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【読書】『霧越邸殺人事件』綾辻行人【冬に読みたい】


寒い冬には、暖かい部屋の中で、冬が舞台のクローズドサークルものを読みたいと思い、手に取った1冊です。


今回は、『霧越邸殺人事件』(綾辻行人 著)について書いていきます。


吹雪×謎の洋館


劇団「暗色天幕」のメンバーは、吹雪の中、謎の洋館「霧越邸」に辿り着きます。そこには、彼らと同じように雪がひどくなったため駆け込んだ医師の忍冬、そして「霧越邸」の主人である白須賀氏、執事の鳴瀬、主治医の的場らがいました。


そこで、劇団のメンバーの一人、榊が何者かによって殺害されます。しかも、北原白秋の歌による見立て殺人と思われました。


「霧越邸」には、なぜか劇団のメンバーそれぞれの名前に関連する物が存在し、榊(さかき)が亡くなる前には、源氏模様の「賢木(さかき)」が彫られた煙草盆が壊れていたのです。


一度では終わらない悲劇。名前と関連する物の動き。劇団のメンバーたちが抱えるもの。「霧越邸」のまだ見ぬ住人。吹雪がおさまらず、下山できない中、事件は続いていきます。


新本格ミステリと幻想小説の融合


最後の作者インタビュー「霧越邸秘話」でも詳しく解説されているように、この作品は、新本格ミステリと幻想小説の融合となっています。


よって、すべての事柄に論理的な説明がなされるというわけではありません。儚さや雰囲気、登場人物たちの哲学を味わう場面も多くありますし、読者の受け取り方に任せられている部分も存在します。


しかし、すべてに説明がつくよりも、不思議が残されることの方が、よりリアルなのではないかと感じました。現実では、「たまたま」「何となく」「(他人はわからないけれど少なくとも)私はそう受け取った」というようなことがたくさんあります。「幻想小説」と言われていますが、むしろ曖昧な部分が残ることこそが、現実的なのではないかと考えました。



暖かい部屋の中にいても、気持ちは霧越邸に飛び、このお話を堪能することができました。冬に読みたい一冊です。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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