子育てエッセイ : 幼稚園の父親参観日で生クリームを作った思い出

長女が幼稚園に入園して初めての父親参観日の日が来た。持ち物のなかにエプロンと書かれていた。
そして、新しくエプロンを買う必要はありません、
奥様のエプロンを借りて来てください、と書いてあったので、僕は奥さんのエプロンを借りて出席した

駐車場に着くと既に半数以上の人が来ていて、みんな子どもと手を繋ぎ幼稚園の入口に向かって歩いていた。僕も長女と手を繋ぎ幼稚園の入口に向かった

幼稚園の入口には保母さんたちが待っていて、
駿太くん、おはよう。里帆ちゃん、おはよう。
と園児たちに声をかけていた。
僕が入口に行くと、ユリカちゃん、おはよう、
と保母さんが長女に声をかけてくれた。

それぞれの教室に入り参観日の開始時間となった。
保母さん
「お父さん方、本日はお忙しいなか父親参観日に出席して頂きありがとうございます。私はひまわり組の担任の秋山美由紀と言います。お子様たちからは美由紀先生と呼ばれています。子どもたちは今日の父親参観日を楽しみにしていて、1週間前からお歌の練習やお父さん方へのプレゼントを作ったりして来ました。どうかお子様たちと楽しい時間を過ごしてください。それでは父親参観日を始めます。」

最初に美由紀先生のキーボードに合わせて、子どもたちが3曲歌を歌ってくれた。
そして、次に歌いながら踊ってくれた。
美由紀先生
「お父さん方にもお子様と一緒に歌いながら踊って頂きます。今、お子様たちが踊った曲です。では、1組ずつ、踊って頂きます。」

どのお父さんも子どもと一緒に恥ずかしそうに歌いながら踊っていた。僕の前の組のお父さんが踊っていると、
美由紀先生
「お父さん、恥ずかしがらずにちゃんと踊ってください。では、最初からもう一度。」
 
ちゃんと踊らないと、やり直しさせられてしまうんだと思った。
僕の順番が来た。僕は長女と、
「き、き、きのこ、き、き、きのこ、のこのこのこのこ歩いたりしない・・・」
と歌いながら真剣に踊り、一発合格した。

全員が踊り終わると、
美由紀先生
「では、本日のメインイベントです。全員でケーキを作ります。スポンジケーキは用意してあります。
私は子どもたちとトッピングの用意をします。
お父さん方には4人1組になって頂き、生クリームを作ってもらいます。ハンドミキサーはありません泡立て器で作って頂きます。お父さん方、エプロンを持って来ましたね。用意をお願いします。」

教室の後ろにテーブルがいくつもあり、その上に
名前クリームを作る道具が置かれていた。みんな
エプロンをつけた。
美由紀先生
「お父さん方、私の期待通りの花柄等のエプロンを持って来てくださいましたね。似合っていすよ。
ユリカちゃんのお父さん、チューリップ柄のエプロン、かわいいですよ。」
みんな僕を見てクスクス笑っていた。
「それではお父さん方、生クリームを作ってください。お願いします。」

僕は他のお父さん3人とまずボールに水を入れ氷も入れ、そこに金属製の容器を浮かべた。
美由紀先生が来て、そこに生クリームのもとを入れてくれた。
まず最初に僕が金属製の容器に入った生クリームのもとをチャチャチャチャチャと泡立て器でかき混ぜた。ところが何の変化も現れなかった。
すると眼鏡をかけたスーツ姿のお固い感じのお父さんが、
「鈴原さん、疲れましたでしょ。私が変わりますよ鈴原さんは、仕事で時々海外に出張に行かれるそうですね。羨ましいです。私は市役所勤めなものですから、そういう機会は全然ありませんよ。」 
「市役所の職員なんて安定した職業でいいじゃないですか。」
「確かにそうなんですがね。これでも色々と気を使うんですよ。先月会議が長引いて休憩時間がなくなってしまったんですよ。でも、私、我慢出来なくて喫煙コーナーで煙草を吸ったんですよ。そうしたら誰かに、市役所の職員が休憩時間でもないのに煙草を吸っていた、と投書されてしまいましてね。あの時はまいりましたよ。」

市役所お父さんが少しの間生クリームを混ぜていると、気さくな人懐っこい顔をしたお父さんが、
「今度は僕がかき混ぜますよ。僕は駅前広場の横でクリーニング店を経営してます。ドライクリーニングの有賀って僕の店なんです。みんな家に帰ったら奥さんに僕の店にクリーニングを出してもらえるように頼んでもらえませんか?それにしても全然変化しませんね。これが本当に生クリームになるんですかね?」
 
少しすると、プロレスラーの様な体系をしたお父さんが、
「俺、大学の時アメフトやってました。俺に任せてください。」と言った。
アメフトお父さんは物凄い勢いでかき混ぜた。だが
何の変化も現れなかった。

また僕がかき混ぜ始めた。
市役所お父さん
「鈴原さん、とろみが出て来たんじゃないですか?」
クリーニング店お父さん
「僕にやらせてみてください。」
クリーニング店お父さんはかき混ぜながら、
「あれ、何か固まって来た感、ないですか?」
その時だった、

美由紀先生
「トッピングの準備が出来ました〜。
お父さん方〜。生クリームは出来ましたか?」
4人全員
「すみません。もう少々お待ちください。」
「急げー!」
アメフトお父さん、
「ラストは俺に任せてください!」
アメフトお父さんがまた物凄い勢いでかき混ぜた。
すると生クリームがどんどん固まって行き、泡立て器が動かなくなった。生クリームが完成した。

全員にショートケーキサイズのスポンジケーキが配られた。僕も長女と一緒に生クリームを塗り、フルーツやチョコレート等のトッピングをしてケーキを完成させた。
全員にジュースが配られ、作ったケーキを食べた。

最後に子どもたちからお父さんへのプレゼントが贈られた。僕は長女が作ったペンダントを首にかけてもらった後、長女が描いた僕の似顔絵をもらった。
そして最後に子どもたち全員が歌を歌ってくれた。

僕は家に帰ると、長女が描いてくれた似顔絵を額に入れ部屋に飾った。
長女が焼肉が食べたいと言ったので、家族全員で焼肉を食べに行った。

次の日、僕はハンドミキサーを買って、奥さんに
プレゼントした。





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