赤い日差しが差し込む部屋は
さっきまでは 僕らと同じ匂いがした
西大路七条の北尾さんの下宿
さっきまで 僕らは此処で
来ないかもしれない船の予定表について
空気のない日について
話し合っていたというのに
誰かがいなくなる ひとりずつ
後悔とか失敗とかいろいろあった
そんなもの 少しずつ残しながら
誰かのすべてがいなくなる
自分の影が少し長くなる
影を捕まえる 誰かの部屋には
誰もいない もう
19歳の僕は何の予定もなく
意識の中では明日さえなく
『独りであること』『未熟であること』
それが20歳の原点であるという
高野悦子の言葉を闇と闇をつなぐ
魔法のように 繰り返し呟きながら生きて
僕はあの日の僕とは同じにはなれない
あの部屋の赤い日差しは
おそろしくふかい 井戸
のように ふかく ふかく
差し込み続ける
僕はいつの日か
あの赤い日差しの下で何もない部屋で 大の字に
寝ころびながら 最期の時を知るだろう
2022年に詩集を発行いたしました。サポートいただいた方には贈呈します