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出願書類の書き方〜履歴書, 研究計画書, 推薦状〜

こんばんは、マサキです。
今回は、出願書類対策についてお話しします。出願書類とは、
   (1) Curriculum Vitae (履歴書のこと、通称CV)
   (2) Research Proposal (研究提案書、1500 words以内)
   (3) 推薦状3通
以上3つのことです。順に説明していこうと思います。

Curriculum Vitae

 入試書類の中で、CVは比較的軽視されがちですが、私はかなり重要だと思っています。というのも、選考委員の先生達も、いきなり長文の研究計画書を読むことはなく、まずCVを見て、どのくらいのレベルの人なのか事前に確認してから読み始めるはずだからです。この先入観は、研究計画書や面接を好意的に捉えてくれるかの判定にかなり影響すると思っています。また、先生とのコンタクトを取る上でも、CVを要求されることは少なくなく、言わば名刺のような役割を果たします。私は、人のCVを見ながら良いと思った表現や工夫はどんどん取り入れて、10回くらいは改訂しました。実際、CVの出来が良くなるほど、候補の教授からメール返信を貰える確率は高まっていきました。

 テンプレートなどはネットに落ちているので、好きなものを使えば良いと思います。内容は、志望している研究室の学生のCVを参考にして、凄い!と思わせる要素を散りばめましょう。これは、教授は忙しいので、おそらく一字一句全て読むことはなく、太字で強調されている部分しか読まないのでは?と思っているからです。例えば、私のケースでは、学歴はこんな感じの書き方をしました。

MPhil (Shushi) in Electronic Engineering, the University of Tokyo
Department of Electrical Engineering and Information Systems,
(summa cum laude; ranked 1st in the cohort of 3,074 MPhil graduates)
Awarded President’s Prize; the best master's thesis

 自分で書いていてもひけらかしすぎだなと思うのですが、周りを見ているとこれくらいで丁度良いです。いくつかポイントがあります。

(1) 首席はラテン語/英語でsumma cum laude。そして、どのくらいの規模の学生の中で、何番目の評価をもらったのかを具体的に書くと良いです。私のケースでは、工学系研究科の最優秀だったので、その年の学生数を調べて記載しました。
(2) 日本の場合、修士(科学)とか不明瞭な学位をもらうことが多いですが、欧米圏では何の専門家かはっきりしません。公式の名称は一度無視して、自分の研究内容を最もよく表す言葉で勝手に命名すると良いです。
(3) イギリスで修士号は1年間で取得できるため、日本の修士号をそのままMSc/MEngと訳して書くと、留年したのかと勘違いされる恐れがあります。そのため、違うシステムであることを明記するため、(Shushi)と書いています。授業の単位で学位を取ったのではなく、研究成果で修士号を取得したケースは、MPhilになり、こちらはイギリスでも2年かかるコースなので、こちらを採用した方が良いと思います。日本の理系修士号は基本MPhilだと思います。
(4) 日本のシステムの場合、授業の成績と、研究の評価は別で付けられると思います。なので、研究でも最高評価を頂いたことを書いておきましょう。

 こんな派手な成果ないよ、というケースもあるでしょうが、国際学会で賞をもらったとか、成績評価がAだったとかも、distinctionみたいな言葉で書いておくと良いと思います。日本の大学は本当にトップの成績を収めた人しか賞をくれないですが、イギリスでは平均より上くらいでも、優秀を表す賞をもらえたりします。詳細は以下のリンクからどうぞ。

 要は、この人は優秀そうだ、という印象が与えられれば良いので、何か自分のケースに該当する言葉がないか調べることは非常に重要です。短くて煽り力の高い言葉を並べるときっと良い印象を与えられると思います。なぜなら、このレベルの学歴はオックスフォードでは一般的だからです

 職歴も同様です。社内で頂いた賞は全てきちんと書き込んでアピールすると良いと思います。私のケースでは、研究職で働いていたので、個人最多発明賞とか、学会でのYoung Researcher Awardとか、全社研究発表会の最優秀発表賞といったものを受賞していたので、各研究テーマに合わせて、時期を区切って、こんな賞として評価されていると記入しました。

 また、受賞歴はとにかく数を列挙しましょう。社内でもらったショボイ賞だから書かなくて良いか、、、とは思わずに、書けるものはとにかく全部書いた方が良いと思います。私もボランティアで地域の夏祭りの運営を手伝って、青少年表彰を頂いたことがありました。これは流石に書かなくていいか、とも思いましたが、ボランティアは海外では評価されるようなので、一応書きました。また、修士の時、JASSOの奨学金が成績優秀で全額免除になったのですが、奨学金も海外だと受賞歴として評価されるようなので、これも加えました。JASSOは本当は独立行政法人なのですが、イギリス人にとって、よく分からない(というか日本人の私もよく分からない)区分なので、National institutionとしました。国の機関から奨学金を貰うというのは、他の国からするとかなり凄いことのようです。日本語の直訳とはちょっと違う気もしますが、分かりやすさを優先して以下のように書きました。

JASSO Scholarship
Issuer: Japan Student Services Organisation (national institution)
Fully covered scholarship for tuition and living cost.

