土の色が ただの鉛色にしか見えなかった日々
独りであることを 肯定し
4畳半の世界にも ほのかに香る 桜の花びらが
アスファルトの上で 舞っているのを
何の感情もなく眺めていた日々
他人を傷つける言葉を 虫が湧き出すように
次々と繰り出しながら
信じることを軽蔑し 豊かであること
色彩のあるもの全てと敵対し
愛されることなど 決してないのだと
唇をかんで 天井のシミをにらみつけていた日々
それはいまでも 昨日のよう
包まれたことのない ゴツゴツの中途ハンパな代物は
そのほっそりとした 手に
触れたとたん
世界は 丸みを帯び
モノクロにしか見えなかった世界は 突然
驚き ときめき 待ち遠しさ
香り くちびる ほっそりとした腰つき
そんなもろもろの 入り交じった世界になった
あの日から ぼくは
春が来るのが 待ち遠しくなった
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