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温泉と君。

 今日は休日。一人で温泉に向かった。

 温泉に入るあの瞬間、「あ~」と声が出るのはなぜなのだろう。みんなもそうなのだろうか。もはや不可抗力な気がする。

 いつも不機嫌なあの人も、ちょっと苦手なあの人も、どうしようもなく日々が楽しくないと思っているあなたも、、。温泉に入った途端「あ~」と声を出してしまうと考えたら、少しだけ優しくなれる気がするし、気持ちも軽くなってしまう気がする。

 今日は天気が良く、露天風呂日和。
 温泉に反射する日光がキラキラ揺れている。
 夕方の風が温泉の香りを乗せて頬を通り過ぎていく。また、その風に乗って季節外れの落ち葉も飛んでくる。
 なんだ、君も温泉に入りたかったのか。

 やっぱり温泉の後は瓶のコーヒー牛乳に限る。
 人目が気になり、腰に片手を当ててそれを飲むことはできなかったが、待合室のソファでそれを思い浮かべながら、一気に飲む。
 火照った体に冷えたコーヒー牛乳が染み渡る。
 いつもより甘く感じられたが、きっとそれはいつも飲んでいる製造会社のものではないからだろうと後になって気付く。

 ふと、フロアの方に目を向けた。

 「おまたせ!」

 火照った顔で少し濡れた髪の毛をタオルで拭う君が歩いてくるような気がした。

 そこの温泉には一緒に行ったことはないけれど、そんな気がした。
 いや、そうあってほしいという願望の方が強かったのかもしれない。

 遠距離恋愛になって約1年半になる。

 今こうして僕が文章を綴っている時、君は何をしているんだろう。
 どんな1日を過ごしたのだろう。

 この地球のどこかに、この宇宙のどこかに君が存在してくれれば、それだけでいい。という強いマインドはあいにく持ち合わせてはいないけど、君の幸せを願う気持ちは変わらずに持っている。
 そしていつか温泉の待合室でそんなやりとりをしたいと思っている。

 温泉に行くという休日から、思いがけず少し恥ずかしい恋文みたいになってしまった。

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