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詩)戯作集 河童/僕らの毎日/ある阿呆

河童

 

俺は河童だ

河童は偉い

みんな俺の顔色をうかがう

なんでも意のままだ

ところがだ

亀が俺を見て言うことには

おまえは河童ではない

河童のふりをしている河童もどきだ

「もどき」か

俺はつぶやいた

亀よ もどきで何がいけない?

どうでもいいではないか

民は畏れ 民は忖度し 民は従う

民は動き 民は言いなり

俺は河童だ!

それを聞いた亀は

首をますます長くして がははと哄笑した

おまえはやっぱり 張りぼてだ

表面の薄っぺらなもの以外 何も解っておらぬ

見よ 民は動き  民は畏れず

民はいま お前が誰かなどに見向きもせず

お前の次を探している

 

 

僕らの毎日

 

風が冷たいのである

一生懸命 外で おしっこを我慢して

仕事しているのである

風がいじわるにぷうーと吹くのである

 東海道線が毎日遅れるのである

ごしごし詰め込まれ

リュックは前にと言われるのでそうして

とりあえずなんとか時間を潰しているのである

 僕らの毎日 そんなことの繰り返しだが

 それでも責任くらいはちゃんととりたい

肝心なところで筋を曲げたくない

不正義に背を向けて生きたくはない

そう思って生きている

 

 

ある阿呆

 

首が疲れている 肩が重い ガチガチだ。

膝は左が踏み込むと痛い 右は階段を降りるとき曲げると痛い
腰がだるい

脳は思い出すのに時間がかかる
屁理屈ばかり思いつく

眼が疲れる

いかんいかんこんなことではとか思う
身体は自分の思う通りに動けない

詩なんか書いてる場合なんだろうかとか思う

でも やはりなにか無性に書かずには要られず

だからますます肩が凝る 眼が疲れる
眼がしょぼしょぼする

もう寝ろアホンダラ そう自分に言い聞かせる いったん離れる

結局また書きはじめる。時計が午前零時を回る 

阿呆である

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