四代目と若頭
俺が若い頃はよくファストフード店に行ったりしたもんだが、歳を取ってからはめっきり行かなくなった。
それが歳を取ることと言っても良いくらい、四十過ぎると胃が脂っこいもんを受け付けなくなるのだ。
妻の美嘉は現在二十歳。出るとこはしっかり出ている体なのに、腰のくびれはキュッとしててしなやかに美しい。普段から食にはそれ相応の気を遣い、血の滲むような努力をしているのだろうなと思わせる程の美ボディだが、実を言うと、ファストフード店にも結構行くし、してる運動は家事が主だ。
美嘉は恵まれた体型、体質を持ち合わせており、周りの女性からは羨望の眼差しを向けられることが多い。
「美嘉ってさ、スッゲェボインちゃんなのによぉ、締まるとこはちゃんと締まってて、抱き心地サイコーなんだよなー」
俺が何気無くぼんやり話すと、嶋本は真顔で「はあ」と返事する。
「なぁ嶋本、ちょっと俺を抱きしめてみて」
「は?」
「いーから早く」
突然の命令に嶋本は驚くが、渋々俺の背中に腕を回して「こう…ですか?」と抱きついた。
「どうだ?抱き心地良いか?」
「……何て言いましょうか…」
歳を取ると、体のあちこちの筋肉も当然落ちてくる。だから俺は毎朝五時には起きて、自宅の地下に在るトレーニングルームで一時間程汗を流すのだ。
それによって筋力は鍛え上げられ、男としての美ボディを保てているという訳だ。
自分が体を鍛えているのには訳がある。美嘉に恥をかかせない為、美嘉の目に良く映る為、いつまでも美嘉の傍に居られるよう健康でいる為。
そして、美嘉とのセックスに充足感を与える為だ。美嘉が俺の体に満足してくれるよう、日々努力を欠かさないでいる。だから俺の抱き心地も重要なのだ。
「私と美嘉さんの体格差じゃ、ちゃんと貴方の抱き心地は測れないのでは?」
それもそうだ、と心の中で納得する俺。
「何つーか、四十にもなると色々体にガタがきてさぁ、筋トレしてもなかなか筋肉がつかねぇんだよなぁ」
「と言うか……」
「ん?と言うか何だよ」
「いや……」
煮え切らない嶋本にムッとして、「何だよ」と少しばかり眉根を寄せるが、「いや………」としか言わない嶋本に、「言わねぇと減俸するぞ」脅したら嶋本のヤロウ顔真っ赤にして。
「あ?何で顔赤くするんだよ。おま、まさか…!?」
「いや……貴方の抱き心地……想像以上に………」
「もぉー言うな言うな!!それ以上言ったら絞め殺すぞ!?」
結局、よく分からない雰囲気になっちまって、この後死ぬ程美嘉とセックスをした。
…Fin.
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