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7インチ盤専門店雑記553「恋をしようよ/君を愛したい」

ウィリー・ディクスンが書いた「I Just Want To Make Love To You」はブルース・トラディショナルの中でも最も好きな一曲です。実に多くのカヴァーを生んだ曲ですし、いろいろなタイプのカヴァーがあって面白い曲です。初出はマディ・ウォーターズ、…随分聴きました。ブルースは一時ズブズブにハマりましたが、その原因となった曲の一つでもあります。

有名なところでは、エタ・ジェイムス、チャック・ベリー、ローリング・ストーンズ、ヴァン・モリソンなどがあります。それぞれ個性を感じさせるカヴァーであることが面白いですね。

ところで、最も売れたカヴァーは、おそらくフォガットだったんではないですかね?邦題はそれまでが「恋をしようよ」だったのですが、フォガットは「君を愛したい」になってしまいました。しかもヘッダー写真のように2度シングル・カットしております。1972年のファースト・アルバムから彼らのデビュー曲としてシングル・カットされ、アメリカでは83位までいきました。1975年の「Slow Ride」の大ヒットを経て、1977年にベスト・ヒット的なライヴ盤をリリースします。ここからも再度シングル・カットしますが、何とビルボードのシングル・チャートで33位までいきます。このライヴ盤、アルバム・チャートでは11位まで行く大ヒットとなりました。

フォガットの1st、見本盤だからかメチャクチャいい音で鳴ります
名盤ライヴ、大ヒットの次はお決まりの変型ジャケ
わかり難いのでもう一枚

ものの本を読んでいても、フォガットって評価されていないんですよね。日本ではあまり人気なかったみたいですし…。70年代の日本ってブリティッシュ・ロックがもの凄く人気があって、アメリカンなものは西海岸や一部サザンロックに限られていたように思うんです。この連中だって元サヴォイ・ブラウンの残党バンドですから英国のバンドですが、アメリカ南部をベースとしてライヴに明け暮れていたようで、アメリカンなテイストが満ち溢れておりましたから、仕方ないのかなと思わなくもないんです。

ところがアメリカでは、ブルースをハードロック・スタイルでリメイクして結構なヒット・アルバムを連発しました。ここでも少々難しい事情があって、ブルース好きのリスナーは、ローリング・ストーンズ程度のリメイクならかなり好意的なのに、ハードロックにすると途端にダメなんですよね。音が大きければいいのか…みたいな誤解もあるんでしょうけどね。またブルースメンからもあまり好意的に見られていないようでした。でもね~、こういった連中がヒットすることで、遡ってオリジナルを聴いてみようとする輩は多いわけで、カヴァー侮れじ、もっと評価されるべきだと思いますけどね。

さて、個人的には、大好きなバンドの大好きな曲ですから、少しでもいい音で鳴らしたいわけですが、今回の聴き比べはレベルが高いと申しましょうか、7インチ盤圧勝ではないところが面白いです。如何せん、ファースト・アルバムが国内盤の見本盤でして、これがモノラル音源の疑似ステレオかと言いたくなるほどラフなエンジニアリングなのですが、それがかえって迫力ある鳴りになってしまいます。72年の7インチ盤も悪くはないのですが、アルバムを凌ぐ鳴りかというと…そこまでは申しません。

77年のライヴの方は、かなり長尺の演奏を縮めてシングルにしておりますから、ヒットはしたものの、どうも満足できません。LPで長尺演奏を楽しむのはありなんですけどね。つまりどちらも7インチ盤がLPに負けているような曲なんです。そんでもってLPを比べると、個人的には72年の方が圧勝なんです。個人的な独断と偏見で行くと、72年LP、72年シングル、77年LP、77年シングルという序列になってしまいます。72年のLP、アメリカでは127位どまりでしたから、あまり玉数豊富な盤ではありません。国内盤と再発Rhino盤は保有しておりますが、もう少しいろいろ試してみたい盤ではあります。

YouTubeの音ではちょいと分かりづらいですかね…。でもしっかり低音が出るスピーカーから、迫力ある音で鳴らしたい音源だと思いませんか。

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