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7インチ盤専門店雑記596「ハートの過渡期」

凄いですねぇ…。ビジュアル系のバンドだった時期もあるハートですが、…現在のことは置いておきましょう。元々は結構ハードロック路線のバンドだったわけで、フロントを担うのがウィルソン姉妹という女性だというだけでもじゅうぶん話題性はありました。レッド・ツェッペリンの影響を隠しもせずに前面に出してカヴァーもやったりしておりました。しかも楽器演奏もみんな上手いし、アン・ウィルソンのヴォーカルは素晴らしいですからねぇ。

イベントの準備をしていて、フツーのロックや産業ロックの補足といった切り口から、ハートは1〜2曲聴きたいなと思っております。ウィルソン姉妹はシアトル郊外で育ち、直線距離ではかなり近いカナダのバンクーバー辺りにいることも多かったようで、バンクーバーの人々は地元民扱いで語っておりました。

そんなハートの音源で自分が好きなのは、過渡期とでも申しましょうか、1980年頃のド派手になっていく直前の頃です。音が密な初期の音源とも違い、スカスカな音と間の妙味を聴かせた頃です。妙にテクニック志向になった頃とも言えます。アルバムでは「べべ・ル・ストレンジ」から「ドッグ・アンド・バタフライ」期、曲では「べべ〜」「ハートレス」「ストレイト・オン」といった辺りです。YouTubeにこの時期のライブ動画が載っておりますが、まだ髪型も服装も地味です。演奏に集中しているナンシー・ウィルソンが随分違って見えます。「ハートレス」は曲が好きで、イベントでも何度かかけております。

今回は「クック・ウィズ・ファイア」でもかけるかなと考えております。この時期のライヴのオープニング曲で、ネイティブ・カナディアンの演奏を想起させる強烈なドラムスが導入となり、いきなりノセる手法といった感じです。7インチ盤もライヴ音源です。

とにかくバンクーバーという町が音楽好きには嬉しい町です。やたらと楽器屋さんにレコ屋、そして音楽スタジオがあるんです。加えて治安がいいものですから、居心地もサイコーです。今回のイベントでは、産業ロックとフツーのロックをランダムに鳴らすコーナーの橋渡しとして、ハート〜チリワック〜ヘッドピンズ〜ニッケルバックあたりまでをローカル繋がりで鳴らしてみようかと考えております。オーディオ的にも意外にスッキリとした音質、引き締まったハードロック系のサウンドで楽しめます。

お好きな方が嫌な気分にならなければいいのですが、この連中、共通してそこはかとなく田舎者の匂いがするんです。ハートやニッケルバックに関しては賛同いただけるかどうかあやしいところですが、自分にはあのバンクーバーで散々体験してきた大らかさ、人々の優しさみたいなものが忘れられなくて、この連中の音を聴くとやはりそのことを思い出すもので、絶対に田舎っぽいところがあると思っているんです。しかもその田舎っぽさが、カントリー系の方向に向かわず、ハードロック方面に突き出ているところが妙に愛おしいんです。

ニッケルバックのバンド名の由来が、バンクーバーの商業的中心地ロブソン・ストリートのスターバックスでメンバーがバイトをしていて、おつりを渡す時に「Here is your nickel back.」と毎日繰り返していたからということですからね。ローカルを慈しむ感覚も強いように思われます。

まだ思い切り70sテイストなんだけど、ルックスは派手になり始めた時分のハート、いい音で鳴らしてみたいですね。

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