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新世紀マーベラスnovel episode1(42)

エマは異世界人であり、当然彼女の使用する魔法はこの世界において未知の技術のはずだ。だがこの男はエマのクレイランスを発動する前に読んでいた。つまり――
思考を読んだようにエマを見て笑みを深める。
「余所見してる場合?」
メアリーが両手のナイフで突きを放つ。別方向からの二撃を、アマレスは両手剣を軽々と振るって弧を描き、二本のナイフを巻き込むようにして払った。
「あーわり、眼中になかったわ」
距離を取ったメアリーを冷めた目で見据える。
「……あはは、すごいじゃん」
目つきが鋭くなる。
彼女は荒く息を吐いて、仮面をつける。
「君、強いんだぁ……。じゃあちょっと本気で行こうかな」
メアリーが今までとは比べものにならない速さでアマレスへ肉薄する。
メアリーが懐から再び取り出した両手のナイフを縦横無尽に振るう。
だがアマレスはそれを避け、逸らし、いなす。
「メアリー!」
レイの声にメアリーが宙を舞う。
「おおおぉ――!」
直前までメアリーのいた空間ごとアマレスを横に薙ぐ。同時に頭上を取ったメアリーの脳天を切り裂かんとする一撃。
それを這うような姿勢で回避し、背負うように構えた両手剣の横薙ぎをレイに返す。
「くっ……」
レイがやむなく退いたのを確認すると同時に、背中側に着地したメアリーを蹴り飛ばす。
腕を交差してそれを防御。
レイが再び踏み込んで剣閃、アマレスは半身で避ける。
続けて放った二の太刀、三の太刀は両手剣の刃の上を火花散らして滑っていく。
恐るべきは取り回しの悪いはずの両手剣で軽々と扱うその贅力と、正確な力のコントロール。取り回しの悪さを弱みとしなければ、両手剣はリーチが長く、間合いに入るのは容易ではない。
「あははは、楽しいなぁ!」
レイの攻撃によって両手剣を止めている間にメアリーが頭上を跳び襲撃者の首がある位置を薙ぐ。しかし襲撃者は首を傾げる最低限の動作でそれを回避。さらに空いた手でメアリーの手を掴み投げ飛ばす。
「くっ」
メアリーが壁に叩きつけられる。両手剣の間合いを取るような横薙ぎに、レイは大きく退いて距離を取る。
「俺にかまけてる間に、あのガラクタ行っちまったぜ?」
「あの傷なら簡単には追いつけない、貴様を倒してすぐに追うさ。それよりも……貴様らは一体なんだ。目的は?」
レイの問いに、意外にも男は嘲るような笑みを潜めて真摯な様子で答えた。
「正義を成す。それ以外に何があんだよ」


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