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#ミステリー
『山田孝之の東京都北区赤羽』『山田孝之のカンヌ映画祭』『映画 山田孝之3D』|稲田豊史・ミステリーファンに贈るドキュメンタリー入門【第9回】
▼前回はこちら 文=稲田豊史 『山田孝之の東京都北区赤羽』 2015年1月、テレビ東京系の深夜帯で突如始まった『山田孝之の東京都北区赤羽』(監督:松江哲明、山下敦弘/30分×12話)という番組に、筆者を含む多くの視聴者は当初たいそう困惑した。 第1話冒頭は、『天然コケッコー』『苦役列車』などで知られる山下敦弘監督の新作映画『己斬り』という時代劇の撮影現場。ラストシーンで自死する主役にして侍役の山田孝之の芝居が止まってしまう。「(作り物の刀では)死ねないっすね」「僕
『テレビ放送開始69年 このテープもってないですか?』|稲田豊史・ミステリーファンに贈るドキュメンタリー入門〈語っておきたい新作〉【第7回】
文=稲田豊史 2022年12月27日から30分×三夜連続で深夜に放送された『テレビ放送開始69年 このテープもってないですか?』(BSテレ東)が、放送直後からネットを中心に大きく話題となった。内容は、「テレビ東京局内にはもうデータとして残っていない過去の番組を、視聴者から送ってもらった録画VHSを使って放送する」というもの。進行役は、いとうせいこう、モデル・女優の井桁弘恵、テレビ東京アナウンサーの水原恵理だ。 三夜にわたって放送されるのは、1980年代にテレビ東京の
プロレスとドキュメンタリーに共通する「虚」と「実」~『俺たち文化系プロレスDDT』|稲田豊史・ミステリーファンに贈るドキュメンタリー入門【第8回】
文=稲田豊史 『ビヨンド・ザ・マット』の衝撃 プロレスラーたちの普段の顔を追った米国のドキュメンタリー『ビヨンド・ザ・マット』(99年製作)が2001年に日本で公開された際、多少なりともプロレスというものに触れていた者は大きな衝撃を受けた。プロレスが(正確にはWWF〈現・WWE〉を中心としたいくつかのプロレス団体が)筋書きのあるショーであると、〝証拠映像〟と共にはっきりと言い切っていたからだ。 同作は冒頭から「プロレスは基本的に芝居と同じ」「勝敗も暴力シーンもすべて
【連載 #05】『さようなら全てのエヴァンゲリオン ~庵野秀明の1214日~』|稲田豊史・ミステリーファンに贈るドキュメンタリー入門
文=稲田豊史 庵野秀明の奇人性と天才性 メイキングドキュメンタリーというジャンルがある。ある映像作品の監督や制作現場に密着した実録のことだ。大方は「作品の完成」というシンプルなカタルシスが最後に用意されているため、込み入った問題提起からスタートする社会派ドキュメンタリーなどに比べれば、比較的「見やすい」部類に入ると言えるだろう。 『さようなら全てのエヴァンゲリオン ~庵野秀明の1214日』は、2021年3月8日に公開されたアニメーション映画『シン・エヴァンゲリオン劇場
「Tatsuya Mori TV Works~森達也テレビドキュメンタリー集~」|稲田豊史・ミステリーファンに贈るドキュメンタリー入門〈語っておきたい新作 #02〉
文=稲田豊史 森達也が90年代に制作したTVドキュメンタリー4本が、2021年12月に初DVD化された。価格は少々お高いが、今までVHSや配信などでも一切観ることができなかった〝幻の作品群〟ゆえ、所有して損はない(筆者も購入した)。当時は地上波での放映だったが、同じ内容を令和の現在に放映するのは難しいだろう。それほどまでに「題材勝ち」の4本なのだ。 『ミゼットプロレス伝説~小さな巨人たち~』(’92)は、昭和の時代に時折TVで見かけた、いわゆる小人プロレスの興行団体に密着