7インチ盤専門店雑記663「スパニッシュ・ブルー」
8月23日にジャズ・ギタリストのラッセル・マローンが来日中に急逝しました。享年60歳、私より若いアーティストの訃報は気の毒でなりません。ロン・カーターのトリオに起用され、国内を転戦しておりましたが、死因は明らかにされておりません。環境が変われば何が起こるか分からないという感覚が自分にはありまして、海外ツアー中に急逝されるケースが多くあることも何となく納得してしまいます。リーダーのロン・カーターの方がかなり年上ですよね。彼は1937年生まれの87歳、現役でいらっしゃることがビックリの年齢ですが、ツアー中に若いバンド・メンバーが急逝するということがどれだけ心痛か、察しきれるものではありません。
ヘッダー写真はロン・カーターの1974年リリースのアルバム「スパニッシュ・ブルー」ですが、CTIからリリースされているんですね。もうあちこちに書き散らしたことですが、クリード・テイラーのWikipediaはやはり読むたびに凄いなぁと思います。バイオグラフィの部分を、ちょいと引用しておきます。
さて、ロン・カーターですが、1973年から76年にかけて、CTIから4枚のアルバムをリリースしております。「Blues Farm」「All Blues」「Spanish Blue」「Yellow & Green」です。…なんだかみんな色がついてますね。「Spanish Blue」はCTIの3枚目、その後に1枚KUDUから「Anything Goes」をリリースしているんです。「どういうこと?」と思っていたのですが、ソウル・ジャズ、黒人ミュージシャンを中心としたKUDUは、CTIの傍系レーベルにあたるんですね。面倒な移籍云々ではなかったんですね。
まあ、何でそんなことが気になるかというと、KUDUから7インチ・シングルをリリースしているんですよ。…タイトル・チューンの「エニシング・ゴーズ」。別にKUDUじゃないとシングルが出せないわけではないのでしょうが、何かしらリリースしやすい環境があるんですかね?
以前から書いておりますが、7インチ盤でジャズを聴くというのは、60年代は別にフツーのことだったと思うんです。7インチ盤専門店をやっていて、ジャズのボックスがあることを面白がってくださるお客様が少なからずいらっしゃいまして、この辺の盤も「珍しいねぇ」と一頻り騒いでくださるわけですよ。だけどこれ、70年代なわけで、…まあ正直なはなし、これシングル・カットして何の意味があるの?と思わなくもないのですが、7インチ盤専門店は喜んで売るわけですよ。…音がいいんだもん。もっと個人的な感想も申しますと、ヒューバート・ロウズのフルートが少し煩いんですけど、エリック・ゲイルのギターが凄い間近で弾いているような鳴りで、笑ってしまうほどの鳴りなんです。うるせーよ…みたいな。
あ、書き漏らしましたが、「スパニッシュ・ブルー」の何が面白いかって、スパニッシュ・テイストで「So What」をやっているんです。先達へのチャレンジです。マイルス人脈の一員はやはり気になるんでしょうかね。時代の音と申しましょうか、レオン・ペンダーヴィスのエレピが意外なほどスパニッシュ風味を演出しております。ベースプレイは悪くないです。
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