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新世紀マーベラスnovel episode1(43)

ならば、私たちと目的は同じ――」
「いいや、違うね」
男が首を振る。
「てめえらはあのおっさんを殺さずに捕えようとしてんだろ。そのやり口はあめぇ。悪人は殺されるまで止まらねえよ。生かせば必ず次の犠牲者が出る。何度でも繰り返す。何度でもだ」
「思想が過激過ぎる。どんな者にだって更生の機会はあるべきだろう!」
「……で、また被害者が出てから考えるってか?」
静かな指摘にレイは眉を上げた。
「……なに?」
「そうなった時、てめえらは被害に遭った奴らになんて言う気だ?」
「実際にそうなるとは限らないだろう! あの男が更生する可能性だってある」
「ああ、確かにわからねえな。だが今殺しておけば確実に被害者は出ねえ。だろ?」
先刻までの嘲りではなく、あくまで冷静な指摘。
対してレイは妙に焦っているようだった。
「この街は、彼らはようやく前を向けそうなんだ。その再スタートを不必要な血で汚そうと言うのなら私たちは貴様を許すわけにはいかない!」
「ハッ! なんだ、答えは出てんじゃねえか」
「何を――!」
「不必要な血で汚すのは許さねえ。……なら必要な血なら仕方ねえってことだろ? 俺の言ってることとてめえの言うそれ、何が違うんだよ?」
「――っ。それは……」
ただの言葉の綾だと、揚げ足取りだと踏み倒せば済むような男の言葉に、しかしレイは激しく動揺しているようだった。
彼女の芯にあるもの、それが揺らいでいる。
「レイちゃん。騙されちゃ、だめなのです――!」
それを感じ取ったエマがアマレスに向けて叫ぶ。
「あなたは、勘違いしているのです。よくない想像ばっかりして、わかってないのです……!」


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