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吾輩は猫である(1975)

吾輩は猫である(1975、芸苑社、116分)
●原作:夏目漱石
●監督:市川崑
●出演:仲代達矢、波乃久里子、島田陽子、篠ヒロコ、岡田茉莉子、伊丹十三、岡本信人、篠田三郎、前田武彦、神山繁、岡田英次、緑魔子、春川ますみ、樋浦勉、西本裕行、蟹江敬三、辻萬長、小倉一郎、左とん平、三波伸介


DVDのジャケットは市川崑監督独特の「カギ文字クレジット」になっているが、実際の映像内は普通のテロップ。

元々の原作が一貫したストーリーなどなく、猫の目から見た珍野家の人々の様子を批評的にスケッチしたものなのでそういう意味ではかなり原作を忠実に映像化している印象。

ただし猫は語り手にはなっておらず、ただただ日常風景を描写していきその中の一つとして猫もいる、という扱いになっている(エンディングだけは猫によるナレーションが付け加えられているが)。

冒頭で苦沙弥先生(仲代達矢)と迷亭(伊丹十三)が会話しているところ、互いの台詞がぶつかって聞き取れない瞬間がある。

実世界では誰かが誰かの台詞を言い終わるのを待ってから順番に話をしていくということはほぼない。

他にもこういった場面が何度かあり、リアリティを重視してこのような演出になったのだろう。

泥棒のシーンではジャンプカットが使われていたりと独特のテンポ感が面白い。

登場人物に関しては仲代達矢の苦沙弥先生は神経質で癇癪持ちな感じが割とマッチしているし、迷亭のめんどくさそうな感じもいい。

寒月(岡本信人)はあんなぬぼーっとした感じだっただろうか?もう少し理知的な印象があったが…

原作ではあまり印象のなかった苦沙弥先生の姪・雪江の場面が多いのは、商業映画ということを考えてあまりにも女っけがなさすぎても困るので登場を増やしたのだろう。

夏目漱石『吾輩は猫である』の映像版、という意義は十分に果たしているし普通に面白かった。

が、それも全て原作を読んでいたからこそであって、未読の状態で観たら…どうなんでしょう?

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