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7インチ盤専門店雑記402「ドナルド・フェイゲン人気」

ドナルド・フェイゲンってホント人気がありますね。私の周りでは、聴かないという人はいらっしゃるのかと言いたくなるほどです。誤解を承知で申しますが、スティーリー・ダンの話題も「エイジャ」や「ガウチョ」あたりは初級レベルと思いたくなります。「キャント・バイ・ア・スリル」の国別の音質の違いあたりを語ってくる方は、もう少し聴きこんでいらっしゃるかと思っていたりして…。

大抵は、まず「The Nightfly」ですよね。「I.G.Y.」名曲です。いい音で鳴ります。異論はございません。こだわる方は「I.G.Y.」の7インチ盤にいったり、「ニュー・フロンティア」あたりでしょうか。これがまたいい音で鳴るもので、私も状態のいい盤を見かけたら欲しくなります。

7インチ盤でも映画「再会の街 Bright Lights, Big City」のサントラからシングル・カットした「Century's End」あたりや、同じく映画「ヘヴィ・メタル」のサントラからの「True Companion」あたりの話題となると、相当上級かと思われます。フツーにいい音で鳴ります。一般的に音がいいと言われる音源に負けるような音質ではありません。映画なら「FM」もいい曲、いい音ですよね。

彼の凄いところは、音質にこだわった録音もさることながら、アメリカン・ポップスの美味しいところをエッセンスとして散りばめていたり、バッキングのディテールにもの凄くこだわって、これでもかというほど演奏全般に配慮していることでしょうか。ヘッダー写真の自伝を読むと、本当に古い音楽が好きで、これほどかと驚かされます。ロバート・ジョンソンの話題が出てくるのは、ちょいと意外でしたけどね。

面白いところで、ゲスト参加した音源でも、「ああドナルド・フェイゲンっぽい」と思う瞬間があるレコードです。有名なところでは、まずFar Cryあたりでしょうか。フィル・ガルドストンとピーター・トムのシンガー・ソングライター2人が組んだユニットです。曲の魅力はまあまあだったりしますが、音はやはりいいです。70年代末頃のスティーリー・ダンに参加したメンツがごそっと参加しております。一曲目からスティーリー・ダンっぽい演奏が笑えます。

そもそもスティーリー・ダンのプロデュースもやるエリオット・シャイナーがプロデュースしてますから当然なのかもしれません。彼はA&Mスタジオのエンジニアだった人ですから、音質にもこだわりそうですよね。エグゼクティブ・プロデューサーとしてフィル・ラモーンの名前がありますから、当時のビリー・ジョエル君とこのリズム隊がいるのも納得ですが、…ちょいとチグハグかもしれません。フィル・ラモーン・チームがいなければ…という気もしないではないですね。

テレンス・ボイランも忘れてはいけません。よく忘れてますけどね。ジェフ・ポーカロ、デヴィッド・ペイチあたりのTOTO組もいますが、冒頭のドナルド・フェイゲンがピアノをひく「Don't Hang Up Those Dancing Shoes」がいいんです。ジム・ゴードンとチャック・レイニーもいい仕事をしています。こういったスタジオ・ミュージシャン的な人たちが大挙して参加している盤特有の散漫さは否めないアルバムですが、この一曲で買いでしょう。

もう一つ、モデルさんのRosie Velaという女性シンガーの1986年のデビュー・アルバム「ZAZU」は、何気にドナルド・フェイゲンのマイナスの存在感を意識させられます。ゲイリー・カッツがプロデュースしておりまして、80年代の療養中だったドナルド・フェイゲンも担ぎ出されております。B面の2曲を除いて7曲でシンセを弾いておりますが、あまり調子がよくないところが、この時期だからしょうがないかという、地味~な音に徹しております。暗いタイトル・チューンが結構好きだったりするのですが、お付き合い程度の音源と言うべきでしょう。ロージーさんが全部曲を書いておりまして、せっかくウォルター・ベッカーやリック・デリンジャー、トニー・レヴィンといったテクニシャンも集結しているのですが、生かせておりません。人脈の無駄遣いです。

半分冗談ですが、ドナルド・フェイゲン上級者と意見交換してみたいですね。レファレンス盤として使うこともあって、最も多く聴いているアーティストの一人ですが、やはりドナルド・フェイゲンに人生を変えられたという人の話も聞いてみたいですね。いらっしゃいませんかね…。


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