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散文の仲間

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ジブラルタル峻が綴る、理性や科学の外側のテクスト。
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#散文のような小説のような

小説:透明な猫(374文字)

小説:透明な猫(374文字)

 誰も持たない道具を使う。それはピッケルの先端を納豆巻きにすることであり、幕末のヒキガエルの鳴き声にフランジャーを掛けて仕上げるものだった。
 遥か遠くに見えるミートパイは、あっけなく情報戦に埋もれ、パラダイムのキャップに嵌め込まれたチゴイネルワイゼンとともに祝杯を上げる。
 漬物石で覆われたエレクトーンがひとりでに鳴り響き、ウーロン茶はそのときだけ、複製物ではないよという表情を浮かべる。
 ミシ

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駄菓子の真実(418文字)

駄菓子の真実(418文字)

 隠れマルコフ作戦を偏微分する。額縁の友達は「それは妥協じゃなくて挑戦だよ」と言う。そのセリフを第五象限にプロットしたまま暮らす。
 
 時間と握手をする龍が、予定調和にかじりつき、真夜中色のアジサイが咲き続けることになる。
 感情という言葉をナノテクノロジーで解体し、まだ問われていない素子に代入する。

 駄菓子の真実を過冷却し、動的粘弾性を計測する。誰も認めようとしないのは承知しているが、パレ

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小説:全て裏表紙の取れた百科事典だと気づく

小説:全て裏表紙の取れた百科事典だと気づく

 花壇を横切ったら、沼にはまった。ちょうど圧壊したのだ。濃霧の中を進むことに慣れていたはずなのに。それを中央分離帯だった頃のテントウムシが嘲笑う。
 ブラスターを打つ。ダブルスチールを遂げる。人情を嗅ぎ分ける。綿棒をぶっきらぼうに折り曲げる。特別なノーマルを食べる。知覚的信念のかさぶたを剥がす。全て裏表紙の取れた百科事典だと気づく。

 カウンター攻撃に対するプトレマイオス朝エジプトはコロボックル

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小説:光のフルスクリーンモード、などを含む言葉の塊(398文字)

小説:光のフルスクリーンモード、などを含む言葉の塊(398文字)

 柔らかいアルコールを半透明したような月だった。意味の無い意味が意味を笑い、価値の無い価値が価値を笑う。ほんの少しだけ高い場所へ続く階段をまたゆっくりとのぼり、それはおりることと同義だった。

 絡まった色をむしり取り、今、この星空の裏側に隠す。定まった色が鈍くなり、今、何らかの行為の切れ端から漏れる影だけが立ち上がる。それを畳み込むような光のフルスクリーンモードを見る。それは消失しながら分泌され

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小説:猫は粘性流体だ、などの言葉の塊(450文字)

小説:猫は粘性流体だ、などの言葉の塊(450文字)

 猫は粘性流体だという話をする。

「ユルゲヌス-ブブッティ反応」はウォーレン・ユルゲヌスとセルゲイル・ブブッティの二人により発見された反応だ。
 ごく簡単に説明すると、ベルヌーイの定理の切れ端を梃子の原理で炒めた反応物を反物質にスパッタリングし、そこに析出した薄膜を野良猫に踏ませたときの反応のことを意味する。
 猫の鳴き声は通例「カメカメカメカメー」なのであるが、奇跡的に「ニャー」あるいは「ミャ

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小説:あなたの文法を見せなさい、などの言葉の塊(472文字)

小説:あなたの文法を見せなさい、などの言葉の塊(472文字)

 現象のゆりかごをマリアナ海溝から引き上げ、地鎮祭が催される。崖を背にした偉大な俳優が背水の陣とばかりに、前方後円墳に変貌する。手袋を自らの歯でもって剥ぎ取り、世代の鐘が鳴り響く。調子の良いエンゲル係数にヒッタイトの鉄を突きつけて、盤面を俯瞰する。
 するとどうだろう?
 トリオの左の担当者がファンシーなマシュマロを乱射するではないか! その際、固めるか吸わせるかはさして問題ではないのだ。高分子吸

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小説:ピンボールで20点というイカの色素のようなスコアを叩き出してから。などを含む言葉の塊(403文字)

小説:ピンボールで20点というイカの色素のようなスコアを叩き出してから。などを含む言葉の塊(403文字)

 雪の結晶が健気に伸ばす片手を握りしめて男は走る。ピンボールで20点というイカの色素のようなスコアを叩き出してから。
 スペア7連続で別室にいざなわれ、畳の部屋でマッコリを飲み続ける。記憶のほつれ髪に淫することを禁じ得えなかった。

 側転4回で失格になった国道98号線はハレーションを塗り広げて喜ぶ。タウリンとハイタッチ。
 黒い遵法精神が街に降り注ぐ。あくなき平泳ぎはブルーライトカットではにかみ

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小説:祈りを紙ヒコーキとして折り、桃源郷に向けて飛ばす。などの言葉の塊(483文字)

小説:祈りを紙ヒコーキとして折り、桃源郷に向けて飛ばす。などの言葉の塊(483文字)

 ハンマー兄弟は桃姫の足跡を追う。彼らが主人公であってもいいのに。彼らがキノコを食べたとしてもいいのに。

 パンダの寝姿を模した粘性の雲。それを目指すシンリンオオカミの群れは、脱走兵と合流する。極めて軽微なフランケンシュタイナーの衝撃を足がかりにしてクロサイを追うモルフォチョウはヒガンバナの花言葉になる。たとえそれが、戦火の拡大を招こうとも。

 群れに見惚れながら、夕暮れは朝焼けに手を貸す。そ

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