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7インチ盤専門店雑記551「チャカ・カーンのジャズ」

自分にとってチャカ・カーンはルーファスのヴォーカルです。R&Bの、それもかなりファンキーな方の人です。でもいろいろなところで、「R&Bシンガーでもジャズ寄り」と書かれております。確かにアレサ・フランクリンなどと比べればルーツが違うという気もしますが、決してジャズ・ヴォーカルの人ではありません。でもジャズ寄りと言われています。1980年代後半はマイルス・デイヴィスにフィーチャーされたりしましたしね。フォープレイのヴォーカルとしても、めちゃくちゃ印象的で素晴らしい声を披露していますから、否定はしませんけどね。

個人的にはもう「テル・ミー・サムシング・グッド」以来のファンですから、チャカ・カーンはチャカ・カーンなんです。ジャズっぽいかどうかで評価は分かれません。でも一枚だけ、どうも違うなというものもあります。レニー・ホワイト主導のセッションだったようですが「Echoes Of An Era」という1982年のアルバムです。フレディ・ハバード、ジョー・ヘンダーソン、チック・コリア、スタンリー・クラークという、リターン・トゥ・フォーエヴァーかいなという豪華なメンツですが、どうも印象が薄いです。…「All Of Me」とか、好きな曲をやってくれているんですけどね。続編的アルバムもあるようですが買いませんでした。

ところが同年11月にもう一枚アルバムをリリースします。これがヘッダー写真の「Chaka Khan」です。邦題が「ビバップを歌う女」と言います。…ないな~という邦題ですが、このアルバム「Be Bop Medley」というものが収録されております。これがねぇ、いいんですよ。「Hot House」「East Of Suez (Come On Sailor)」「Epistrophy (I Wanna Play)」「Yardbird Suite」「Con Alma」「Giant Steps」ですぜ。モンクもあれば、パーカー&ガレスピーもあり、しまいにはコルトレーンの「ジャイアント・ステップス」ですよ。何なんですかね、この選曲。いかんでしょ、これ。悪趣味を見透かされたかのように、私の好きな曲が並んでおりましてね。…ほんと2〜3倍の長さでやって欲しかったですね。

チャカ・カーンってご存知でしょうが、人気あるんですよ。何というか、チャート・アクションが意外なほどいい人なんです。1978年のファースト・ソロ「Chaka」はビルボードのアルバム・チャートで12位までいきまして、1981年の大名盤「What Cha' Gonna Do For Me」は17位までいっておりますからね。それがこの「Echoes Of An Era」は105位どまり、ワン・ハンドレッドに入れなかったんですよ、あのメンツで。そこで捲土重来なのか、もう一枚ジャズでやってきたのが「Chaka Khan」なわけですよ。これが52位。…何とも微妙な位置につけたわけです。マンハッタン・トランスファーでも意識したかのようなテイストが、振り切れていないようにも感じられるアルバムですが、前作よりは格段に好きです。

次作、1984年のこれまた大名盤「I Feel For You」は14位、久々の大ヒットになりました。ここでかなり早い段階でのHip Hopの大ヒットを放つわけですよ。スクラッチとか出てきたばかりの頃ですからね。これはこれで大好きな盤でしたし、チャカ・カーンらしく明るくて、私でも踊りたくなるような(踊りませんけど)タイトル・チューンは大好きでした。

でもこの大ヒットの前段階にジャズ方向の模索をしたアルバムがあって、その結果なんだということを考えると、また面白いわけで…。個人的には「Be Bop Medley」の方向性で押して欲しかったようなところもありまして、もどかしさもあるんですけど、そこはまあ個人的に好きなチューンということで密かに愛聴しておればよろしいのではといったところです。イベントではトークの中で「Tell Me Something Good」と「I Feel For You」を2分ずつかけてから「Be Bop Medley」をちょいがけ、「I'm Every Woman」をフルレングスでかけるか…などと目論んでおります。…やっぱり時間が足りない気がしますね。

問題発言の多い人のようですが、許しちゃうなぁ…。

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