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7インチ盤専門店雑記477「チャーリー・ワッツ・オーケストラ」

ローリング・ストーンズのドラマー、チャーリー・ワッツの「Live At Fulham Town Hall」です。名義はチャーリー・ワッツ・オーケストラとなっております。リリースは1986年、ローリング・ストーンズが解散の危機に瀕していたという、バンド内の人間関係が最悪になってしまった時期のレコードですね。

前年にはビル・ワイマンが中心となったウィリー・アンド・ザ・プア・ボーイズのアルバムにも参加しておりますが、ここでは完全にストーンズ人脈以外で楽し気にやっております、…おそらく。写真で見る限りは、妙に楽しそうですね。

ビル・ワイマンは70年代からポツポツとソロを出す人でしたから、さほど気にはならなかったのですが、チャーリー・ワッツはここでお初のソロ・プロジェクトのアルバムをリリースしたわけです。この後結構な枚数のソロをリリースしますからそういうスタンスも理解は得られると思いますが、如何せん最初の一枚です。スタジオ・アルバムは90年代に入ってからポツポツ行きますけどね。

何はともあれ、中身は古臭いビッグバンド・ジャズです。メンツは全く知らない人たちです。1曲目が複数の人間がドラムスをぶっ叩いているような「Stomping At The Savoy」ですから、おやこういうコンセプトでしたかと思いきや、だんだんドラムスも入ってないような曲も出てきます。ご本人は結構なジャズ好きだということでもありますが、とにかくストーンズ的なロックやロックンロール以外のことがやりたかったんでしょうかね。ミック・ジャガーもキース・リチャーズもロン・ウッドもみーんなソロ活動が活発な時期ですが、どうなんでしょう、冷却期間としてこれはアリだったのかもしれませんね。

ジャケ裏では、"FOR STU"という文字が目を引きます。ストーンズ・コレクター泣かせのベン・ウォーターズのアルバムを紹介した記事でも詳しく書きましたが、6番目のストーンズと言われ、しょっちゅう喧嘩を始めるストーンズの面々のまとめ役だったというイアン・ステュアートが亡くなった年にリリースされた盤でしたね。申し訳ないという気持ちが滲み出ている6文字と思われます。

少し年上のチャーリーさんにとっては、バラバラにソロを展開する手のつけられない奴等に対して、「それなら、これでどうだ」と示した一発だったのかもしれません。そう考えると、思い切りドラムスをぶっ叩いて楽し気にやっている姿も微笑ましく思ってしまいます。


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