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おとうさんがきらいだった おとこだったらよかったなと いつもわたしにつぶやいた あにとわたしがはんたいだったら よかったのに と わたしもおもった おとこのくせに と いわれなかった おおきいんだから と いわれなかった わたしはおんなのすえっこで わたしは ちちのきにいりで それでも そんしているようだった おとうさんがきらいだった おおきくなったらなにになる そうりだいじんが わたしのこたえ だけど いえでえらいのは だんなさんだと おしえられた ほんきでそうだとおもっ
その大木は原っぱに一本 樹っていた わたしはその大木のそばに 立っていた 春、生々と葉が芽吹く 夏、青々と葉がひらく 秋、蕭々と葉が色づく 冬、寒々と葉が落ちる その時々、一瞬、一瞬が わたしの眼に映じ そして 消えてしまう 大木はわたしの前に聳える しかし 大木はわたしの前に消える その大木は わたしの内の深い処に 根をはっている
死とか 血とか 言いますか 簡単に 内臓飛び出したり 吐いたり 恨んだり ちょん切れたり しますか 造作もなく ありふれて そんなにも 死にたいですか 自分のことを 見てほしいですか 自分のことを 傷つけたいですか もしや それで 救われるとでも 思っていますか 血の吹きでる 生き物を 殺した事は ありますか その まだ温かい 内臓を つかんでみてよ 赤ちゃんが いっぱい死にました 赤ちゃんを 助けたい お母さんも 死にました 誰かが 何かのために 皆のために 死にました
先日、私が数年前にクラウドファンディングで絵本を2冊出した、ということを知った知人からこう尋ねられた。 「どうして絵本を描こうと思ったのですか」 甦ったのは8年前の記憶。 当時、就活生だった私はコピーライターとして京都の広告会社に勤めるか、東京の大手人材会社に行くかで悩んでいた。 ある冬の日の朝、京都の広告会社へのインターン出勤前、四条烏丸のカフェベローチェでリクルートスーツの私はホットココアを飲みながら窓の外を見ていた。 考えていたのは 「どうして私は"人間"に生
どんな形か いつやってきて いつ終わりが来るのか 見えないものが来たる時には 偉大さを称えてくれた 「貴方はいつも努力しています 私の何倍も頑張っています こうして人々の目が届かない時でさえ 光を放ち続けているのですから」 闇を与え 熱を与え 多くを殺してしまいと嘆いた時には 救われたものも多いと教えてくれた 「私は貴方がいなければ 人々からは見えません 人から存在を認めてもらえないこと それは死と同等なのですから」 それなのにそんな君が 本当は私を憎んでいると 不安
朝に浮かぶあの真っ白なお月様を見たことがありますか 黄色に輝く月より、あの不思議な球体が好きです お昼に吹くあの冷たい風をご存知ですか その肌に触れる匂いはどこから来たのでしょう 夕暮れにあの空を染めたのは誰ですか 父が言っていました、一瞬なんだって 真夜中に動くあの雲はどこに行くのですか ばれないようにこっそりと動いて 好きだけど、ずっとそばに置いておくことができるものは少ない 嫌いだけど、すぐに離れてくれるものは少ない でもね きっとそうでなければ みんな好きで
時の砂の間で迷子になる、紅の太陽。その狭間に囚われた、古の言の葉。 「私達は夜ふかしをします」 と、夜行性の誤字が主張するので 「そうね」 と葵は答えた。 重なり合う影が頷いて、ビロッと伸びていく。取り残された感満載の光の子らは、不平不満のオンパレード。嘘がつけないアスファルトは、黒さを一層増していく。 「私達はまだ子供なんです」 と、面の無い地球(ホシ)が主張するので 「そうね」 と葵は答えた。 見下ろすバカンス。カーテンをすり抜ける馴れ馴れしい眼差し。
ずっと 欠片を探していた 探すために 生きていたようなものだ 欠けた部分が 傷口のように滲みて 不恰好だから と言うと 言われなきゃ 気づかなかったし 知っても 気にならないよ と、あなたは答えた 私と同じように 欠片を探していた人は 欠けた部分が好きで 欠けている君だからこそ そこが魅力で 好きなんだと 言われたそうだ 本当は私も そう言われたかったのかも しれない あなたの愛が無いなどと 疑うつもりは毛頭ないが 寂しくて 物足りなく感じた そして 気づい
君は猫の箸受けになった 大好きな猫の箸受けになった 覗いても叩いても隠れん坊 仕方ないから箸を置く 可愛い少しとぼけた箸受けだ 祖母は鮭をくわえた熊になった 父は抱腹絶倒の民謡になった みんな何処にも行っていない 何があっても我家はここだ 今朝も君の胸に箸を置く
今年の初めに作った結び目が ほどけぬようにと過ごした冬 切ろうと思えば簡単で ほどこうと思えばとても簡単で でも その一歩手前で やはりそれが出来ずに やはり 切りたくなくて ほどきたくなくて 気づけば 冷たい強風の中 しっかりと結び直しておりました 明日からは もう3月 また新たな季節が始まるのですね 最初は少し緩かった結び目も 月日が経つ程に
彼は 詩人で絵描きだった 肌は少し浅黒く 口をあまり開かず喋る 目には斜視があって 前かがみで歩き 人の中では いつも浮いていた 彼と知り合ったのは 私がアパレルの 倉庫作業の仕事を していた時 新しく入って来た バイトの一人だった お互い映画や音楽 小説等の趣味が 合ったせいか 意気投合し 私生活でもよく遊んでいた 彼はバスキアを尊敬し 絵を描き 太宰や森鴎外等の 純文学を好んで読み 詩や短い話を書いていた 家に行くと 一人暮らしなのに 二段ベッドが置いてあり 二段ベッド
春の雨おもく 祖母のたましいは 白いはなたば 向こうからやってくる風と こちらからゆく者が おなじ橋をわたってゆく わたしのように 死をしんじないものは いまわのとき何を伝えたらいいか わからない こどもの口を借りて はじめて さいごのことばがみつかる ひいおばあちゃん またあおうね いろいろとありがとう こどもと言えた いろいろの中に わたしたちに願ってくれた幸せと 祖母と母から わたしとこどもに つながるいのちまで 含まれて わたしのように こころのつめたいもの
保育園に子供を、私が送って迎えに行く。 夫がオフィスに泊まり込んで帰れなくて 私も昔、そんなふうに働いていたよねと 家で話すかわりに、昼休みに電話で話す。 今日は天気がいいから外に出てみたら? と夫が言い、 行くとしたらどこのカフェがいいかな? と私が聞く。 私の海外転勤に同行して、主夫になり、 私が育児休暇の間は、会社勤めをして、 私が働いている時は、フリーランスで、 私が病気をしてまた、会社員になった。 さっき3月末でやめるって社長に伝えた。 あ、いま川で鳥が魚食べ
私の顔を書いてください 貴方の言葉で 貴方に写る私をありのままに お世辞や嘘はいりません 思ったとおりに素直に書いてください 私は綺麗ですか 私は魅力的ですか 私は優しいですか 私は知的ですか 沢山の賛辞は嬉しいけれど 刻まれる事なく消費され 作った笑顔と共に消える 見つけて欲しい寂しさと 見透かされていない安心が 複雑に絡み合って 居心地の悪い世界がまた一つ増えた のっぺらぼうに落書きをして 髪を乗せれば貴方にも自分にもなる様で 輪郭だけを描いた画用紙は ぐちゃぐちゃ