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オックスフォードの入試面接

 こんにちは、マサキです。
 今回は面接対策についてお話しします。どんな準備をしたか、良かったかを、経験談を交えて順にお話ししていこうと思います。面接の項目に沿って、1. スライドを使った発表、2. 質疑応答、3. 技術面接の内容と対策について説明していきます。

面接内容・時間配分・スケジュール感

 まず、私はオックスフォード大学とケンブリッジ大学の2つで、面接まで行いましたので、この2つについて説明していこうと思います。面接の連絡に関しては、書類の出願後、かなり時間が空いて、急に連絡が来ました。
 オックスフォードのケースでは、以下の通りでした。

 ・11/13締切で出願
 ・12/8のPM 8:53に教授から面接の連絡メール
 ・12/11のPM 3:30から面接

どちらも連絡から3〜4日以内に面接というタイトなスケジュールで、本当に焦りました。この連絡が来るまで、どんな形式の面接なのか、そもそも書類を合格したのか分からないのも困る点です。出願してから1ヶ月も期間があったので、準備しておけばなぁと悔やみました。

 次に、面接の内容について説明します。時間配分は以下の通りでした。

 ・オックスフォード:スライド発表10分/質疑20分
 ・ケンブリッジ:スライド発表15分/質疑30分/技術・コード面接30分

どちらのケースも発表より質疑の方が長かったです。
 また、オックスフォードはZoomでの面接、ケンブリッジは対面での面接でした。日本人のノリで、上下黒スーツでネクタイを締めてビシッとキメて面接に臨んだのですが、先生からは、「こんな服最近着てないな、俺ジーンズにスニーカーだよ、ごめんね」と笑われてしまいました。シャツにセーター、チノパンくらいのオフィスカジュアルが無難かもしれません。というか、服装は合否と関係ないので気にしなくて良いと思います。

スライドを使った研究内容発表

 まず、私が受験した、オックスフォード、ケンブリッジの両方の研究室で、スライドを使った研究内容の紹介は項目に入っていました。スライドのフォーマットは特になく、自由でした。また、どちらもパワーポイントの発表者モードを使って発表が出来たので、カンペを読みながら発表することが可能でした。しかし、発表の途中でガンガン質問が来るので、結局予定していた原稿通りに喋ることはできませんでした。発表に関係する項目は、全て平易な言葉で、原稿を見ずに説明できるようにしておいた方が良いです。

 スライドは、両方とも11ページ(タイトル含む)を用意しました。構成は以下の通りです。

1. 研究タイトル
2. 背景、先行研究のサーベイ
3. 今回の研究の目的
4. データセットの説明
5. 基本コンセプトと分解された4つの部分タスク
6. 開発した機械学習モデルの説明
7. タスク1の結果
8. タスク2の結果
9. タスク3の結果
10. タスク4の結果
11. 結論、まとめ

 目次などは入れていません。10分の発表では必要ないと思ったためです。また、詳細について説明するというよりは、流れと結果を理解してもらうことを重要視した発表をしました。

 今回のスライドでは、5つのポイントがあります。

1. 何度も発表したことのあるスライドを使用する
2. あえて質問しやすい箇所を用意しておく
3. 志望大学/研究室の発表をチェックしてフォーマットを似せる
4. 先行研究で先生の論文を引用しておく
5. 少し日本アピールをする

 まず、鉄則ですが、既に何度も発表したことのあるスライドを使用しましょう。私のケースでは、国際学会などで発表したことのあるスライドを使用し、簡略化してスライドを作りました。何度も発表しているので、どんな質問が来るか、どの説明が伝わりにくいかがよく分かっており、基本的にクオリティが高いはずです。

 次に、質問しやすいポイントを用意しておくと、こちらも予見や準備ができるので、非常に有用です。質問しやすいポイントは、自分が一番自信のあるポイント、よく理解しているポイントにすると良いでしょう。私のケースにおいては、開発した機械学習モデルについて聞いて欲しかったので、あえてそこまで詳しく説明しませんでした。その結果、狙い通り、そこについて詳しく質問してくれて、他は殆ど聞かれませんでした。