 あとは、論文や学会発表歴を列挙しました。全体はなるべく2ページ以内に収めたいので、削るとすればここになります。私のケースでは、最初に概要を書いて、主要論文だけタイトルとジャーナルを含めて全部書きました。学会に関しては、機械学習系のトップカンファ以外は、数だけ書きました。

Research Proposal

研究提案書は、私の専攻においては最も重要な書類でした。というのも、現在の指導教員がそう明言していました。以下、頂いたメールの内容を引用します。

The most important component of your application will be a research proposal. The proposal is an indication of your ability and inclination to do research (to survey literature, identify open questions and tentatively suggest potential solutions); it serves no other purpose. It is not a contractually-binding statement, and will not in any way constrain your DPhil project. So as to fairly assess applications, no detailed feedback will be given (particularly on proposals) ahead of their submission.

研究する能力や意欲を測るための書類であって、入学後テーマを変えて良いと明言されています。そして、非常に具体的に評価ポイントが書いてあります。

(A) 文献を整理して、現状の到達レベルを明らかにする能力
(B) 現状では解決できていない課題(open question)は何かを特定する能力
(C) 暫定的な解決策を提案する能力

 この3項目がどれだけ正確にできて、かつ、興味深い提案をできるかという能力が合否を決めると言っても過言ではありません。私のケースでは、準備と書き上げるのに2週間くらいかかりました。字数制限は1500 words以内で、私の場合は1495 words書きました。最初は3000 wordsくらいありましたが、オンライン英会話の先生と一緒に内容を見ながらギリギリまで削りました。前回の記事で書きましたが、たまたまpreplyにオックスフォード卒のイギリス人研究員の先生がいたので、その人に何度も内容を見てもらいました。

 私の研究提案書の流れは以下の通りです。長いので、必要に応じて読み飛ばしてください。対応関係は以下です。
 評価(A)文献調査 → 段落(1)-(3)
 評価(B)課題発見 → 段落(3)-(4)
 評価(C)解決提案 →   段落(5)-(7)

(1) 世界情勢の話。環境問題から考えると、AAAのような技術が今後必要となる。実際、Google DeepMindとかもトライしている。しかし、現状では上手くいっているケースはない。これは、従来技術には、BBBの課題やCCCの課題があるためである。これらの課題を解決するためには、抜本的に従来技術の技術の精度を高め、効率化する必要がある。これは、迫りくる環境問題に早期に対処するため、喫緊の課題と言える。
(2) 従来モデルは、DDDといった特徴があり、EEEの利点を有するが、FFFの問題がある。この問題を解決する方法として、GGGの技術を適用することが考えられる。GGGの技術を適用すれば、原理的にFFFの問題を解決するポテンシャルがある。その結果、BBB/CCCの課題を両方とも解決することができ、最終的にAAAの技術開発を創出できる。このため、GGGをFFFに適用するための技術開発は非常に重要である。
(3) GGGをFFFに適用することは、古典的な情報理論から考えると、HHHの問題設定にあたる。HHHの問題設定で、今回の問題FFFを解釈し直すと、III/JJJ/KKKの部分問題に分解することができる。しかし、KKKの課題は、機械学習コミュニティにおいても今まで議論されたことのない課題であり、新しい方法論の開発が必要となる。
(4) GGGをFFFに適用する検討は、いくつかの先行研究があり、LLLのケースではMMMの手法、NNNのケースでは、OOOの手法を使用して解決を試みている。しかしながら、先にあげたKKKの課題を解決するモデルは未だ発表されておらず、未踏となっている。
(5) そこで、本研究では、KKKを解決する方法を提案する。KKKを解決する上での4つの主要なチャレンジと、その暫定的な解決策をまとめる。
  →4つのチャレンジと解決策をまとめたリストを挿入
(6) 研究計画をまとめる。データセットはPPP/QQQを使用する。アルゴリズム開発のため、最初はシンプルなRRRのセッティングで検討を行い、徐々に複雑性を高めて実際の問題に近づけていく。最後には、実際の実験装置にこのアルゴリズムを適用し、実際にエネルギー浪費が抑制されていることを確認する。消費抑制量として、SSSの研究から、約TTT%抑制できると推察され、これは全世界にもし適用できると、UUUものエネルギー浪費を抑制することに成功したこととなる。
(7) ここまでの研究がもし博士課程の期間内に達成されたとすると、さらにチャレンジングな課題に挑戦することができる。それは、作成不可能と呼ばれたVVVの技術である。このVVVが作成不可能な理由の最大要因は、実は課題KKKであり、同じ技術を適用することで、VVVが達成される可能性がある。これに成功すると、従来技術WWWを全て一掃するポテンシャルのある技術である。
(8) この技術開発を行う上で、私が適任であると信じている。それは、今までXXXという研究を行っており、この課題に対する理解と経験が深い。また、YYYの分野に関しても成果を上げていて、これらは、ZZZという形で評価されている。
(9) 以上、世界的な環境問題を解決する技術AAAを開発するために、HHHの問題設定のもと、KKKを解決するモデル開発を行う。私は、この技術は工学的に重要な成果を残しうる可能性があるだけでなく、機械学習の応用範囲を広げる上で根源的な課題KKKにもアプローチすることができるため、理学的にも重要である。そして、この研究テーマは私の今までの経験がフルに活かせるので、最適な博士学生候補であると信じている。

