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カナダの田舎でブチ切れハイキング
カナダのニューブランズウィック州という場所で、農園に滞在していたときのこと。
(農業生活のはじまりはこちら)
農家に住み込み始めて数日後。
ジェシーがこんな事を言いだした。
今日は仕事はしない。ハイキングに行こう!
昨日摘んだラズベリー入れて焼いたクッキー持って行って、着いたらみんなで食べよう!
うわ〜なんて素敵な響き!って思った。
海外のハイキングってどんな感じなんやろう。
ワクワクしながらジェシーとカイと共に出発。
普段、裸足がデフォルトのカイ。
彼はこの日のハイキングにも靴を持って行かなかった。
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割としっかりした山道が続く。
でも自然いっぱいで気持ちよくて、2人と一緒にひたすら歩く。
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序盤は楽しかった。
序盤だけは、純粋に、楽しかった。
歩き出して数十分しか経っていない時。
ショートカットとか言い出して、ほんまにこれで合ってるのかという道を進み始める2人。
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そしてここでも安定の裸足。
もうハイキングというか、岩登り。
だんだん不安になってくる。
これで合ってるん?って聞いたら、合ってるの一点張り。ついて行くしかない。
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川に到着。ちょっと休憩。
ここからものすごく雲行きが怪しくなる。
なあほんまに道合ってる?とすでに12回目くらいの確認をしてみる。
するとジェシーに、携帯も忘れたし地図もないからフィーリングで進んでいるという衝撃告白をされる。
私の携帯はこのど田舎では電波が対応していないため使えない。
カイはそもそも携帯を持っていない。
周りに人は誰1人としていない。
こんなわけのわからん山の中で、わけのわからん男たちとの遭難コースが見えてきて絶望する。
絶対ちゃんと帰れるって約束して?!?!と言うと、彼は笑って
Maybe
と答えた。
あのな、この世の中、極限状態でMaybeって言うてかっこいいのは、ドラマのプライドの木村拓哉だけやねん。
この状況でのMaybeはほんまにおもんない。
こんなにイライラしている中、またショートカットと言いながら川をじゃぶじゃぶ渡り始める男たち。
ハイキングコースで、川横切りましょうとか聞いたことないねんけど。
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もうついて行かない!って座り込みたかったけど、ここで置いて行かれたらシンプル遭難。
文句を垂れ流し続けながら川を渡る。
渡り切ったら、イェーイ!みたいなノリで笑っている男2人。
なんなん、ほんまに。
私が呆れ果てている中、でかいカエルを捕まえて、嬉しそうにカメラで写真を撮ってるジェシー。
そのカエルを食べるフリみたいなポーズをノリノリでしてるカイ。
携帯も地図もないのに、一眼レフは持ってきてることにもめちゃくちゃ腹が立ってくる。
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こんな高画質の水の写真いらんねん。
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這いつくばって写真撮ってる場合ちゃうねん。
電気の通ってない、隣人がロバの小屋がこの時は心の底から恋しかった。私をあの場所へ帰してくれ。
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最初にも載せたけど、歩き始めの距離感はこんな感じだった。
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それが、こうなる。
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もうこの時の私は、日本語で文句をぶちまけ続けていた。通じないのをいいことに、たぶん半分くらいはただの悪口やったと思う。
こんな状態でもカイは裸足でずんずん進む。
ジェシーはお酒を片手に歌を歌い、たまにボイスパーカッションをしながら上機嫌。
この3人の中で唯一のカナダの住民で今回のハイキング(ただの修行)の言い出しっぺやのに、携帯も地図も忘れて高画質カメラと酒は持ってきてる。
なんでそんなボイスパーカッション上手いねん。
果てしない岩登りと、崖下りと、川渡りのせいで疲れもピーク。全部に腹がたってくる。
そんな中、道と言えないような道でジェシーが転けた。
腕から血出てる。岩にアートみたいに血ついてる。
普段の私なら大丈夫?!って心配できる。絶対に。たとえ嫌いな人に対してでも。
でもこの時の私は、うわ、あほや。と最初に思ってしまうほど性格激悪女と化していた。
私が悪いんじゃない。このハイキングが悪い。
さすがにぶっ倒れてたりしたら心配するけど、めっちゃ喋ってるし。大丈夫やろ。
めちゃくちゃ生きてるし。笑ってるし。なんで血出してわろてんねん。
幸い怪我も大したことなく、そのままひたすら進む。
転けた直後からも彼は、片手にお酒を持って上機嫌にレッチリを歌っていた。
もうレッチリもきらい!!!
と、私はまだ止まらない文句を言いながらついて行く。
ひたすら歩き続けること5〜6時間、ようやく看板が現れた。道筋や地図が書いてある。
普通のハイキングならこういう目印が要所要所にあるはず。
今まで1回も見てないって、ほんまにずっとどこ歩いててん。
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裸足男と流血カメラ男と共に山の中から抜け出せないという恐怖からようやく解放されたところで、手作りのクッキーとお菓子で休憩。
そこからゴールまで、また2時間くらい歩いたと思う。
こんな疲労困憊の中さらに2時間歩く状況、きっと普段なら「はあ?」って思うけど、
遭難withヤバ男×2 の危機とようさくサヨナラできた私は、地図があり進むべき道が分かるということにとてつもない幸せを感じていたので余裕で歩くことができた。
ゴール地点に着いた時、農夫の父母(農夫はまだ依然としてバケーションで不在)が、連絡もつかず帰ってこない私たちを心配して車で迎えに来てくれていた。神様である。
きっとあの老夫婦、1、2時間は待ってくれてたと思う。
私たちのハイキングは、8時間かかっていた。
私は道中の半分くらいはブチ切れていた。
2人はずっと楽しそうだった。
気持ちの余裕の違いなんかな、とも思う。
でも私は、あんなところで絶対死にたくない。
得体の知れない場所へ、フィーリングでハイキングには2度と行かないと誓った。
(そんなシチュエーションはおそらくない。)
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帰りの車の中で、
なあ、足の裏見せて
ってカイに言ってみた。
絶対道じゃないところもいっぱい歩いた8時間。
川も渡った。岩も登った。そしてずっと裸足。
彼の足の裏はまったくの無傷だった。
もうあの人は、象や。
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