詩)老いたるレザージャケット
歳をとったレザージャケット
鼻をくすぐる匂いがある
ふうっと息を吸い込み 匂いを纏う
もう半世紀以上も経て擦れや破れもある
この匂いは人肌を欲しがるのだ
動くたびに吸い付く
新品ピカピカの時は
戦火の中 二十歳そこそこの航空部隊員が纏い
戦が終わり誰かの手に渡り 払い下げになり
また何人かの手を経て古着となり
いま日本の身長165センチ体重72キロの
凡人男が着ている
幾つかの別れがあっただろう きっと
別れは物語となりやがて匂いとなり
カウハイドのレザーは半世紀以上
男たちの生きた時代の戦争、家路、過酷、運命、女
その全てを匂いに
老いたジャケットのその匂いを愛す
老いることは素晴らしい
2022年に詩集を発行いたしました。サポートいただいた方には贈呈します