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詩)森のこえ  ひとのこえ



ひとりで春に 旅に出たら
生活の匂いのする どこかの駅のホームで 
行き交うひとを半日くらい見ていたい
そんな世界がなくなってしまう前に

ひとり黙って去っていった
もう少し あともう少し 一緒にいて 無駄話とかして
少しだけ希望の持てる一日を送りたかった
あなたのいない世界になってしまった

真面目に考える人が先に逝ってしまって
問題解決の糸口が また消えてしまった
静かに ほんとうのあるべき道を模索していたのに 
その道はもう消えてしまって
経済性の虜になり 聞こえない耳だけが残る

ただ一つの言葉だけが残った
ひとが 全く違うものへ変わって行く世界の際
そんな時に遭遇している
地球のマグマが冷め始めていて 
冷たいライトで青々と道なき道が照らされているとしたら
その先にある 深い黒を自覚しながら
昨日からずっとあなたの音楽を聴いている


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