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今の弱みこそが、将来の最大の強み

 会社の中国語教師として働いていた頃。
 試験間近の復習授業で、同じ問題を何度質問しても間違える生徒がいた。

 他の生徒はスラスラ答えられている。
 中で彼一人だけ、どうしても覚えられず、しょんぼりとした顔で座っていた。

 

 「〇〇さん」
 彼の名前を呼ぶ。
 質問をした後、彼がおどおどと答え始める。
 正解に近い答えだった。あともう一歩!

 

 惜しい!

 

 また間違えたのを知り、更に暗い顔になる彼。

 

 「次は…」
 教室を見渡す。
 「では、〇〇さん」
 再度彼の名前を呼ぶ。
 「この問題の答えは?」
 びっくりして顔を上げた彼に、もう一度同じ質問をした。

 

 今回は、正解だった。

 

 さすがに連続にあてられて間違えることはないだろう。
 けど、今回の正解は心に残る正解だ。

 

 「ほら!出来ました!!!」
 ちょっと大げさぐらいに褒めた。そして、教室全体に向かい、
 「今は試験ではなく、試験の復習時間です。


だから間違っても良いですよ、
むしろどんどん間違って下さい」


と言った。

 

 

「ただ正解したことしかない問題は、
実はあまり印象に残りません。

 

こうしてたくさん間違ったことのある問題だからこそ、
脳にやきつけられ、自分のものとなります。

 

そして、その問題は、絶対に試験では間違いません。」

 


 「〇〇さん」
 「はい!」
 「ではもう一度、この問題の答えは?」
 「△△です!!!」

 

 正解だ!

 

 いつの間にか、声も自信に満ち溢れていた。

 


 教室で教えたことは、私の実体験から来る。

 

 韓国語を勉強して5年目。
 ようやく中級に入れたが、レベルが上がるにつれて、内容がどんどん複雑になった。

 

 文法もそうだが、特に単語を覚えるのが大変だ。
 動詞、形容詞や副詞の中には、語呂合わせも出来ない、訳の分からない形の単語がたくさんある。
 とても難しい。

 

 繰り返し繰り返し覚えても、同じ単語でつまずく。
 まるで脳に入らないのだ。

 

 それで泣きそうになったことが何度もあったが、検定試験合格の為、諦める訳にはいかない。
 間違ったら、もう一度書く、もう一度読む。
 暇があれば見返し、とにかく復習する。
 覚えられるまで、自分のものとなるまで、これを繰り返す。

 

 それをやり続けて一週間になって、ようやく覚えられた単語もあった。
 我ながらなんという記憶力だと悲嘆せずにはいられなかったが、不思議とこういった単語ほど、本番で間違えることは無かった。

 

 でも、それもそうだ。
 泣きそうになりながら覚えた単語。
 忘れる訳なんてない。


 韓国人の前で話す時もそうだ。
 笑われた発音ほど、次は絶対に間違えない。

 

 恥ずかしさと悔しさと、成功した瞬間の飛び上がるような嬉しさが、その知識を頭だけでなく、心にまで深く埋め付けてくれる。

 


 何度も間違った問題ほど、確実に正答を出せる。
 今の弱みこそが、将来の最大の強みになれるのかもしれない。

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