り合うなど,本件不貞行為のあった平成29年10月ないし平成30年9月当時も良好であり,本件不貞行為に至るまで離婚の話が出ることも別居することもなかった。
(前提事実(1),甲4,6,証人A,原告本人,弁論の全趣旨)

(2) 被告は,本件不貞行為が開始された平成29年10月当時,Aが既婚者であり,配偶者(原告)と同居していることを認識していた(前提事実(3),被告本人)。
 被告とAは,本件不貞行為期間中,多いときは週1回程度の頻度で性交渉に及んでいた(証人A)。

(3) 被告は,平成29年11月7日,Aに対し,8時頃に「午後休して遊び行こうよ」「ホテルに連れ込まれる覚悟でいてね」,20時頃に「Aさんにもっとボディタッチしたかった」「私の気が済むまで,Aさんのこと愛撫したいの」などとLINEメッセージを送信した(争いがない。)‥(中略)‥

(10) 被告は,平成30年3月30日,Aに対し,「帰るの?一緒に寝ないの?」「一緒に寝たい!」「毎日会いたいもん」「毎日舐めたいもん」「お願い」「舐めさせて」などとLINEメッセージを送信した(争いがない。)。

(11) Aは,平成30年5月,被告に対し,原告が妊娠したことを伝えた(前提事実(4),乙18,被告本人)。
 被告は,同月13日,Aに対し,「終わりの日まで,セックス楽しもうね!」「大好き」などとLINEメッセージを送信した(争いがない。)。
 また,被告は,この頃,Aに対し,「Aさんの奥さんのお腹の子供が,産まれてくる前に死にますように」「無事に産まれませんように」「早くお腹の赤ちゃん死ねばよい,お腹の子供,今すぐ死ねばいいのに」「堕ろせばよかったのに」「奥さん早く死産して」「赤ちゃん死んでくれればそれでよい」「奥さんと赤ちゃん早く死にますように」「死ねよ。奥さんと子供。早く死にますように」「殺したい」「奥さんに子供産ませた自分を悔やんで」
などといったLINEメッセージを送信するなどした(弁論の全趣旨)‥(以下略)‥
(1) 被告は,本件不貞行為当時,本件婚姻関係は既に破綻していた旨主張するが,前記認定事実(1),(7),(8),(12)及び(16)によれば,本件不貞行為が開始された平成29年10月当時はもちろん,本件不貞行為が終了した平成30年9月当時においても,本件婚姻関係が良好であったことは明らかであり,本件不貞行為当時に本件婚姻関係が破綻していたとは到底認められない。

この点に関し,被告本人も,原告とAとのやりとり等(甲4,乙14の1・2,15)を見て,既に本件婚姻関係が破綻している旨の当時のAの説明が嘘であったと思った旨供述している。

 被告は,本件婚姻関係が破綻していた根拠に関し,被告とAとの間のLINEのやりとり(乙1ないし7,9ないし11)を証拠提出した上で,原告とAの間には既に性交渉がなかった,Aが原告の浮気を疑っていたなどと縷々主張するが,いずれもその当時Aから聞いた話を中心とするものにすぎない。

また,原告とAとの間に性交渉があったことは前記認定事実(1)のとおりであり,これは原告とAが長女をもうけていることからも明らかである。

よって,被告が主張する上記各点は前記認定判断を左右しない。

3 若干の疑問

 大体の場合、不倫相手の奥さんとは破綻していることを旦那さんが説明するそうです。

裁判所は以下のように述べています。

やりとり(乙1ないし7,9ないし11)を証拠提出した上で,原告とAの間には既に性交渉がなかった,Aが原告の浮気を疑っていたなどと縷々主張するが,いずれもその当時Aから聞いた話を中心とするものにすぎない。

また,原告とAとの間に性交渉があったことは前記認定事実(1)のとおりであり,これは原告とAが長女をもうけていることからも明らかである。よって,被告が主張する上記各点は前記認定判断を左右しない。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?