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散歩。
地元の夜を1人で歩くのは片手で足りるほどの回数しかない。
雨。
エドシーランと歩き始める。
地元の夜の静けさに発見はあった。
幼稚園の頃嗅いだ、ジャスミンのような香り。
当たり前に流れていた井戸水は諸行無常を教えてくれる。
祖母が手伝ったと言っていた旅館の埃のような香り。
雨の降り始めのペトリコールと降り続けている最中の香りは全く違うということ。地元の雨の匂いは、外から家に帰ってきた人の香りがした。思わず地元を歩く自らに「おかえり」と呟く。
香りの話しかしていないことに気づく。
町の通りを歩いてみる。
寂しく光る街灯に応えるように、雨粒が光って寄り添って見える。
小さな頃から、昔ここには何があったのだろうという建物がよくあった。シャッターが降りている建物。
今では「売物件」の貼り紙。
2度としてそこにあったものは戻って来ないのだろう。
小さな頃から今に至るまで触れ合うことはなかったが、何か切なさを感じる。
さらに、小学生の頃友人と秘密基地を作った河川敷は安全面を考慮して堤防が作られ、跡形もなかった。
それだけではない。
家近くの橋、昔友人と慈善活動と自発的にゴミ拾いをした用水路、公園の公衆トイレ、通学路にあった会社、etc...
何もかもが変わっていった。
でも、香りも思い出も、記憶の中にはしっかりと残っている。これを共にした友人に話し、彼らがそれを覚えていなかったとしてもいい。それでいい。僕の記憶の中では輝いているから大丈夫。
傘にぶつかる雨の音。前職の残業帰りの夜道を思い出した。あの時は「もっとこの感情を掻き消すくらい降ってくれ。もっと。」と思っていた。今回は違った。寧ろ穏やかだった。
そろそろ帰るか。
大学の時のバイトの帰り道を思い出す。
夜風が頬を撫でる。心地良い。
何か自由を感じていた。
大学で出会ったあいみょんと一緒に帰った。
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