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新世紀マーベラスnovel episode1(39)

「がああぁぁぁ――っ」
血を浴びた子どもたちが悲鳴を上げてレジスタンスのもとへと駆ける。
手の甲から伸びる刃を教導長に突きつける灰銀の髪の少女。
その姿に、エマは見覚えがあった。
「アイナちゃん!」
アイナは恐ろしく冷たい目を、腕を押さえてうずくまる教導長に向ける。
「目標、楽園教導長マルク。機は熟しました。あなたを殺します」
「ひ、ひいぃぃい!」
首を寸断せんとする刃を止めたのはレイだった。細身の剣でアイナのそれを受け止める。
「桜夜、ルカ、みんなを!」
レイの指示に二人が頷く。
「皆さん、子どもたちを連れて逃げてください!」
「クー・ド・レイ。邪魔しないで」
鍔迫り合いをしながらレイとアイナが言葉を交わす。
「私たちを知っているのか」
「ええ。LSP、よりよい世界を目指すことを掲げ、多世界に干渉する偽善者集団」
冷徹な物言いに、レイは鼻で笑う。
「ふん。私たちが偽善者ならおまえは何なんだ?」
「私たちは真の正義を成す者。あなたたちのように犠牲を恐れたりはしない」
アイナが交差させていた刃を振り切り、さらなる斬撃を繰り出す。
「犠牲を肯定する正義など……! メアリー、教導長を連れていけ!」
 切り結びながらの命令にメアリーが駆ける。
「させない!」
アイナがレイの剣をいなし、それを妨害しようとする。
「爆ぜろ――バースト!」
エマがアイナの足元を杖で差し、魔法を起動。小規模の爆発により弾丸と化した石礫がアイナを襲う。
「くっ――」
一瞬足を止めた隙にレイが肩から体当たりを食らわせる。吸血鬼の膂力で吹き飛ばされたアイナが壁に叩きつけられる。
その間にメアリーが教導長のもとへ駆け――
「ったく、見てらんねえなぁ」
何者かが座り込んでいる教導長の背後に立っていた。

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