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続・下町音楽夜話 0292「後期高齢者」

先週末に開催した「ひたすらヴァン・ヘイレンを聴く会」に、都合が悪くて参加できなかった常連さん等と一緒に、ヴァン・ヘイレンを聴く機会が続いている。やんちゃなデイヴ・リー・ロスやいつもニコニコのエディ・ヴァン・ヘイレンを眺めていて、結局はこういったノーテンキな部分に癒されている自分にも気づかされた。男女で受け取り方が随分違うであろうことは当然としても、底抜けに明るい空気感が懐かしいような、恋しいような、もうあり得ないなといった諦めなども含め、随分複雑な気分にさせられる。

ここ30~40年ほどでやはり世の中は大きく変化した。昔のヴァン・ヘイレンやエアロスミスといった、相当やんちゃな連中のミュージック・ヴィデオの内容は、さすがに今は無理だなと思うものばかりで、LGBTsや多様性がどうのといったことを声高に叫んでいる連中に殴られそうなものが多い。昔も「しょーもねぇヤツラだな」といって笑っていたが、今は笑いごとでは済まされないから難しい。こういった流れが、どこぞの議員さんのような配慮を欠く物言いを糾すことにもなるが、同時にあらゆる場面において本音は表に出すものではないという空気感を作ってしまったようにも思える。こういうことを書くことも憚られるし、「自分は違う」と言った時点で差別なのだということも理解はしているが、息苦しさが満ちた世の中で黙っていれば無難という生き方はしたくない。

エディ・ヴァン・ヘイレンの早過ぎる訃報には随分驚かされた。昔は随分聴き親しんだアーティストが、もうこの世にいないことの悲しみがじわじわとやってきた。気になって仕方がないことに、自分が10代の頃に聴き親しんだミュージシャンは皆高齢になっているという現実がある。あまりに気になるので、ミュージシャンの誕生日の資料を作ってみた。ここ数カ月で耳にした80名ほどの誕生日をエクセルに打ち込み、並べ替えてみたところ、いろいろなことが見えてきた。結果的に現実は現実としてしっかり認識し、無駄な不安は払拭できた。

このリストの中では、存命のアーティスト最高齢はソニー・ロリンズで1930年生まれの90歳、次いでロバータ・フラックとロン・カーターが1937年生まれの83歳、ハービー・ハンコックとリンゴ・スターが1940年生まれの80歳、ボブ・ディラン、チャーリー・ワッツ、チック・コリア、ポール・サイモンといったあたりが1941年生まれで79歳ということだ。そして気になって仕方がなかったキャロル・キングとポール・マッカートニーは1942年生まれの78歳ということで、自分がその年齢になって現役感を維持できているかということを考えると、畏れ多いという感覚になってきた。

1943年組77歳はミック・ジャガー、キース・リチャーズにジョニ・ミッチェル、1944年組76歳はジミー・ペイジ、ジェフ・ベック、ロジャー・ダルトリー、ダイアナ・ロス、1945年組75歳はロッド・スチュワート、エリック・クラプトン、キース・ジャレット、ピート・タウンゼント、イアン・ギラン、ニール・ヤングらとなる。この辺は、なるほどと思うと同時に、特定の年代の人間、特に高齢の人間ばかりが亡くなっているわけでもなく、一定年齢以上に限っての話だが、老いも若きも死ぬときは死ぬものだということも感じ始めてしまった。

結局のところ、普段聴いているオールド・スクールなどと言われるロックのアーティストは皆70代ということになる。それも後期高齢者だ。いやはや、これにはまいった。自分自身が60歳になっているのだから、子供の頃に聴いた音楽をやっていた連中が後期高齢者であって当然なのだが、リストにして並べてみると、思い切り現実味が出てきて、なんだか寂しさを通り越して怖さのような感覚が出てきてしまった。

どういうことかというと、やはり自分のように音楽塗れで暮らしている人間は、音楽に随分励まされているのだ。もうここ数年ロクに聴いていなかったヴァン・ヘイレンですら、生では聴けなくなったと思った途端に、古いジャズと同じような資料の中の存在、同時代感覚を持ち得ないものになってしまうのだ。増してや10代の頃に夢中になって聴いていたアーティストは皆もっと高齢で、これから立て続けにその訃報と向き合いながら生きていかなければいけないのだ。

人生の後半にもなると、冠婚葬祭と言えば結婚式ではなく葬式のことになり、久々に聞く友人の近況はどういった病気を患っているとか亡くなったという話だけなのだ。むしろ昔の知り合いよりも、ずっとフォローし続けてきたミュージシャンの方がよほど親しみもあり、その訃報は猛烈に堪えるのだ。全くもって寂しい限りだが、これが年齢を重ねるということであり、結局のところベビーブーマーに振り回されるのはその少し下の世代、という構図がここでも現実となっているのである。

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