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水族館に行ったら、いつも思いだすこと
水族館に行くたびに、どん底だったころの自分を思い出すー。
今日は、思い立って水族館に出かけてきました。
我が家の子どもたちは、水族館が大好きです。わたしも大好きです。
何年ぶりの水族館でしょう。アメリカの、わたしたちが住む街の近くには、水族館がありません。だから、我が家にとって、水族館とは旅先で楽しむものになっています。
月曜の昼間だというのに、水族館は大勢の人で入場制限がかかるほどの賑わいでした。よく見ると、ほとんどが外国人旅行客のようです。係の人に外国語で対応されながら、わたしたちも入場しました。
入り口をくぐるなり、目の前に現れた水槽のトンネルに、子どもたちはわあっと駆け出していきました。
薄暗い照明の光が水の青の中をくぐり抜けて、その間を縫うように魚たちがゆったりと遊泳していました。誰も急いでいない。時間がぐにゃっと歪んで、時の流れが急に速度を落としたような気さえしました。
世界の各地を巡るように配置された展示を、一つずつ回っていきました。日本に始まり、アリューシャン列島、アメリカ大陸周辺、南極大陸、タスマン海。
そしてたどり着いたのは、この水族館の最大の見どころである、太平洋の巨大水槽。ジンベエザメが王者の貫禄を漂わせ、従者らしき魚たちを引き連れながら巡回していました。
子どもたちは水槽のガラスにへばりついて、魚たちの世界に目を凝らします。これはワオな体験。どんな高画質な映像も、実際に自分の目で見る体験には絶対に敵わない。わたしもこれが見たかったんだ。
青い異空間の中を右へ左へ流れていく魚の一匹一匹を目で追いながら、わたしは、10年くらい前の自分を思い返していました。魚たちの世界にどっぷりと入り込むと、いつも思い出してしまう。
当時のわたしはとても疲れていて、何より心が弱っていました。
いま思い返すと、人生の歯車がちょっと狂ってしまっていたんです。結婚とか、仕事とか、生きる意味とか、幸せとか、そんなことばかりぐるぐる考えていました。結婚したいのに相手は見つからないし、仕事では能力もやる気も追いつかないし、週末をカウントダウンしながら平日を乗り切っているくせに、週末には心から楽しめることもなく。
現状に満足できることが何ひとつなかった。
そんな当時のわたしには、魚が羨ましかったんです。生きていくために必要なことだけに集中して一生を終えられることが。女は何歳ごろまでに結婚しておくのが正解、みたいなくだらない観念もないし、幸せとは、生きる意味とはなんて考える必要もない。ただ、生きることだけに集中すればいいんだもん。
あれから時を経て、状況は大きく変わりました。現状のすべてには満足できていないけれど、いまの自分を受け入れて生きていけるようになりました。魚として生きたいなんてもう思わない。
青白い光の入った水槽の前で、黒い影のように見える子どもたちの背中を見つめながら、そんなことを考えていました。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
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