見出し画像

新世紀マーべラスnovel episode1(46)

「安心しろ、殺しはしない。だが、捕えさせてもらうぞ」
「……調子に、乗るな……っ」
膝をつき、それでもなおアマレスの目は殺気に満ちている。
そんな彼のもとに、彼と同じ外套に身を包んだ者が、まるでアマレスの影から生えるように現れた。
「貴様、どこから――」
新たな襲撃者のこともなげに振った剣によって、突きつけたレイのそれが宙を舞う。
「な……っ」
剣がレイの遥か後方に突き刺さった。紅く染まった刀身から血が地面へと染みて白銀へと戻っていく。
抵抗の手段をなくした彼女に何をするでもなく、襲撃者はアマレスに向き直る。
「何しに来やがったアメ――……」
指を口元で立てて静かにしろ、というジェスチャー。
そして何事かを耳元で囁くと、忌々しげにアマレスは三人を指さした。
「いいか、油断して一撃もらったが俺ぁ本気じゃなかった! 勝ったなんて思うなよ!」
「ださ」
戦闘の終わりを知って、醒めたメアリーが呟く。
唇を噛みしめて地面に溶けるように消えていくアマレス。
そしてもう一人は、ふとレイの方を見た。
「――研鑽を怠るな」
「――っ!」
レイが目を見開く。
そしてレイが口を開く前にその者もまた地面へと溶けていった。
「レイ君、今のは?」
「――……まさかな。いや何でもない。それよりもエマは平気か?」
しばし考え込んでいたようだが、すぐにレイは顔を上げた。
「大丈夫なのです」
エマのこめかみを脂汗が流れる。内臓にまでは達していないとはいえ、腹の傷は相応に深い。
「エマは下がっていい。メアリー、教導長の確保を頼めるか? 私はレジスタンスの加勢に向かう」
レイの指示に否を唱えたのはエマだった。
「待ってください、教導長の確保はエマが行くのです。二人はレジスタンスの人たちの加勢をお願いするのです」
「……エマ、だが傷が……」
レイが気遣わしげに血の滲むそこへと視線を向ける。
「このくらいなら、大丈夫、なのです。それより、アイナちゃんが心配なのです。行かせてください……」
「だってさ。どうすんの、ボクはもうどっちでもいいけど」
戦闘が不完全燃焼に終わって投げやりなメアリーの問い、しばし考えたのちレイは頷いた。
「……わかった。その代わり桜夜も向かっているようだから合流してから向かうこと。頼んだぞ」
「任せてくださいっ」
精一杯の笑みを浮かべてエマはアイナの後を追う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?