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清澄白河カフェのキッチンから見る風景 : 個性的な店

カフェ経営以外の活動もカフェ経営に影響することが多々あります。個人経営や小規模法人経営のはなしですけどね。結局のところ、カフェ経営はパーソナル・ブランディングそのものなのかもしれません。仕入れ・買い出しや調理・接客といった部分は、飲食店的には最大公約数的な部分で、避けては通れませんから、おそらく味の良し悪しという優劣で勝負する以外に個性はなかなか打ち出せません。まあ、メチャクチャお安いとかいった個性はウェルカムでしょうけどね。

元々は自分もそれ以外の活動がやりたくて始めたものですから、キッチンは誰かに任せたかったんですけどね。でもウチのような営業形態だと、全部ひっくるめてナンボという見方しかされませんから、結局自分自身に跳ね返ってきます。すべて自己責任の世界です。

元はローカル・カルチャーの情報発信的な側面が強かったもので、分かり難いという声は多々頂戴しておりました。コロナ禍で「時間を無駄にしたくない」という理由から強化したレコード屋部分が、世の中のレコード・ブームとも相まって、店の個性として捉えられ始めてからは、分かり易かったのでしょうね。音楽を聴かせる店として認知されたようで、結果オーライ的なところに落ち着いています。まあ、お料理の評判は元々悪くないので、なるべくしてなった営業形態なのかもしれません。

ウェブ通販がどれだけ動いているか否かなどは、飲食目的でご来店くださるお客様には関係ないですよね。でもお店が空いているように見えても、忙しそうにPCパチパチ、袋詰めをしたり、レターパック片手に駆け出して行ったり、「何なんだ、ここのオーナーは?」と思われていることでしょうよ。

一部の常連さんは事情も分かっておりますが、開店当初から毎週1〜2度通っていらっしゃるガチの常連さんに、最近「へ〜、レコード売ってるんだ」と言われましてね、…流石に酷い脱力感を覚えました。まあこちらもお客様が何屋さんかほとんど知りません。知ろうとはしません。顧客管理云々はありますが、個人情報は集積しないのがイチバンです。何かやらかしてからでは取り返しがつきませんからね。相手のことを知り過ぎずに仲良くなるというのは、昔はなかった類の努力・苦労かもしれません。…それにしても、レコードの山に囲まれて何年もの間お食事されていたのに、このレコードは何だと思っていらしたんですかね…?

レコードの売上が好調なときは、文字通り飛び道具的なものになります。飲食の売上を横からサポートしてくれますからね。そういう意味では飲食だけ、味だけで勝負するということは、実に潔いとも思いますが、反面シンドイという気もします。カフェという業態は、異業種からの参入が実に容易で、しかも本業が個性となって支持者が集まってくるとなれば、当然ながら強力です。味だけで勝負の店の隣りにこういった店ができれば、やはり厳しいだろうなと思います。売上が安定している反面、飽きられ易いとか、目的が達成されればリピートはなしという場合もありそうですが、大手が期間限定で出店するようなコンセプト・カフェなどというものはやはり強力でしょ。

ではウチはコンセプト・カフェなのか?というと、そうでもないらしいんですけどね。ウェブメディアやムックなどで紹介されるときは「ボリューミーなポーク・ジンジャーが美味しい店、本やレコード多数…」程度のはなしで、レコード・カフェ、ヴァイナル・カフェと言われることはあまりありません。どうしてなんでしょうね?全く違った切り口で、コロナ禍前は「行列ができる隠れ家カフェ」と言われておりましたけどね。…これは大通りに面したビルの2階にあるのに、入り口が脇道に入ったところにあって、わかり難いというだけのような気もしますけどねぇ。

そもそも、開店当初はラマゾッコのエスプレッソ・マシンも置いて、カプチーノやカフェラテなども提供しておりました。清澄白河はカフェの町、コーヒー好きの集まる町という部分に考えが囚われておりましたね。収益率が悪すぎて笑い話のような状態だったので手放しましたけどね。その一方でランチは激混みだったわけで、本当に思うようには行きません。

結局のところ、こういった飲食店はお客様が作るという面もあることは否めません。立派なエスプレッソ・マシンがあっても、お客様がオーダーしなければコーヒー・ショップとしては成り立ちません。カフェだと言い張っていても、ランチが美味しいからとお食事に注文が集中すれば、やはりめし屋、カフェめし屋にならざるを得ないんですよ、ホント。

そんなわけで、意図したわけでもなく9年近くも続いているカフェめし屋は、コーヒー好きの集まる町で相変わらず重宝がられております。ガッツリ町中華という気分でもなく、ヘルシーに和定食や蕎麦という気分でもなく、高級なフレンチやイタリアンでもなく、カレーやパスタやポークジンジャーやタコライスなどといったお手軽なメニューが大盛り無料で食べられると…、メンズは嬉しいでしょうよ。レディースも「量変更あり」は意外なほどいらっしゃいます(女性のオーダーをキッチンに伝えるのに「大盛り〜」と大声で言うのは憚られますからこう呼びます…)。だけど時々爆音でザ・フーとかジェネシスなんかが流れていたりするのが玉に瑕…いやいや個性でしょう、そう思いましょうよ。個性、個性。元々他人様と違う道しか選ばないヤツがやっている店ですから。嗚呼、唯我独尊。







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