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デーリー東北新聞「ふみづくえ」リレーエッセイ掲載

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記事一覧

「作る」の原点

「作る」の原点

デーリー東北新聞「ふみづくえ」
リレーエッセイ 2021年3月10日掲載

ジンジャー姉妹 湊山はる

 先日、姉湊山りえから、とあるまとめ記事のURLが送られてきた。要約すると、デザイナーに小さい頃何をして遊んでいたか尋ねてみると、かなりの高確率で「買えないゲームなどの代わりに自作をしていた」と答える、というものだ。ゲームに限ったことではなく、幼少期から選択肢に「つくる」コマンドが備わっていた人

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山と海に育まれて

山と海に育まれて

デーリー東北新聞「ふみづくえ」
リレーエッセイ 2021年2月3日掲載

ジンジャー姉妹 湊山りえ

 私たちが「ジンジャー姉妹」として活動する中で、このふみづくえの連載のお話をいただいたことを機に、そろそろ活動名を決めようかという話になった。最初は姉妹でそれぞれ呼び合っていたように、姉は「アネ」、妹は「ハル」として活動していた。けれど、エッセイの名前欄にそのまま「アネ」と記載されることを想像した

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鈍色とクリスマス

鈍色とクリスマス

デーリー東北新聞「ふみづくえ」
リレーエッセイ 2020年12月23日掲載

ジンジャー姉妹 湊山はる

 2020年。心の置き所がいまいちつかめないまま過ごしているうち、気が付くと今年も終わりを迎えようとしている。今月は大人気コミックの完結巻も発売し、店頭に長蛇の列が出来たのも記憶に新しいが、『書を持って家に篭ろう』が時代のスタンダードになろうとは、寺山修司も「よもやよもや」と言い出しそうな事態

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お米が無くとも

お米が無くとも

デーリー東北新聞「ふみづくえ」
リレーエッセイ 2020年11月18日掲載

ジンジャー姉妹 湊山りえ

 朝夕の冷え込みが強くなって、いよいよ秋が終わり冬がやってくるんだなぁと感じる日が増えた。そんな日はいつも「ひっつみ」を作りたくなる。

 ひっつみとは南部地方に伝わる伝統料理で、小麦粉をこねて薄く伸ばしたものを指でちぎって、野菜や肉、魚介と共に煮込む料理だ。いわゆる「すいとん」のことであるが

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歌声のデザイン

歌声のデザイン

デーリー東北新聞「ふみづくえ」
リレーエッセイ 2020年10月14日掲載

ジンジャー姉妹 湊山はる

 冒頭からこんなことを述べるのは大変恐縮ではあるが、私はそこそこ歌がうまい。そこそこ歌がうまいので、南部弁でカバーした曲をYouTubeにアップして、これまたそこそこ再生していただいたりしている。
 
 だが実は、今まで音楽活動をしたことは一切無く、YouTubeに投稿を始めるまでカラオケ以

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動画作りの裏側

動画作りの裏側

デーリー東北新聞「ふみづくえ」
リレーエッセイ 2020年9月9日掲載

ジンジャー姉妹 湊山りえ

 YouTubeで「ジンジャー姉妹チャンネル」を開設して1年がたつ。普段、どのように動画作成を進めているのか、その裏側を少し紹介してみようと思う。動画作りは姉妹2人で行っており、姉の私は解説動画やトーク動画、妹のはるは歌の動画がそれぞれの担当だ。

 2人ともデザインの仕事をしているので、動画作り

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残したいもの

残したいもの

デーリー東北新聞「ふみづくえ」
リレーエッセイ 2020年8月5日掲載

ジンジャー姉妹 湊山はる

 本来なら8月上旬は八戸にいて、朝市や三社大祭を楽しんでいる予定であった。――しかし残念なことに、コロナ禍で三社大祭は山車行列などが中止。オリンピックも開催できないくらいだからしょうがないのだが、北国の短い夏における大切な楽しみが失われてしまったのは、やるせないの一言に尽きる。それでなくとも、感染

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南部弁のイメージ

南部弁のイメージ

デーリー東北新聞「ふみづくえ」
リレーエッセイ 2020年7月1日掲載

ジンジャー姉妹 湊山りえ

 私が子どもの頃、周りの大人たちが使う南部弁は独特の語彙があり、ひそかに憧れたものだった。大人の来客が多い家で、商売のこと、社会情勢のことなど、今思えば子どもの私にはよく分からない話をしていたと思う。加えて、大人の話に子どもが入ってはいけない、という方針の元に育てられたので、なおさら子どもと大人の

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ごんぼほりのたんたん

ごんぼほりのたんたん

デーリー東北新聞「ふみづくえ」
リレーエッセイ 2020年5月27日掲載

ジンジャー姉妹 湊山はる

 もう、毎日ヘトヘトである。新型コロナウイルスによる緊急事態宣言を受けて東京では保育園も休園が続いており、1歳9カ月の娘と朝から晩までベッタリの生活だ。うわさに聞いていた「イヤイヤ期」も到来しつつあり、ニコニコと育てやすかった赤ちゃんは、号泣しながら地べたに転がって足をバタバタさせるステレオタイ

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短い春に

短い春に

デーリー東北新聞「ふみづくえ」
リレーエッセイ 2020年4月22日掲載

ジンジャー姉妹 湊山りえ

 都会の春は短い。ついこの間までコートの襟を立て肩をすくめていたと思ったら、あっという間に桜が咲いて散っている。気がつけば既に汗ばむ陽気で、「ああ、またあの灼熱の夏がやって来る」と東京の酷暑を思い、げんなりするのだ。

 高校卒業までを過ごした八戸から東京へ移り住んで、もうすぐ30年になる。それ

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