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新世紀マーベラスnovel episode1(40)

黒い外套にフードを被ったその者の手には両手剣が握られていて、首を刎ねんと振りかぶられている。
メアリーが目を見開く。
「エマ君!」
「はいなのです!」
メアリーの指示にエマは手のひらを教導長に向けた。
そしてまるで彼につながれた綱を引き寄せるように拳を握って自身の方へと引き寄せる。
無詠唱で使用できる念動魔法だ。
「むぉっ」
結果、教導長は何かに引かれるように前のめりに倒れ、その頭上を刃が掠った。
「チッ」
舌打ちをする襲撃者を逃すまいとメアリーがナイフで追撃を仕掛けるが、それを難なくさばいて襲撃者は距離を取る。
「君、誰?」
メアリーの問いにフードを脱いで襲撃者は舌を出した。金髪を刈り上げた男は鋭い目を嘲るように細めた。
「偽善者どもに語る名はねえなぁ」
先刻レイが教導長に放ったセリフの意趣返しのつもりか。挑発するような物言いに、レイが眉を上げる。
よろけながら身を起こしたアイナが襲撃者を視界に入れた。
「アマレス様……」
「おいおい、さっそくバラしてんじゃねえよガラクタ」
「――っ、申し訳ございません」
「てめえが手間取ってっから手伝ってやるってんだぞ。わかってんのかよ」
「……はい。申し訳、ございません」
「チッ、まあいい。それよりどうすんだ。あのおっさん逃げちまうぞ」
アマレスが両手剣の切っ先で示した先、教導長が扉の方へ逃げ出している。
「――! すぐに始末します」
アイナは目を見開き、駆け出した。

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