ゆっぺ

どこかで生きているあなたへ。 これからも出会うことがないだろうあなたへ。 ありふれた人…

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どこかで生きているあなたへ。 これからも出会うことがないだろうあなたへ。 ありふれた人間の日常を言葉に乗せて。

最近の記事

電車に乗って。

 電車に揺られていると、色んな人がいることに気づく。  大口を開けて寝ている人。  文庫本を片手で読んでいる人。  吊り革広告を眺める人。  大半がスマホを見ている人だ。  今文章を打ち込んでいる私も大半の中に含まれている。  車窓から見える街に目を向ける。  街灯や住宅の灯りが左から右に流れていく。  これからも出会うことのない人たちがその中に何人もいることに気付かされる。  みんな元気にしているのだろうか。  元気ならそれでいい。  顔も知らないあなたに思いを

    • 「ブルー」な気持ち。

       これから僕たちどうなっていくのだろう。  今どうでもいいこと考えてたでしょ。  なんて言葉は返ってこない。  一緒に家を出た君は徒歩の僕の背中を自転車で追い越していく。ふわっと香った僕の知らないヘアオイルが少しだけ胸を苦しくさせる。  今日も関東は炎天下。  ただ外にいるだけで汗が吹き出してくる。  時々吹く風が頬をかすめ心地良い。  ふと、空を見上げる。  今日は雲一つない青空だった。  自分の気持ちを比喩するには清々しすぎるくらいの「あお」  自分の内にある

      • 散文。

         思ったことが空に溶けていく。  綴ろうと思っても、この手をすり抜ける。  自分の思想も一瞬でその時を生きていた。  誰も語らないから。  いや、語られてもなお自分の言葉で表現したいから。  その言葉が自分の背中を摩ってくれるから。  誰に見せるでもなく、誰に何を言われるでもない。  無音がうるさいこの深夜に、親指は雄弁になった。  お酒は得意ではない、自分の散文に酔っていたい。

        • 記念日。

          ここ2、3日一気に気温が下がった。 半袖で過ごしていたはずの1週間前が懐かしく思えるほどに、外はすっかり秋の顔をしていた。 だが、この秋冬の外の香りが好きだ。 どこか寂しく、そして切ない。 冬から春になる卒業シーズンのあの香りとも違っていて、人肌が恋しくなる寂しさ。 そんな季節に僕とあなたは結ばれた。 寂しさを誤魔化すために。 切なさを紛らわすために。 決してそんなことだけではないけど、少しはこの切なさに身を任せていたのかもしれない。 かれこれ6年の月日が経った。

        電車に乗って。

          人知れず。

           名所に咲く季節の花よりも。  いいねが多いInstagramの投稿よりも。  ミリオンセラーの流行りの音楽よりも。  あの詩人の有名な一文よりも。  みんながいいっていったどんなものよりも。  人知れず咲く一輪の花に心奪われる時がある。  いや、僕がもう見つけてしまった。 「人知れず」  なんて言葉はもう君には似合わない。

          人知れず。

          『ブルーマリッジ』を読んで。

          過去に犯した罪。 「覚えていない」加害者の言い分。 これまでを思い出す、心に繋がる足枷。 「ごめんなさい」なんて今更。 一生癒えることのない傷なのに。 でも言わないよりはって、エゴ。 そんな自分がまた嫌いになる。 明日は優しくなれるかな。 誰かに優しくなれたら、過去も綺麗になるのかな。 浅はか。 例えば、無自覚の傷を負わせてしまったパートナーは、こんな自分をどう思っているんだろう。 明るく気丈に振る舞ってくれるあなたは、どうしてこんな自分と一緒にいてくれ

          『ブルーマリッジ』を読んで。

          これからも出会うことがないあなたへ。

           こんばんは。  本日、8月12日。ちょうど2年前に私は初めて心療内科を受診し、「適応障害」の診断を受けました。  2年前の今日はどん底を這うように生きていました。  どうして自分は普通に仕事ができないんだろう。他の同期はいいな。今日はどうやって仕事休もうかな。何もやる気がしないな。生きててもしょうがない。死にたい—。  そんなようなことを毎日思いながら辛うじて呼吸をしている状態でした。 そして、ついに心身共に限界を迎え、受診する運びとなったのです。  あの頃は本当

          これからも出会うことがないあなたへ。

          あなたへ。

          こんばんは。 今日はあなたに手紙を贈ります。 今から6年前の今日、あなたと初デートに行ったのを覚えていますか? 場所は控えますが、花火大会に行きましたね。 すごい緊張しながらデートのお誘いをしたことを今でも鮮明に覚えています。 そんな気持ちとは裏腹にあなたは快く受け入れてくれるのでした。 その日、夜空に咲いた花は儚く、美しかった。 それを見つめるあなたの横顔は七色に輝いていた。 何を想いながらそれを見ているのだろうと考えながら、美しいあなたに見惚れていました。 あの日見

