ひまわりの家の輪舞曲
父の足が悪くなった。
自転車で趣味の写真を撮りに行った時に、無理をしてしまったらしい。
夕方に病院に行って、薬をもらってきた。数日間は絶対安静。父も、母と同じように、薬を飲む生活が始まった。
父の病院には、私が付き添った。
ゆっくりと、歩幅を合わせて歩く。ほんの数年前までは、父のほうが、うつで早く進めない私に合わせて歩いてくれていたのに。立場が逆になってしまった。
父も母も、こうして少しずつ体が動かなくなっていく。少しずつ、しかし確実に老いていく。
私は、そんな両親を支えなければならない。父と母が、うつ病の私を、懸命に、根気強く支えてくれているように。
いつまでも一緒にはいられない。父と母の時間が止まって、1人だけで歩いていかなければならない時が来る。
両親の身体が少しでも自由に動くうちに、鳥取砂丘に連れて行ってあげたい。
一緒に散歩をしたい。季節の草花を愛でて、太陽の光を浴びて、のんびり歩きたい。
母に料理を教わって、父と思い出話をしたい。
早く働けるようになって、金銭面で困らないようにしたい。急な病気、事故にも対応できるようにしたい。
家で介護ができなくなったとき、少しでも良い施設に入れてあげたい。
できるだけ苦しむことなく、逝かせてあげたい。
早く、早く、早く。病気を治さなければ。うつ病を治さなければ。何もできないまま、父と母の命の終わりが近づいてくる。
日が落ちた暗い道。両親に残された時間を考えながら、ゆっくりと、父と共に自宅へ歩を進めた。
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