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活力をくれる宝石箱みたいな本ー町田そのこ著 夜空に泳ぐチョコレートグラミーを読んで

2023年11月に宮崎へ出かけた際、延岡駅構内で町田そのこさんの書籍が目に入り購入した。後半に入るまで主人公になかなか光が見えず、読みながら何度か涙を流した。それでも関わる人々に温かさがあり、主人公も忘れられない過去を想い、その温かさを今度は別の人に与える様子を追っていたら、帰りの移動中に読み終えていた記憶がある。

物語の仕掛けや心情の表現が綺麗で、キラキラしたものを手で掬っている感覚になる、町田そのこさんの書籍をまた読みたいなと思い、2024年4月に購入したのが『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』。

どんな場所でも生きると決めた人々の強さをしなやかに描き出す5編の連作短編集。全編で300P程度と読み切りやすい文庫。どの短編も読んでいて得られる感情がある、いい短編だけど、その中で気に入っているのは、『波間に浮かぶイエロー』。こんなに一人のことを想って行動・決断できる人がいること、また短編の仕掛けに驚いた。

あなたがわたしのことを一生想うんなら、わたしも一生覚えています。この世のどこかにわたしのことを好きなひとがいて、わたしのことをいまこの瞬間も想ってくれているんだなあって。雨降りの朝とか、最悪な一日の終わり、自分が嫌になっちゃった瞬間なんかには思い出します。わたしのことを好きな男は何してるんだろうって。だから俺は、彼女が生きてる限り、生きていられる。

最近、自分が今まで健康に毎日を過ごせていることは当たり前ではない、奇跡だと思うことがあり、ふと明日急に生活が一変するようなことが起きた時に、妥協した生活・仕事をしていないか、周りの人を大切にできているか、誰かの心に残るようなことをできているか、自分を大切にできているか、今のまま後悔しないかと、毎日考えながら生きたいと思う。意識してないと、流して生きちゃう、今の状態での時間が無限だと思って生きちゃうからね。
そんな観点からも、大切な人に大きな影響を与えた、この登場人物に、心を持っていかれた。

この小説を読んで、また自分なりにしなやかに生きようと、活力を得た気がする。

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