          あなたへ。

          これからも出会うことがないあなたへ。

          お元気ですか? ふとあなたに手紙が送りたくなったので、筆を取りました。 暑い日が続きますね。 体調は崩さずに過ごしているのでしょうか。 自分らしい日々が送れていますか? いつかの夏の青い日々は遠い存在になったような気がして少し寂しい気持ちになります。 夕暮れになるとその気持ちにヒグラシの声が寄り添ってくれるかのようにも聞こえるのです。 そんな日々を送ったわけではないのだけれど、ある夏休み、山、川に囲まれた町、泥だらけになって遊んだ友人たちとの帰路を思い出させるのです。

          これからも出会うことがないあなたへ。

          七夕ですね。

          こんばんは。 今日は7月7日。七夕。 皆さんはどのようにお過ごしでしょうか? 日曜日ということもあり、お休みだった方はゆっくり休めましたか? 仕事などがあった方は大変お疲れさまでした。今夜はゆっくり休んでください。 さて、今夜は七夕ですが、生憎私の住んでいる地域は厚い雲に覆われ、織姫と彦星の再会を拝むことはできそうにありません。 皆さんの住んでいる場所からは、綺麗な天の川が見えているのでしょうか。 1年に1度のそれは、さぞ美しいことでしょう。 舞台は地上に戻りますが

          七夕ですね。

          温泉と君。

           今日は休日。一人で温泉に向かった。  温泉に入るあの瞬間、「あ~」と声が出るのはなぜなのだろう。みんなもそうなのだろうか。もはや不可抗力な気がする。  いつも不機嫌なあの人も、ちょっと苦手なあの人も、どうしようもなく日々が楽しくないと思っているあなたも、、。温泉に入った途端「あ~」と声を出してしまうと考えたら、少しだけ優しくなれる気がするし、気持ちも軽くなってしまう気がする。  今日は天気が良く、露天風呂日和。  温泉に反射する日光がキラキラ揺れている。  夕方の風が

          温泉と君。

          何もない日への気付き。

          今日は買い物のためにスーパーに行った。 一通り買い物を終え、レジに並ぶ。 列に並びながら周りを見渡す。 制服姿の高校生。老夫婦は今夜の晩御飯を買いに来ているのだろうか。 お菓子をねだる子どもの姿は昔も今も変わらないらしい。 お菓子をすんなり受け入れられた子どもは、明日遠足なのだろうか。まとまったお菓子を籠の中に入れていた。 あまり人をじろじろ見るのは良くないと思い、上を見上げた。 あれ?何かが変だ。 レジの番号は右から順に14、13、12、自分の列は何も書かれていない。

          何もない日への気付き。

          与えること。

           「与えたものしか残らない」    どこかで見聞したことのあるこの言葉を信じて、何もかも与えることにしている。  「与えること」で自分が死んだ時、それによって相手が満たされる。だから与え続けるのだ、と自分の生き方の一つとして心に留めてきた。  しかし、今日になって妙なことに気が付いた。  与えることで自分も相手も満たされ、幸せが築かれると思っていた。もちろん、見返りも期待していないつもりだ。  結局「つもり」だった。  これまでの「受け取ってきたもの」で、満たされる

          与えること。

          適応障害の頃。

           目が覚めた。  訪れた朝は静寂に包まれていた。  車や電車の音も通学する子どもたちの声も、鳥の囀る声すら聞こえなかった。  あゝ1人の世界に迷い込んだのかな。  誰もが一度は考えたことがあるのでは?  「この世に自分ひとりになったら-。」  遂にその世界が来たのかと、まだ半分夢の中にいる頭で考えていた。  そんな世界になったら、きっと人間関係の悩みなんて無くなるのに。と、そこの思考だけは寝ぼけを知らなかった。  その日の夜、気分転換に買い物に出かけた。  その帰

          適応障害の頃。

          これからも出会うことがないあなたへ。

           今日は驟雨に見舞われ、雨の音色と共に眠りにつこうかと思っていました。しかし、夕方になりそれも止み、世界がオレンジ色に染まったのです。  子どもの頃祖父の畑にあった、黄色いレンズの眼鏡越しに見た景色に類似していました。また、西の方角は夕紅に染まり、明日の天気を教えてくれているようでした。  茜色の空を見上げて、過去のことを思い出しました。  私事ですが少々お付き合いいただければ幸いです。  約2年前、新卒で就職した会社で「適応障害」となり休職しました。  適応障害と診

          これからも出会うことがないあなたへ。

          散歩。

           地元の夜を1人で歩くのは片手で足りるほどの回数しかない。  雨。  エドシーランと歩き始める。  地元の夜の静けさに発見はあった。  幼稚園の頃嗅いだ、ジャスミンのような香り。  当たり前に流れていた井戸水は諸行無常を教えてくれる。  祖母が手伝ったと言っていた旅館の埃のような香り。  雨の降り始めのペトリコールと降り続けている最中の香りは全く違うということ。地元の雨の匂いは、外から家に帰ってきた人の香りがした。思わず地元を歩く自らに「おかえり」と呟く。  香りの話しか