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7インチ盤専門店雑記665「ワーデル・グレイ」

若くして亡くなるジャズ・ミュージシャンは多いのですが、彼はマフィアに撲殺されたとかで、何ともいたたまれない気分になります。如何せん昔の人というイメージです。アナログレコードでも出回っている玉数は少ないように感じます。まあ、私が語るべきアーティストではありませんが、手元にヘッダー写真の「Memorial Vol.1」がありまして、気まぐれで針を下したところ、意外に聴けるので、オヤッとなっております。おそらくいろいろ多く聴いてきて、昔よりもジャズの中でも古いものに対する耐性が向上したようです。まあ、V-Discの音源なんぞもさんざん聴きましたし、昔は受け付けなかったビッグバンドものも、少しは聴くようになりましたからねぇ…。

「Memorial Vol.1」は1955年リリースということですが、絶頂期と言っていいのでしょうか、その後があまりないので、そう感じてしまいますが、とにかく上手い人ですね。えらくスムーズで流れるような演奏です。意外にのびのびとしていて、パワフルなところもあったりします。

デクスター・ゴードンと比較される文章が散見されるのですが、同時代性なんでしょうか…と、そんなことを考えながらレコード・ラックを眺めていたら、ワーデル・グレイの名前とデクスター・ゴードンの名前が一緒に書いてある盤を見つけてしまいました。

コレねぇ、ヘンな盤なんですよね。タイトルは「The Chase and The Staple-Chase」でいいんだと思います。A面で「The Chase」と「The Staple-Chase」の2曲をやっているんです。B面は別アーティスト、トニー・スコットの音源です。オムニバスの語源になった乗り合いバス的な盤ですね。そもそもワーデル・グレイもデクスター・ゴードンもテナー・サックス奏者なので1曲ずつやっているのかと思ったら、2人一緒に2曲をやっているんですね。時期的に当然なのですが、元は10インチ盤だったものを12インチにした段階で裏面の音源がくっついたのでしょう。

…まあ、そんなわけで、レコード・ラックのどこに置くかと考えたときに迷ってしまって、結果的に未整理箱常駐盤という、ヘンな立ち位置の盤なんです。

ライナー的な裏ジャケを読むと、40年代から50年代にかけて、バトル・ジャズなるものが存在したとかで、テナー・サックス2人でバトルするんですと。…何だかあまり惹かれないのですが、ワーデル・グレイvs.デクスター・ゴードンの他にも、ジーン・アモンズvs.ソニー・ステットも人気だったようです(…ジーン・シモンズではありません)。…要はそれで、ワーデル・グレイというとデクスター・ゴードンと比較するような文章が多いわけなんですね…。ついでに「Memorial Vol.1」が妙にのびのび演奏している理由も見えてきましたね。ライヴならまだしも、スタジオ録音でバトルって考えたくないしなぁ…。性格にもよるんでしょうけど、バトルはなぁ。ドラムスとベースが管を煽っているようなのは好きなんですけどね。…でもやっぱりライヴでの話ですね。

ちなみにこの盤、同じ曲のテイク違いが並べて収録されておりますから、カフェで流すにしても、お客様がいらっしゃる時には憚られるものです。別テイクを並べるのはCDだけのことかと思っておりましたが、アナログレコードでもあるんですね。…やめてよ。

嗚呼、最近、この手の古いジャズが結構心地よくていけません。

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