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流浪の食微録

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知られざる美味の探求と出逢いを求めて彷徨う、ロンリー・ミニマリストの食紀行。
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#グルメ

うどん無法地帯に突如として現れた力量。

うどん無法地帯に突如として現れた力量。

「手打ちうどん 力」2021年2月23日(火)

“北の街の春の到来とは雪の喪失である”、と自ら定義づけている。

灰色の空からは、槍のような雪が鋭く重たげに降り落ちる。
突如として冬に逆行しては、歩幅が狭いながらも春へゆっくりと歩む日々が続いているが、静かに春を待つばかりだった。

午後とはいえ、夕刻の微かな兆しが街に漂う中、空腹に息絶えるように彷徨った。
強く降る雪に溶け合う白く大きな暖簾は、

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中華と店名が錯誤する、小籠包の放熱。

中華と店名が錯誤する、小籠包の放熱。

「餃子・小籠包 富士山」2021年1月16日(土)

音もたてずに降りしきる激しい雪は、札幌市民を否応もなく地下街へと導いてゆく。
賑わいのないすすきのから大通、そして札幌駅へ向かうほどに、どこからともなく徐々に人々が溢れ、交錯し、夕刻の地下街を彩る。
その長い地下通路も、札幌駅北口の最北端にまで辿り着くと、人の影は消えて濡れた靴音の反響が寂しげに谺する。
地上に上がると、再び猛吹雪が立ちはだかっ

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うどん不毛の地に迸る、讃岐カレーうどんの弾力。

うどん不毛の地に迸る、讃岐カレーうどんの弾力。

「鉄板居酒屋とんぼ食堂」2021年1月12日(火)

連休後の瑣末で陳腐化した手続、形骸化した会議後の沈鬱。
生産性向上とは名ばかりの午前の喪失…

“生きるために食べるべきで、食べるために生きてはならない”
ギリシアの哲人ソクラテスのテーゼに立ち返り、昼の頂きに盲目的に飛び出した。

盲目は、しばしば後悔をもたらす。
地下に潜ってもその寒さは尋常ではなかった。
それを手がかりにして、温もり溢れる

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静謐の雪が舞う小樽、唯一無二の焼鳥を求めて。

静謐の雪が舞う小樽、唯一無二の焼鳥を求めて。

「伊志井焼鳥店」2020年11月28日(土)

日本酒でほんのりと暖まったところで、次なる店を求めた。
本格的に小樽で酒を飲み歩くという行為は初めてであるせいか、小樽の奥処へと足を向ける時の到来に、いっそう心踊った。

駅前には、おそらく札幌での宿泊を回避した旅人らしき人々が散見された。
キャリーケースの車輪に雪が絡んで前に進まない姿に、
どこか羨望の眼差しを以て眺め過ぎた。
振り返ると遠方への旅

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