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【読書】第167回芥川賞・直木賞受賞作を読んでみた【おいしいごはんが食べられますように】【夜に星を放つ】


7月20日に第167回芥川賞・直木賞の受賞作が発表されました。


芥川賞・直木賞の受賞作は必ずチェックするようにしている、というわけではないのですが、今回の受賞作については、報道であらすじを知って気になり、手に取りました。


この記事では、第167回芥川賞受賞作の『おいしいごはんが食べられますように』(高瀬隼子 著)第167回直木賞受賞作の『夜に星を放つ』(窪美澄 著)について紹介します。読もうかどうか迷っている方に、少しでも参考になれば嬉しいです。


『おいしいごはんが食べられますように』高瀬隼子


こちらの一冊についてまず印象的だったことは、「読みやすい」ということです。芥川賞の受賞作は純文学ということで、「難しい」というイメージがある方も少なくないと思うのですが、こちらはすんなり読めます。


同じ支店で働く、二谷という男性社員と芦川さん、押尾さんという女性社員、周りの同僚たちのお話です。


食事に無関心で、カップ麺で必要な栄養がすべて摂取できればよいのにと考えている二谷。体調を崩しやすく、仕事は無理をしないスタンスで、丁寧な暮らしを好み、お菓子作りが趣味の芦川さん。芦川さんのことが好きになれない、仕事のできる押尾さん。


二谷は、芦川さんが好む「バランスの良い食事」のようなものを嫌悪しながらも、彼女と付き合っています。一方で、芦川さんが欠席した研修会の帰り、二谷と押尾さんは二人で飲みに行き、押尾さんから「わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」と持ちかけられ、二谷は「いいね」と答えます。


特別な事件が起こるというわけではないのですが、二谷と押尾さんの視点を切り替えながら進行するストーリーに引き込まれ、夢中になって読みました。この人たちはどこへ向かうんだろう、どのような気持ちになるんだろうと気になり、止まらなくなりました。


職場で無理しない、無理できない芦川さん。芦川さんが残した仕事も処理し、遅くまで頑張る押尾さん。この二人であれば、今の私は押尾さん側にいます。しかし、芦川さんがどこまで計算しているのか、というのはありつつも、今、押尾さんのようにバリバリ働けていても、何かで芦川さん側になることもあり得るので、本当に難しい問題だと感じました。


平和なタイトルですが、「美味しいご飯がたくさん登場する、ほっこりする物語」では全くありませんので、そこは要注意です!


『夜に星を放つ』窪美澄


こちらも読みやすかったです。家族や恋人といった周りの人たちとの別れ、関係の難しさを描く短編集。どのお話にも星が登場し、儚い雰囲気の一冊です。コロナ禍が描かれているお話もあります。


双子の妹を亡くした綾、綾がアプリで出会った男性で実は妻子持ちの麻生さん、妹の恋人だった村瀬君を描くコロナ禍のお話『真夜中のアボカド』をはじめ、5作品が収録されています。


全体的に、繊細で、仄暗い空気感があるのですが、その中にある力強いメッセージが印象的で、とても良いなと感じました。「辛くても生きることをあきらめないで」というメッセージ。コロナ禍の私たちの心に響きます。


上手くいかないこと、寂しいこと、悲しいこと。想定外の事態。それでも生きていこうと思わせてくれる作品でした。



以上、第167回芥川賞・直木賞の受賞作を読んで紹介してきました。どちらもとても読みやすいお話でしたので、これまであまり芥川賞・直木賞受賞作を手に取ったことがない方にもおすすめです。




本記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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