エッセイ : 超簡単説明 半導体ICの作り方と輸出規制3品目 日本は製造業から卒業した方がいいと思う

珈琲でも飲みながら読んで頂き、少しでも皆様の
参考になって頂けたら嬉しいです。

台湾の半導体メーカーTSMCが熊本県で工場を建設中だ。日本も海外の製造メーカーに来てもらって日本で生産してもらう立場になってしまったということだと思う。
TSMCは今やIntelとSamsungと並ぶ半導体の大手メーカーだ。TSMCの時価総額は62兆円で日本NO1企業トヨタ自動車の2倍だ。

半導体と呼ばれているが正確には半導体ICだ。
ICとはIntergrated Circuitの略で高集積回路という意味だ。

僕は子どもの頃、捨てられているテレビやラジオを拾って来て、ドライバーで分解し玩具代わりにして遊んでいた。その頃のテレビやラジオは分解すると基盤に抵抗器やコンデンサー等の部品といろんな色の配線があったので、下手な玩具よりも面白かった
母親はそれを見ていて理系に進むものだと思っていたのに、僕は文系に進んだため、あれは何だったんだ、とよく言っていた。

ところが大学生の時、電卓の調子が悪かったので
中を開いて見た時、驚いた。子どもの頃の電卓は
基盤にいろんな部品がついていて、たくさんの配線があった。
その時開けた電卓の内部は、数字を表示する液晶の周りにある部品と電卓の各数字を押す部分に繋がっている配線しかなかった。
半導体ICが入っていたからだ。

そもそも半導体ICとはどうやって作られているのか、超簡単にご紹介します。
まず、電気を通す物質は導体、電気を通さない物質は絶縁体、電気を少しだけ通す物質が半導体。
ICは小さな回路、普通に電気が通るとショートして回路が壊れてしまう。そこで、電気を少しだけ通す物質で作らなくてはならなくなる。実際に半導体ICを作るための半導体とは、シリコン。シリコンを薄い硝子板のようにしたシリコンウエハーが使われる。

半導体ICは、フォトリソグラフィという技術で作られる。小さな基盤に、昔の様に、抵抗器やコンデンサー等の部品をつけることも出来なければ、そんな極小サイズの部品も存在しない。そこで、この
フォトリソグラフィという技術が必要になる。
簡単に言ってしまうと写真と同じ、ICの回路の
フイルムがあり、それを使ってシリコンウエハー上にIC回路の写真を作ると思えばいい。
まずシリコンウエハーの上に特殊な上薬を塗り、
IC回路のフイルムを使ってシリコンウエハー上にIC回路の写真を作る。そして、特殊な光を当てると、上薬が一瞬の内に、写真通りの回路を形成てしまうという凄い技術。

シリコンウエハー上に出来たICチップをひとつひとつレーザーでカットした後、シリコンウエハーは
硝子の様に脆い物質なので、硬い受け皿に入れる、
但し金属製の受け皿だと電流が流れてしまい、ICがショートしてしまうため、金属製の受け皿は使えない。金属と同じ硬さを持った電気を通さない絶縁体の物質、つまりセラミック製の受け皿に入れる。
京セラという会社は、この半導体IC用の受け皿を生産したことでビッグ企業となったと聞いたことがある。

テレビで見たことのある人もいると思うが、受け皿に入った半導体ICのチップにワイヤーボンディングという半導体ICにリード線をつける工程を経て
半導体ICの表面を奇麗にする、ホコリ等が付いていたら回路がショートしてしまうからだ。だが、
ショートしてしまうので水で洗うことは出来ないためガスでホコリを吹き飛ばす。そして、プラスチックモールドをし、お馴染みの黒いパッケージの半導体ICとなる。

韓国の半導体メーカーは、この1番美味しい工程部分をしているだけ。日本は半導体ICを作るために必要なシリコンウエハーやセラミックの受け皿等、
半導体ICを作るのに必要な半導体素材を殆ど作ることが出来る。つまり、半導体素材産業も一緒に育った。ところが韓国の半導体メーカーは、必要な半導体素材を殆ど日本から輸入し、半導体のみを作るだけだった。そこで、安倍元総理時代に行われた、
半導体輸出規制3品目により危機に直面した。

半導体輸出規制3品目
1、フッ化ポリミノイド 
別名ポリマーと呼ばれる物質で、半導体ICを作る時に必要な絶縁体の物質。
2、フッ化水素
半導体ICの表面を奇麗にするためにホコリ等を吹き飛ばすガス。ガス自体に不純物があったら何にもならないため、純度の高いフッ化水素ガスを使うが
ボンベにガスを入れて輸出出来ないので、フッ化水素ガスを液体にしたフッ化水素にして容器に入れて輸出している。
韓国メーカーは、これをボンベに入れ、フッ化水素ガスにして使っている。
3、レジスト 
フォトリソグラフィの技術でシリコンウエハー上に
IC回路を写真の様に写す時に使われる感光剤。

韓国では今、自国で半導体素材を作れるように急ピッチで進めている。

1980年代、日本の半導体ICは世界シェアの約56%を持っていた。そして、この半導体ICが、
日米貿易摩擦の中心となり、1986年の日米半導体協定で日本は不利な条件を飲むことになった。
日本国内で外国製半導体ICを最低20%使用すること、日本製半導体ICの価格は現状維持等だ。

日本が価格の現状維持に苦しんでいる間に、半導体ICの主力商品のひとつDRAMを作るのが得意だった韓国メーカーに抜かれて行った。
また、日本の半導体ICが売れていた時代は、日本の家電製品も海外で売れていた。どの国の家庭でも
パナソニック、SONY、日立製作所、東芝、シャープ等の家電製品を使っていた。つまり日本の半導体は
海外の日本の家電製品メーカーの工場に多く売られていた。つまり、場所が海外というだけで、日本企業に多く売っていたというカラクリもあった。

結果的に半導体ICが韓国メーカーに抜かれて行くのと同時に、家電製品も韓国メーカーに抜かれて行った。結局、日本の半導体産業は衰退し、残っているのは半導体素材産業だけになってしまった。

一方韓国も以前の日本と同じ状況になっている。
Samsungを中心とした半導体ICメーカーの主要
客先は、同じSamsungを中心とした海外の韓国の家電製品メーカーだ。
しかも韓国のGDPの約60%はSamsungグループという特殊な経済国だ。
韓国にもこれからの課題は多いと思う。

日本の製造業は衰退の一歩を辿っていて、バブル崩壊から、失われた30年とアジアの諸外国から
馬鹿にされている。
日本はこれからどうすればいいのだろう?
僕はイギリスを参考にしてもいいと思う。イギリスには製造業が殆どない。イギリスの主要産業は、
金融業とサービス業だ。
日本にはアニメ文化もある。これからは形ある物を売るのではなく、文化やデザインや知識や情報等を売り、極端な話、製造業から撤退してしまってもいいんじゃないだろうか?とも思う。

僕は今の若い人たちの才能とセンスを信じて、
日本を製造業の国から、文化、アート、サービス、情報等を売る国に変えて行ってもらった方がいいと個人的に考えている。





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