 先生に指定された評価項目(A)-(C)に加えて、私のケースでは、(D)なぜこの研究をする上で、私が最適な候補者なのか?も加えました。これは、この書類が研究する能力や意欲を図るためのテストだからです。説得力のあるバックグラウンドが書けると、能力の証明になりますし、長年このテーマでやっていることを示せると、意欲が高いこともアピールできます。実際、私が提案したテーマは、私がずっと取り組んできたこととは違うのですが、経験してきたことから共通点を抽出して再構成すると、説得力のあるストーリーを作ることができます。

 また、(6)-(7)のように、実際に約3年間でこの研究は終わりそうか?コツコツと成果を積み上げていくことが考えられているか?という観点も重要だと思います。実現可能な内容を提案することや、成果のマネジメントスキルも、研究能力の一つだからです。最後に、(7)のように一見無謀に思える将来プロジェクトも書いておくと、この研究テーマには更なる広がりがあって、論文書いて終わりでないことをアピールできます。

推薦状3通

 私のケースでは、1. 職場の上司(部長)、2. 修士の時の指導教員(教授)、3. 修士の時の研究室の共著者(准教授)を推薦者にしました。全員日本人でしたが、問題なく合格できました。日本人に推薦してもらうメリットは、内容をある程度指定できることです。

 推薦書はコネの側面もありますが、能力だけでは測れない人格面での評価や、提出した他の書類の裏取りの目的もあると思います。そのため、3人の推薦者には、それぞれ別の観点で評価して頂くことが良いと思います。私のケースでは、以下のように評価して頂く点を変えて頂きました。

1. 職場の上司には、普段の仕事ぶりを書いてもらい、リーダーの経験があることや、国際的なプロジェクトのマネジメントスキルがあることを重点的に評価して頂きました。
2. 指導教員には、修士時代の研究がいかに独創的で、高く評価されたか、アカデミックな能力があることを重点的に評価して頂きました。
3. 共著者の先生には、装置の修理や、後輩への指導など、成果に残らない部分でいかに同僚として人格が優れていたかを重点的に評価して頂きました。

このように、評価ポイントが偏らないようにすることで、その人の性格が更によくわかるようになり、一緒に働いてみたいという気持ちを想起させることができます。特に、3の人格面での評価は忘れがちですが、非常に重要だと思います。例え実力主義の欧米圏でも、協調的でない人と一緒に働きたくないはずです。実力が高く見えるほど、高慢ちきな印象を与えかねないため、協力的な印象を残すことは非常に重要です。日本的価値観からすると、このような点をアピールするのはやや気が引けるのですが、人に言ってもらえるとその気持ちも少し和らぎます。

最後に

出願書類の書き方をまとめました。これは言わば、今までの人生で行ってきたことを収穫する作業に近いと思います。本来素晴らしい人でもアピールの仕方で評価が大きく変わるのはもったいないので、詳しく書きました。気づいていなかったアピールポイントを探し出せたなら幸いです。

以上、長い文章でしたが、ありがとうございました!

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