 また、志望大学/研究室の発表をチェックしてフォーマットを似せることも重要です。先生の名前でYouTubeで検索したり、Slideshareなどを探すと、志望研究室の人、または、教授本人が発表している動画を視聴することができます。また、学会のホームページを当たるのも重要です。最近の機械学習のトップカンファレンスは、スライド、ポスター、発表動画を全て公開しているので、同様にフォーマットを確認することができます。
 余談ですが、私のケースでは、先生がオーストラリア人だったので、オーストラリアのアクセントがあることに気づき、何度もYouTubeを見て、先生の言っていることを聞き取れるように練習しました。また、もう一人の先生はイタリア人で、名前の発音が英語読みでなくイタリア語読みだったことにも気づけました。

 また、イントロの部分で先生の論文を引用しておくことも重要だと思います。若干あざといですが、それだけ関心があることを示すことができるので、ストーリーが変にならない限りやるべきでしょう。実際、面接の時には、先生の研究の話になって、ギャグも出るような非常に和やかな雰囲気になりました。これは先生のキャラクターが大いに関係すると思いますが、私のケースでは入れて大成功でした。

 最後に、これは有効だったのかは不明ですが、日本アピールもさりげなくしました。オックスフォード大学に留学する日本人は極めて少ないため、教授にとっても日本人の生徒を受け持つことは初めてであるケースが多く、少なからず興味はあると思います。そこで、タイトルのスライドに、サラッと日本の美しい景色の写真を載せておきました。質問は来ませんでしたが。。。

質疑応答の内容と準備

 基本的に、発表スライドの内容をベースとして、質疑応答は進むので、一般的な話をすることは難しいです。しかし、一般的な質問もされたので、共有します。一般的な質問は以下の通りでした。

1. なぜこの研究室を志望したか?
2. 将来的にどのような展望があるか?
3. この研究分野における最大の課題を挙げるとすれば何か?
4. 分野を変更するようだが、今までにこの研究分野における経験はあるか?
5. どれくらいの規模のソフトを開発したことがあるか?言語は何か?

これらは正直に熱意を持って答えれば問題ないと思います。また、将来の展望は、就職や起業でも良いと思うのですが、オックスフォードDPhil卒の先生曰く、「絶対に国際的な研究者になりたいと言った方が良い」とのことでした。彼の主張は、3〜4年もかけて、研究者としての基礎を教えることになるのに、その知識を使わない道に行くことを宣言するのは印象が良くないという主旨でした。面接の内容が卒業後の進路を決めるものではないので、彼の言うように、面接の場では研究者志望であることを伝えた方が良いのかもしれません。実際そう思っていても心変わりすることはいくらでもあると思いますし。展望では一般的なキャリアを語れば良いと思います。例えば、卒業後ヨーロッパでポスドク→日本で大学教授を目指す、などです。

 また、準備としては、通常の発表練習や想定質問の準備に加えて、以下の4つを行いました。

1. 先生のSNSアカウントをチェックし、質問を予測する
2. 先生の論文を音読し、質問に備える
3. YouTubeで面接の質問について情報収集
4. 英会話の先生に質問を考えてもらって面接練習

 順に説明していきます。まず、先生について詳しく調べるのは鉄則です。先生の研究室HPや個人HPを参照して、代表的な論文や、CVで経歴を確認しましょう。オックスフォードは多様なバックグラウンドの教授がいるので、ストレートなイギリス人というのもそこまで多くない印象です。私は5人の教授に応募して、イギリス生まれイギリス育ちの人は2人、オーストラリア出身1人、アメリカ出身1人、イタリア出身1人、という状況でした。英語圏、または、ヨーロッパ圏が多いかもしれません。また、海外では、教授がSNSをやっていることも多く、特に、機械学習の世界ではtwitterを使っている人が多いです。このtwitterは非常に良い情報ソースで、どんな言葉遣いか、どんな考え方をしているかを理解するのにとても有用です。twitterを見ていたら、「私の研究分野における課題を4つあげるとすれば、〜〜〜と思われているが、実際は〜〜〜の手法を使えば一部は回避できる」というツイートをしていて、まさに面接の質問3の答えでした。4つ挙げていた中で、解決策が最も弱かったものを最大の課題として答えました。

