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金龍曼荼羅

作品名:こんりゅうまん
制作年:2021

 金色の文字によってつむがれた龍のまん。上層界曼荼羅とも。文字はもっとも身近で親しみ深い龍の姿であり、金色のこうさいによってそのれいげんようようと映し出されている。曼荼羅は密教の仏やさつなどがしゅうする様子をぞうしたもので、悟りの境地を図式化したものだと伝えられる。

 この金龍曼荼羅は一枚の紙面上に描かれたものではなく、ひとはしらひとはしらの龍が必要な時に必要な場所で必要なだけとどまった様子をうつしたことで浮かび上がったしんぞうであり、龍のむ世界とされる上層現実界がカメラのレンズを通して結像した瞬間でもある。龍はこうした必然性の中に宿る存在であり、そこではすべての事柄がかなったかたちで進み、それゆえあやまちもあやまりも一切存在しないのだという。この曼荼羅もその必然性によって産まれたものであり、また必然性そのものでもある。

 古来いにしえより龍と九とは関係が深く、たとえばさんていきゅうせつりゅうせいきゅう伝説、日本でも各地にりゅうにまつわる伝承が残っている。またうろこの数も八十一枚(81=9×9)と、龍はどこまでも九にいろどられている。
 源龍図には『九龍』なる画があったことが確認されているが、未詳。この曼荼羅はおそらくその流れをむものであろう。中段左右が鱗を、中央を挟んだ上下が宿した九子の魂を、残る五龍は宇宙を構成する地・水・風・火・空の五大元素を表していると解される。


委ねる芸術家


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