 次に、先生の論文の音読をお勧めします。全ての論文を音読する必要はないと思いますが、提案している研究テーマに近いもの、自分の今の研究内容に近いものなど、少なくとも4〜5本は重要だと思う論文があるはずです。黙読だけでは、意外と詳細を理解していません。音読すると、気づいていなかった細かいロジックに気付いたり、内容をだんだん覚えてきます。加えて、通常の英語学習では難しい、アカデミックな言い回しや、専門用語を復習することができて便利です。また、なぜか知らないですが、スライドの説明が上手くなります。多分、論文ではロジックが整理されているので、理解しやすい説明や表現を潜在的に学習するのだと思います。

 さて、次に、面接の雰囲気や質問例の情報収集のソースとしてYouTubeをお勧めします。「Oxford interview phd」のように検索すれば、沢山の動画が出て来ると思います。ちなみに、悪名高い学部の面接試験は、大学院の試験よりも知能バトル的な要素が強く、あまり参考になりませんので、phd/dphilのタイトルがあるものを見るのをお勧めします。もし、英語が早くて聞き取れない時は、字幕をONにすればわかります。色々な事例を見ると、千差万別で予測不可能であることが良くわかります。例えば、以下のYouTubeは数学科の面接についての体験談ですが、オイラーの多面体定理について聞かれていますね。

 最後に、面接練習です。これは、英会話の先生と一緒にやると良いでしょう。前回の記事で述べましたが、私はpreplyを使用していました。

お願いしたら、一般的な質問を調べて、模擬面接練習もしてくれました。また、オックスフォードDPhil卒の先生には、スライドでの発表練習も見てもらって、アドバイスをもらいました。専門は違えど、同じ理系なので、形式やアドバイスは的確でした。

技術・コード面接の内容

 この技術面接は、ケンブリッジでのみ行われました。内容は、物理・数学の試験とコード面接でした。私は全く準備していなかったので、ズタボロでした。。。青天の霹靂とはこのこと、本当に焦りました。この技術面接を行なっている理由を聞いたところ、「最近AI人気のせいで、私の研究室に入りたい人が指数関数的に増えており、書類や経歴だけでは選べない優秀な人物が、君の他に50人いる。そこで、今年から別途筆記試験のようなこの形式を導入して、正確に早く答えられた人から順に採用することにしたんだ。試すような真似をして申し訳ないが、今のAIブームは異常なので、こうするしかない。」と答えていただきました。

 問題は先生から口頭で伝えられて、答えを白紙に書き込むスタイルでした。問題は以下の5問でした。

1. 物理:全長l、バネ定数kのバネの先に質量mの質点をつける。このバネを天井に吊るし、天井の位置まで持ち上げた質点を時間t=0で手放すことを考える。この時、空気抵抗Rがある条件において、質点が描く軌道の方程式と、そのグラフを記述せよ。
2. 幾何学:1cmの斜辺を持つ直角三角形に、正方形が内接している。この時、直角三角形のある角をθとした時、正方形の一辺の長さを求めよ。
3. 数学:偶関数と奇関数の積は、必ず奇関数になることを証明せよ。
4. コード:ノード数10、エッジ数12程度のグラフを用意する。各重みを考慮して、端から端まで伝搬することを考えた時、通った軌跡の重みの和が最小となる経路を探索するアルゴリズムのpythonコードを書け。
5. 数学:紙を100回折り畳んだ時、その厚みはどれくらいの長さになるか?

冷静に今考えれば分かりますが、私はパニック状態だったので、ほぼ問題は解けませんでした。冷静さを保つことは重要ですね!ちなみに答えは以下のリンクから。

1. 減衰振動

2. 三角関数の定義式

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3. 奇関数

4. 最短経路問題

5. 紙折りたたみ問題


技術・コード面接に向けた準備

基本的には冷静になれば解ける問題が聞かれると思いますが、英語で数学・物理を解くことに慣れていないと思います。英語で数学を勉強できるサイトとしては、Kahn Academyが一押しです。

また、英語でのコード面接対策においては、LeetCodeが有名なようです。

どちらも無料ですので、可能な範囲で問題を解いて、対策しておくと良いと思います。LeetCodeはやろうと思って私もやっていないので、いつかLeetCodeを解いてみた内容でnoteを書こうと思っています。

最後に

面接対策というと、プレゼン練習に偏りがちですが、実際には色んなことを聞かれる可能性があるので、満遍なく対策しておくと心の余裕が生まれます。私はあまりちゃんと対策できなかったので、書類提出後の期間で、あらかじめこれらの準備をしておくと良いと思います。
それでは、最後までお読み頂きありがとうございました!

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